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正しくなんかなくていい。自分に嘘をつかない生き方でありたい

  • 2024.10.18

名は体を表す

こんにちは。株式会社ネイチャーオブシングス代表の濵本です。

前回のエッセイでは、僕が起業を決意したきっかけについてお話させていただきました。早いもので3回目となる今回が最終回になります。最後は、僕がとても大切にしている価値観についてお話しようと思います。

あまり人に話したことはないのですが、じつは僕には社会人として「空白の1年」があります。新卒で入社した会社を辞めてから次の会社に転職するまでの間、約1年ほど、俗に言うニート生活をしていました。客観的に見れば社会に何ひとつ貢献できなかった暗黒の時代ですが、実はこの1年が僕の人生を大きく左右するターニングポイントになります。

大学生の頃、就職活動を通して初めて自己分析なるものを経験したのですが、このときの「自分に気づく感覚」がとてつもなく新鮮で心地よく、それ以来この体験が頭から離れませんでした。機会があれば、もっとじっくり時間をかけて自分自身と向き合う時間を持ってみたいとずっと思っていたんです。

都内の賃貸マンションを引き払って実家に帰った僕は、机の上にノートとペンだけを用意し、朝から晩まで、食事の時間以外はずっと自分について考えていたと思います。これまで無意識に過ごしてきた自分の人生を意識的に見つめ直し、要所でとった行動、発した言葉、感じたこと、思ったこと、その一つひとつに対して「なんで?」を自問自答していきました。

“名は体を表す”なんて昔から言われますが、今思えば両親に「智己」という名をもらったときから、僕の人生には自己探求の旅が義務付けられていたのかもしれません。

何のための人生か

いったい僕は何のために生まれてきたんだろう?

いつものように朝から机に向かい、そんなことを考えていたときのことです。この究極の問いへの最適解は、「人は誰しも幸せになるために生きている」というものではないでしょうか。とても納得感があるし、否定することは何もないと思います。

でも、幸せって何でしょう? ポジティブな感覚であることだけは確かですが、僕はこの言葉の正確な意味を誰からも教わったことがありません。おそらくみなさんも同じではないでしょうか。

ノートに丸い円、そしてその周囲にたくさんの人の絵を描きました。さながら小さな地球のようなイメージです。そしてその中心に「Competition(競争)」の文字を書きました。

「いいね」がどれだけついたとか、どれだけフォロワーがいるかとか、どっちが可愛いとかどっちが強いとか、どんな会社に入社したとか、どんな肩書きを持っているかとか、幾ら給料をもらってるとか。言葉には出さないけど、僕たちは誰かと自分を常に比較して、競い合って、劣等感と優越感の狭間で自尊心を傷つけたり満たしたりしながら生きています。

でも、この時ふと思ったんです。もし他者との比較や競争の先に「幸せ」が存在するのなら、人の数が少なければ少ないほど人間は「幸せ」に近づくことになります。ライバルが少ないほうが競争に勝つ可能性が高まるからです。

でも僕にはどうしてもそれが腑に落ちませんでした。そこでこの「Competition」の文字を今度は「Dedication(献身)」に書き替えてみました。

あのときの雷が落ちたような感覚を、きっと僕は一生忘れないと思います。

人生は自分のためにある。これまで、僕はそう信じて疑いませんでした。誰に教わったわけでもないけれど、無条件にそう信じて生きてきました。でももし自分の人生が「自分」ではなく、本当は「自分の隣の人」のためにあるとしたらどうでしょう? 80億人ともいわれる地球上の全ての人間に、一人残らず生きている意味が生まれます。不要な人間なんて誰ひとりとしていないことになります。

そもそも答えのない問いですから、それが正しいかどうかなんてわかりません。正直そんなことはどうでもいいと思っています。ただこのときを境に、僕のなかから「自分は何のために生まれてきたのか」そんな迷いがなくなったことだけは確かです。

幸せの定義

幸せの正体は、他の誰かの心を満たせた実感そのものである。

僕は『幸せ』の概念をこう定義しています。これはつまり「他者をどれだけ笑顔にできたか」が自分自身の幸福度を決めるということです。もっというと、もし幸せになりたければ他の誰かを幸せにしなければならない、ということになります。

もう何年も前のことですが、何気なくテレビを付けると、かつて世界一幸福な国として知られていたブータン王国の首相が”喜び”と”幸せ”の違いについて話していました。一言一句を正確に覚えているわけではありませんが、そのとき彼は「喜びは刹那的であり、幸せはもっと継続的なものである。」そんな話をしていたと思います。

