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「裏金問題で叩かれてもなぜ派閥は無くならないのか」橋下徹が13歳の中学生にしたわかりやすすぎる説明

  • 2024.10.18

自民党では新たな総裁が選ばれたが、新総裁決定の背後には依然として派閥の存在がある。裏金問題でその問題点が指摘されながらも、なぜ派閥はなくならないのか? 元大阪府知事の橋下徹さんは「人が集まればグループができるもの。しかも国会議員が首相を選ぶ仕組みになっている以上は、首相を選ぶ際は国会議員による多数派工作が必要になる。そのため、派閥が作られる」という――。

※本稿は、橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

圧倒的な力を持つ、派閥のボス

今回は、よく耳にする「派閥」について考えたいと思います。

裏金スキャンダルにまみれた自民党は、岸田文雄首相が2024年1月18日、突如として派閥の解散を宣言しました。

しかし、一部の派閥は残っていますし、結局人が集まれば派閥はできるものなので、過去のものとはせずに、ここでしっかりと考えたいと思います。

まず、「派閥」とは国会議員のグループですが、日本の政治においては非常に厄介な存在です。

すでに国政においては、自民党や公明党、立憲民主党や日本維新の会などが乱立しているにもかかわらず、さらに同じ自民党内でいくつもの「派閥」に分かれ、それぞれに圧倒的な力を持つボスが君臨している。ボスの鶴の一声で人事が決まり、政策にも大いに影響を及ぼしている現実があります。

「○○派の◎◎氏が、総理と昨夜都内の飲食店で会合し、△△を直談判」
「◎◎氏(○○派)が、総理に怒りの電話」

という報道を見聞きすることがありますね。

民主主義は、最後は多数決で決まります。数がモノをいう。そのため、国会議員をグループとして束ねて数の力を行使できる派閥のボスが力を持ってしまうのです。

人のアイコンが描かれたブロック、多数の青の中に一つの黄色
※写真はイメージです
政治資金パーティーの意味

派閥をつくるために、ボスは並々ならぬ努力をします。この国会議員同士の人間関係をつくる場が、夜の飲み食いです。

メンバーが困ったときには相談に乗る、助けてあげる、メンバーが要職に就けるように掛け合ってあげる、必要なときにはお金のサポートをしてあげる。

だから派閥のボスは派閥としてお金を集めなければならず、政治資金パーティーをやるのです。そしてメンバーにお金を渡すやり方として、今回問題になった裏金の手段を用い、結果的に大スキャンダルになりました。

派閥のボスが総理や党の幹部に申し入れると、総理や幹部も要求を聞かざるをえなくなります。

このようにして、これまでの自民党の政治では派閥が非常に重要な存在でしたが、国民からすると関係ないですからね。しょせん国会議員同士の飲み食いがベースとなっている内々の人間関係によるもの。国民の意思が派閥に反映されていることなどありません。

首相が顔色をうかがう相手

生徒会に置き換えて見てみましょう。

ある学校の生徒会は、A君とB君とC君のグループに分かれています。A君のグループは7人、B君のグループは8人、C君のグループは10人です。

この学校の生徒会長は全生徒によって選ばれるアメリカ型ではなく、生徒会メンバーによって選ばれる日本型=議院内閣制型で、いまの生徒会長はA君グループ7人とB君グループ8人によって選ばれているとします。

もうこの状況を見るだけで、生徒会長が誰にいちばん気を遣うのかわかりますよね。

そうです。全生徒よりも、A君とB君の顔色ばかりうかがうことになるでしょう。これが日本政治のいちばんの問題点です。

派閥の構造
出所=『13歳からの政治の学校』
派閥のボスが権力を振るう理由

ここでA君やB君が本当に全生徒のことを考えてくれていたらいいのですが、そうはいきません。自分のグループを維持するのに必死になります。

橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)
橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)

A君もB君も、学校が終われば近くのファストフード店でグループのメンバーと集まる。話していることは学校全体のことよりもどうでもいい話が中心。代金はA君、B君が出す。そのことによって、メンバーもボスであるA君とB君についていく。

A君はグループメンバーの一人から、体育祭の委員長になりたいとお願いされ、生徒会に掛け合う。B君は、グループメンバーの一人から、自分の所属するラグビー部の部室をもっとグラウンドに近いサッカー部の部室と入れ替えるように求められ、サッカー部と交渉する。また別のメンバーから「○○ちゃんと付き合いたいので間に入ってほしい」と頼まれ、○○ちゃんの自宅前で○○ちゃんが帰ってくるまで待つ。

A君、B君は日々涙ぐましい努力を重ねてグループを維持します。それはC君も同じでしょう。

そのうえで、A君、B君はいざというときに、生徒会長に自分の考えをぶつけて押し通すのです。

それが生徒全体の利益になるものか、自分やグループメンバーの利益のためだけなのかはごちゃまぜです。

このような生徒会が本当に生徒全体のことだけを考えて運営されると思いますか? そんなことはないですよね。

これが日本の「派閥政治」の実態です。A君、B君、C君こそが派閥のボスとして権力を振るう者であり、派閥政治は国民全体のことを考えてというよりも、極めて国会議員の内々の論理に基づいて行なわれてしまうのです。

派閥政治の弊害を生まないために

人が集まればグループができるもの。しかも議院内閣制という、結局は国会議員が首相を選ぶ仕組みになっている以上は、首相を選ぶ際、また首相の前提である自民党総裁を選ぶ際は、国会議員による多数派工作が必要になります。

自民党は世間の批判をかわすために、いったんは派閥解散という形をとりましたが、今後派閥が復活し、派閥政治の弊害が生まれないか、我々国民はしっかりと見ていく必要があります。

橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。

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