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次の恋があるかわからない…だからこそ「何でもいいよ」も楽しめるようになった【連載 #発酵適齢期】

  • 2024.10.18

こんにちは。ライターの高木沙織です。

意見を求められたときの返しとして「何でもいいよ」は、ありよりのありか。それとも、なしよりのなしか問題―。前提として相手との関係性や何に対する質問なのかによるところもあるから、ここでは付き合い始めて間もない恋人との食事に限って話を進めていきます。

31回目の『発酵適齢期』、今回は「何でもいいよ」について。

「ご飯、何食べる?」に対する「何でもいいよ」って定型文なの?

付き合い始めて間もない恋人との「ご飯、何食べる?」トーク。遠い昔を振り返ってみると、この質問には「何でもいいよ」と返ってくることが多かったように思います。これって、私が知らないだけで実は定型文なの?と錯覚してしまうレベルでよくあるやり取りでした。

「何でもいいよ」はあり? なし?
Photo by Saori Takagi/「何でもいいよ」はあり? なし?

数年前—。

当時お付き合いしていた(Aくん)と旅行をしたときの話。

私:「お腹空いたね、ご飯何食べる?」

Aくん:「何でもいいよ! 沙織さんが行きたいお店にしよう」

私:「いいの? 気になるお店があるんだけど、ちょっとがっつり系かな…こことかどう?」

Aくん:「じゃあ、そこに行こう」

Googleマップにお店の住所を入力して、歩くこと5分。

私:「ここだね。開店まであと10分だって」

ガイドブックにも載っている有名店の前では、すでに2~3組が開店待ちをしています。これならすぐに入れそうだし、10分の待ち時間も話していたらあっという間のはず。ところが、私が列に並ぼうとすると…。

Aくん:「…あのさ、あっちにも行ってみない?」

(あっち…とは?)

開店まで近くの土産物店を散策するのかなと訝りながらも、すでに体があっちの方を向いている彼とその場をあとにします。ふたたび目的地から離れていくGoogleマップ。向かった先は、元いたところよりもさらに遠い場所で…。

「何でもいい」の真意を汲み取るのって、意外と楽しい

歩くこと10分―。

Aくん:「ここ、どうかな?」

彼が立ち止まったのは、湯豆腐店の前。すっかり丼ものを迎え入れるつもりでいた私は、声帯ではなく胃袋から「…えっ?」と太い声が漏れたのを覚えています。もちろん湯豆腐も大好きだけれど、丼ものとはがっつり感に差がありすぎる…対極もいいところ。

なんて思った次の瞬間、店頭にいる私たちに気づいたお店の方が親切にメニューの説明をしてくれるものだから、気づいたときには2階席でほかほかと湯気が昇る鍋を前にしていたのでした。

私:「あんまりお腹空いてなかった?」

Aくん:「いや、昨日遅くまで飲んだし…あのボリュームは正直キツイなって。ごめん」

(いやいや、何でもいいんじゃなかったのかいっ! しかもAくんと同じくらい飲んだのに、丼ものを食べられる私って…)

こんなふうに心の中で突っ込みはしたけれど、そういえばここに来るまでずいぶんスムーズだった。もしかしたら、Aくんは最初からこのお店に来たくて下調べをしてくれていた可能性も考えられます。だとしたら、がっつり丼ものの写真を見せられて、お店にも連れて行かれてどれだけ怯んだことか…。

軽い気持ちで「何食べる?」と聞いたつもりが、かえって「明日、空いてる?」と詳細を告げずにスケジュールだけ聞いて相手を困らせているかのよう。

言葉の意味をそのまま受け取る私にとって「何でもいいよ」という返事は「すべての判断をあなたに委ねます」だから、そこから相手の真意を汲み取る必要がある…だなんて考えもしなかった。それが、このすれ違いの原因なんでしょう。

例えば、その人にとってあまり興味がなかったり、考えるのが面倒だったりする場合の「何でもいいよ」=「どうでもいい」。会話を丸投げされているように感じたら、そのあとの食事を楽しめるわけがありません。「今日はやめておこうか」とか「お店探してから連絡するね」と言って、しばらく距離を置くもよし。

中には本当に何でもイケる体調と気分からの言葉のときもあって見極めが難しいのだけれど、Aくんのように相手の気持ちを優先させる気遣いだったり、言いたいことがあるけれど上手く伝えられなかったりするときの「何でもいいよ」の場合は、聞く方にも工夫が必要です。

私:「何でもいい感じかあ。じゃあ和食と洋食、中華だとどの気分? あ、韓国料理かタイ料理もいいよね」

相手:「うーん、和食かな」

私:「じゃあ、お寿司と天ぷらだったらどっちがいい?」

相手:「お寿司、いいね!」

ここまで聞けば、何となく相手の胃袋の状態がわかってきます。対面でないときは、ジャンルの異なるお店のリンクをLINEで4~5パターン送ってから「どこがいい?」と聞く。あらかじめ絞り込まれた中からなら、気を使うあまり意見しにくくなってしまう人でもちょっとは答えやすくなる気がします。

「何でもいいよ」は、言われた側の負担が大きいと取るか。はたまた、これも相手のことを知るチャンスだと恋愛初期の醍醐味とするか―。後者になって楽しむのもいいものだと思うようになったのは、次があるかわからない恋愛初期を大事にしたい気持ちの現われなのかもしれません。

…なんてかくいう私も、20代の頃は好きな相手に「何でもいいよ」をよく使っていた身です。「あー、あんまりお店を知らない感じなんだ」とか「そのチョイス、微妙じゃない?」などと思われたくなくて、「〇〇くんの行きたいところで」と控えめににっこり微笑みながら苦手なものも無理して食べていた遠い日…。

ちなみにその時の相手からは、「何を考えているのかわからない」と振られました。そこで二度と同じ失敗は繰り返すまいと誓った私は、「何食べたい?」と聞かれたら「あれとこれと、それと、このお店も気になる!」と、ちょっと間違えたら「うわ…食べ物への執着すっごいな…」と引かれかねない勢いで提案する大人になりました。

ではまた、32回目で。

高木沙織

ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。

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