Text by 奥崎覚(編集部)
この10月シリーズのワールドカップ最終予選では、サウジアラビア、オーストラリアという強豪と対戦した日本代表。
結果は1勝1分。今予選での連勝こそ止まったものの、これまで鬼門だったアウェイのサウジ戦に勝利し、ホームのオーストラリア戦も先制されながら引き分けに持ち込んだ。
相手が強くなったことで、収穫と課題の両方が見えた2試合。その中で、どちらかと言うと評価を下げてしまった3人の選手をピックアップした。
谷口彰悟
1991年7月15日生まれ(33歳)
DF/シント=トロイデン所属
まずは、オーストラリア戦で痛恨のオウンゴールを献上してしまった谷口彰悟。相手にほとんどチャンスを作らせない展開だっただけに、あの1点は大きかった。個人の評価としても重いものを背負うことになったと言える。
相手のクリアを競ってからの流れで、しかもダイレクトで入れられたクロスだったため準備の時間はほとんどなかったが、アウトサイドは足の面が不安定になりやすい。なんとか左足のインサイドで対応したかった。
とはいえ、それ以外の場面では日本代表のスタメンに相応しいパフォーマンスを発揮。板倉滉、町田浩期とともに相手の攻撃をシャットアウトし、両足を使った丁寧なパスでビルドアップを司った。豪州戦前半には鋭いフィードで久保建英の決定機も演出している。
3バックの中央は長谷部誠がフランクフルトで30代後半になっても起用されていたように、経験を含め多彩な能力と判断力が求められる。DF陣の中心であるべき冨安健洋が負傷離脱を繰り返しているなか、キャリアでほとんど怪我をしていない谷口は替えが利かない人材だ。
久保建英
2001年6月4日生まれ(23歳)
MF/レアル・ソシエダ所属
久保建英はサウジアラビア戦、2-0でほぼ勝負が決まった88分から出場。その悔しさを胸に燃やして臨んだオーストラリア戦だったが、チームを勝利に導くような活躍はできず、1点ビハインドの70分にピッチを退いた。
オーストラリアは守備時5-4のブロック作り、中央で跳ね返す戦い方を選択してきたため、左利きの久保をサイドで縦へ誘導するような守備が目立った。それでもいい形でエリア内へ侵入して右足でクロスを上げる場面もあったが、決定機には至らなかった。結果的には相手の術中にハマった格好だ。
右サイドでの堂安律との関係性は決して悪くなかった。ただ、2023-24シーズンの状態が良い時の久保と比べると、影響を与えるフィールドの範囲が狭くなったように感じられる。
所属のレアル・ソシエダはチーム状況があまり良くなく、今季ラ・リーガでは開幕から出遅れている。そこに代表チームでの立ち位置に対する思いもあってか、やや焦りが感じられる今月の出来だった。
田中碧
1998年9月10日生まれ(26歳)
MF/リーズ・ユナイテッド所属
3人目は田中碧。サウジアラビア戦では出場機会がなかったが、オーストラリア戦は遠藤航がコンディション不良により欠場したため、川崎フロンターレ時代の僚友・守田英正と中盤を組みフル出場した。
5-4-1で守る相手に対し、落ち着いてボールを左右に振りながら入れどころを探るスタイルは川崎の頃もよく見られた。相手ボールになった際のネガティブトランジションも機能しており、二次攻撃、三次攻撃につなげる機会も多かった。
ただ試合後本人も語っていたが、クラブであまり経験していない3バックへの理解は向上の余地がある。田中がブレイクした2019年のトゥーロン国際大会では3-4-2-1のボランチでまさにチームの“心臓”となり、史上初の準優勝へ導くと同時に個人賞も受賞した。
高い個人戦術のなせるわざだったが、A代表で定着しつつあるより練度と強度の高い3-4-2-1への順応はまだこれからと言ったところ。そこの経験値で上回る選手が台頭してきた場合、現状のボランチ3番手というポジションは危うくなってくるかもしれない。