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麻酔薬不足で無痛分娩ができなくなるって本当!?どうすればいいの?

  • 2024.10.20

麻酔を使用して、陣痛に伴う痛みを和らげながらおこなう無痛分娩。海外に比べると割合はまだ少ないものの、日本でも無痛分娩で出産している方が増えてきています。無痛分娩は、硬膜外鎮痛法(背骨にある硬膜外腔というところに細くて柔らかいチューブを挿入し、麻酔薬を注入する方法)が多くの施設で取られています。その際に使用する麻酔薬が「アナペイン」です。しかし、この夏、「アナペイン」が世界的に不足し、無痛分娩を制限しなければなくなるかもしれないというニュースが流れました。今回、ベビーカレンダーでは無痛分娩に使用する麻酔薬不足の影響について、かわぐちレディースクリニック(埼玉県川口市)の病院長である檜垣 博先生にお話を伺いました。

麻酔薬不足の背景

「アナペイン」は元々、海外の工場で製造されていました。しかし、その製造所との契約が終了したため、日本国内の新しい製造所へ移管を進めていました。その中で、製造設備に不具合が発生し、移管のスケジュールが遅延してしまったのです。

そのため、「アナペイン」の製造が延期となって、在庫の出荷制限が起こり、麻酔薬不足が生じているのです。さらに、「アナペイン」が不足していることで、代替の麻酔薬も不足しており、「アナペイン」の製造が再開されるまでこの状況が続くと見込まれています。

麻酔薬不足で無痛分娩ができなくなる!?

「アナペイン」は無痛分娩だけでなく、がんの治療にも使用される麻酔薬です。厚生労働省や日本麻酔科学会、日本産科麻酔学会などは、麻酔を使用する患者さんの優先順位策定や麻酔薬の使用量に関する提言を出しています。

麻酔を使用する患者さんの優先順位の策定に関しては、帝王切開や無痛分娩が例に挙げられています。そのため、無痛分娩に制限がかかるのではないかという情報が出てきたのです。

実際にお話を伺ってみました!

かわぐちレディースクリニックは、50年近く地域のための産婦人科として活動している産院です。年間約1,300件のお産を取り扱っており、現在は約6割の方が無痛分娩で出産されているとのこと。

無痛分娩を選択するタイミングや麻酔を開始する時期は産院によってさまざまですが、かわぐちレディースクリニックでは、妊娠中に無痛分娩の事前説明を妊婦さんにおこない、元々無痛分娩を希望していた方はもとより、自然分娩でも陣痛に耐えられなくなったら無痛分娩に切り替えられ、24時間・365日、無痛分娩をおこなえる体制をとっています。

ベビーカレンダーでは無痛分娩に使用する麻酔薬不足の影響について、かわぐちレディースクリニックの病院長である檜垣 博先生にお話を伺いました。

ベビーカレンダー編集長二階堂(以下BC):実際、麻酔薬不足の影響はありますか?

檜垣病院長:供給量は平常の1/2になりました。そのため、無痛分娩の際、普段から多めに麻酔薬を使っていたので、これまでと同じようにしていたら足りなくなっていました。

BC:何か対応されたのですか?

檜垣病院長:これまでは無痛分娩の際に使用する麻酔薬を前もって準備していたのですが、その場で作るようにしてロスを減らしました。さらに、麻酔薬不足の情報が入った時点で新たに麻酔に使用する機器の導入を決意して、院内のすべてのLDRに設置しました。その後、院内研修を実施して、スタッフを患者さんに見立ててシミュレーションを2カ月間おこない、使用を開始しました。

麻酔薬が残り2箱となり、次、届かなかったらどうしよう……という状況にまで陥りましたが、新しい機器を導入したことで産婦さん1人に使う麻酔の量が1/2になり、現在、麻酔薬不足は生じていません。

BC:患者さんからの問い合わせは?

檜垣病院長:ニュースになったときは問い合わせが多かったですが、うちは大丈夫とお返事しています。

BC:これから無痛分娩を予定している方・無痛分娩をしたい方へひと言お願いします。

檜垣病院長:無痛分娩は「よいお産だったな」と思えるような手段の1つです。無痛分娩ありきではなく、無痛分娩も選択ができると考えていただき、安心して妊娠期を過ごしてください。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

今後麻酔薬が不足したら無痛分娩の制限をせざるを得ない、また、麻酔薬調達のコスト上昇に伴い、分娩費用を一時的に改訂する施設もあるようです。しかし、現状、かわぐちレディースクリニックでは、麻酔薬不足は生じていないようです。檜垣院長曰く、供給量は戻ってきていると耳にしているので、そのうち戻ってくるのではないかとのこと。

厚生労働省は8月に「アナペイン」の後発医薬品を承認しました。日本産科麻酔学会も、妊婦さんに対して、不安にならないよう呼びかけています。麻酔薬不足と言われていますが、産院によっても在庫量、対応はさまざまです。とはいえ、その産院でも、ママと赤ちゃん、そしてご家族にとって、最善の方法を考えて対応してくれるはずです。不安なことがあったら産院で相談し、安心してお産に望めるといいですね。


監修者:医師 かわぐちレディースクリニック病院長 檜垣 博

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・日本専門医機構 産婦人科領域 認定医・麻酔科標榜医・NCPR(新生児蘇生法)インストラクター・J-MELS(母体救命)インストラクター。産婦人科医として、帝京大学医学部附属病院勤務、以降、総合母子保健センター愛育病院 産婦人科、蕨市立病院 産婦人科を歴任する。麻酔科医としても、埼玉大学国際医療センター 麻酔科、総合母子医療センター愛育病院などを歴任。2020年4月より「かわぐちレディースクリニック」を新設し、病院長となる。

ベビーカレンダー編集部

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