たとえば、以前からずっと欲しかった洋服をようやく手に入れたときと、記念日にこっそり準備したサプライズにうれし涙を流すパートナーや子どもの姿を見たとき。どちらもポジティブな心の高揚感という意味では似ていますが、この2つは同じでしょうか? 前者は1週間もすれば薄れてしまいますが、後者は心にずっと残り続けるものだと思います。

当時ブータンの首相がどんな意図を持ってこの話をされていたのかはわかりませんが、僕は1人でも手にすることができるのが”喜び”、1人では決して手に入れられないのが”幸せ”だと解釈しています。

ちなみに僕たちの会社がヒトの幸せにコミットするレターギフトサービスを提供しているのは、決して偽善などではありません。仕事を通して誰かの心を満たすことが、自分たち自身の幸せに直結すると信じているからです。

知識と知恵の違い

「地球はなんで丸いの?」

僕の書斎にある地球儀を触りながら、当時5歳になったばかりの娘からこんな質問をされたことがありました。このどこまでも素朴で純粋な質問に対して、よく知りもしない万有引力の話で知ったかぶりをするのは大人のつまらないエゴです。

「考えたことなかったなぁ。○○はなんでだと思う?」

僕が逆に質問すると、しばらく考えてから彼女は「端っこがなくていいよね」と言いました。話を聞くと、彼女はベッドで川の字に寝るときも、幼稚園でトイレに行くときも、とにかく端っこが怖いんだそうです。端っこがあるときっと誰かが不安な気持ちになるはず。だから地球は丸いんじゃないか、そう言うんです。

大人が5歳児に完膚なきまでに叩きのめされた瞬間でした。

そもそも知識に乏しい子どもには、大人にはない想像力が備わっています。”知識”と”知恵”は似て非なるものです。それは”勉強すること”と”考えること”の違いともいえます。僕たちは学生の頃から暗記中心の勉強に慣れすぎて、無意識のうちに「答えはすでに在る」という刷り込みを持っています。そしてその結果、何か問題に直面した際、考えるより前に答えを探すこと(インプット)に時間を費やしてしまいます。

この悪癖こそがアイデアを生む弊害となることを、社会に出てから嫌というほど痛感してきました。課題を前に、安易に外に答えを求めず、考えに考えて自分の内から答え(らしきもの)をひねり出すというのはとても勇気がいることです。でもそれこそがアウトプットするということではないでしょうか。

正解のない世の中だから

高度経済成長期のように、放っておいても国が成長していた時代に求められる人材は1を10にできる人だったかもしれません。でも1を10にできる人間が、必ずしも0から1を生み出せるわけではありません。言うまでもなく今この時代は、これまでの常識にとらわれず変化することが求められています。それは答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われる時代、といっても過言ではないと思います。

答えのない問いに対する初めの一歩は、いつだって誰かが強く信じた仮説です。大切なのは、正しいかどうかではなく、自分自身が納得できるかどうか。正論をかざして他者を批評したり論破しようとする人よりも、不確かな仮説を持って夢想できる人の方が断然面白いと思うのは僕だけでしょうか。

人生の意味や幸せの定義に明確な答えがない以上、そもそも生き方に正解なんてないはずです。だからこそ、正しく生きることよりも、自分が納得できる人生を歩みたい。僕はそう思うんです。

さて、全3回にわたり、あまり普段は人に見せることのない僕の内面を随分とさらけ出してきました(笑)。どれだけの方がこのエッセイに目をとめてくださったかはわかりません。果たして誰かのお役に立てたのかどうか、正直不安な気持ちもあります。

でもこんな僕の生き方や考え方が、誰かの心を少しでも明るく前向きにできたとしたら、そんなにも嬉しいことはありません。ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

濵本智己(はまもとともき)

株式会社ネイチャーオブシングス代表取締役。1980年生まれ。娘と2匹のワンコをこよなく愛するパパ。大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。より直感的かつ右脳的なビジネス領域への関心から外資系広告代理店に転籍後、コミュニケーション戦略からクリエイティブまでを一気通貫してデザインするハイブリッド型クリエイターとして活躍。2021年に株式会社ネイチャーオブシングスを創業。レターギフトサービス『シカケテガミ』『RETTEL』を立ち上げる。

シカケテガミ https://shikaketegami.com/

RETTEL https://rettel-tokyo.com/

Instagram @shikaketegami @rettel_tokyo

TEXT=濱本智己

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