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「あなたの1票で政治は変わらない」そう断言する橋下徹が、若者たちに強く勧める投票所での行動

  • 2024.10.16


政治家が高齢者ばかりに目を向け若者を蔑ろにするのはなぜなのか。元大阪府知事の橋下徹さんは「政治家が大切にしているのは、『選挙に行く有権者』だ。高齢者の約7割は投票するけれど、若年層は3割程度しか投票しない現状では高齢者に視線が向いて当然である」という――。

※本稿は、橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

国民全員を見れるわけではない

高齢者の約7割は投票するけれど、若年層は3割程度しか投票しない。

だとすれば政治家たちの視線は、「高齢者7割」に向くと思いませんか?

だって、彼らこそが自分を政治家にしてくれているわけですから。

仮にあなたが「生徒会メンバーになりたい」と意気込み、校門で生徒一人ひとりにビラを配っているとします。

そのビラを読まずにあなたの目の前で捨てている人のために、あなたは働きたいと思いますか?

ビラを受け取り、熟読して「応援しているぞ、頑張れよ!」

と声をかけ、実際に投票してくれる人のために働きたいと思いませんか?

政治家はよく「有権者の皆様のために」「国民の皆様の声を真摯しんしに受け止め……」と言います。でも、彼らは実際には「有権者の皆様」や「国民の皆様」全員を見ているわけではないんです。

選挙活動をする政治家
※写真はイメージです
政治家が大切にしているのは「選挙に行く有権者」

彼らが大切にしているのは、「選挙に行く有権者」です。そして「自分に投票してくれる有権者」を最も大切にします。

「選挙に行かない有権者」など、政治家にとっては重要ではありません。「選挙に行く人」、そして「自分に投票してくれる人」こそが、自分たちにとって真に大事にすべき顧客(お客様)だからです。

だからこそ、僕は声を大にして言いたい。

「若者たちこそ選挙に行ってほしい!」と。

「いまの政治家は、俺ら若い世代のことなんてどうでもいいんだよ」
「子育て世代の苦労なんてわかっていないんだよ」
「若い人間は損をして、高齢者ばかり得しているじゃないか」

もしそんなことを思っているのなら、どうか投票所に行ってください。テレビやスマホの前で文句を言っている暇があったら、各政党・各政治家の言い分を知り、自分の思いを投票用紙にのせて政治に自分の思いを反映させてください。

シルバー民主主義に陥おちいっている政治家たちに、「若者たちもここにいるよ!」「俺たちも顧客だぞ!」「私たちも政治を託す立場なんですよ!」ということを示してください。

もし10代〜30代の投票率が80%になれば、政治家たちは目の色を変えて、若者世代向けの政策を次々と打ち出し始めますよ。若者が大切なお客様になるのですからね。

俺の1票が選挙の結果を左右するわけない

僕はつねづね、若者こそ選挙に行くべきだと言っています。巷でも実際に選挙が近づけば、「あなたの1票が世の中を変えます」という言葉がテレビや街中に躍りますよね。

でも、あなたはこう思ったかもしれません。

「そんなこと言ったって、俺(私)の1票が、選挙の結果を左右するわけないじゃん。自分が投票に行ったくらいでは、世の中は変わらないよ」

綺麗事はなしで言いましょう。実際、そのとおりなんです。投票所に行っても、「あなたの1票」が現実を大きく変えることはほとんどありません。

あなたが遊びの予定をわざわざずらして投票所に足を運んで、「○○党の◎◎さん」に票を投じても、夜の開票速報では落胆することになるかもしれない。

「ほら、やっぱりね。俺(私)の1票なんて、そんなもんだよ」と。

でも、「だから無駄だった」わけでは絶対にないんです。あなたの投票が短期的に夢の社会を実現することはほとんどない。だけど中長期的に見れば、「あなたの1票」は政治家をジリジリと圧迫するプレッシャーになるからです。

あなたが「投票」をしなければ、あるいは無投票の人が大勢いれば、政治家はあなた方の存在をまるっきり無視することができます。

でも、あなたが毎回確実に「投票」をする存在に変われば、そしてあなたの周囲の若者の仲間が確実に投票するようになれば、あなた方若者の存在は政治家にとって無視できないものになっていきます。

日本の国旗を背景に投票箱に用紙を入れる手
※写真はイメージです
明日でなく未来の政治を変える

仮に学校で、生徒会の学年代表を選ぶ選挙があったとします。学年に生徒が100人いるとして、つねに投票するのは半数の50人だけだとしましょう。しかも、そのうちの30人はある候補者に絶対に投票してくれるとします。

すると、その候補者は自分に投票してくれる30人だけを見て、彼ら彼女らが喜ぶ活動をしますよね。その30人だけを喜ばせておけば、自分は確実に学年代表に選ばれるのですから。

でも、ある日投票が任意ではなく義務化され、残りの50人が一斉に投票し始めたらどうでしょう。自分の支持者30人だけを喜ばせていても、確実に当選できるとは限らなくなります。

自分の支持者以外の70人の中には、自分を評価しない生徒も多く含まれているはずです。彼ら彼女らを無視した活動をすれば、自分のライバルに票を投じてしまうかもしれません。

政治家の選挙だって同じことです。そう、あなたが選挙に行かねばならない理由は、明日の政治を変えられるからではなく、未来の政治を変えられるからなのです。

つまりは、政治家たちに「次は落ちるかもしれない」危機感を抱かせる行為にほかなりません。

「白票」は政治家にとってプレッシャー

その意味では、投票用紙にどの候補者の名前も書かずに真っ白のまま投じる「白票」だって、意味があるんですよ。「白票は無責任だ」という声も聞きますが、「選びたい人物がいない」事実を表明する「白票」は、政治家を脅かす十分な威力を持っています。

橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)
橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)

「あなたの主張・政策を私たちは評価していませんよ」
「いま選びたい候補者はいませんが、私たちはちゃんと政治に関心を向けていますよ」
「私たちが選びたい候補者が出てくれば、あなたではなくその人を選びますよ」

そう意思表示する「白票」は、政治家にとっては想像以上にプレッシャーになるんです。実際に、選挙を通じて選ばれる立場も経験した僕だからこそ、その脅威を肌感覚でひしひしと理解しています。「白票」は何も書かれていない真っ白な紙などではなく、「あなたを評価していません」という強烈なメッセージだからです。

政治家は白票の数を見て、「ちゃんとやらないと、次の投票では自分のライバルにこの白票が流れるかもしれない。この人たちの声を真剣に聴かないと、次の選挙に負けるかもしれない」とビクビクすることでしょう。

日本の投票用紙
※写真はイメージです
投票するだけでいい

現在の国政選挙にしても地方選挙にしても、自宅から投票所までどれだけ遠くても歩いて10分か20分程度です。車が必要な場所でも、だいたい30分圏内には投票所があるはず。当日ほかの予定があっても、期日前投票ができます。投票することなんて、大した負担ではありません。

その程度の労力もかけずに、「自分たちの思うとおりの社会をつくってくれ」「こんな政治は意味がない」と政治に文句を言うのは虫がよすぎます。

僕らは民主主義を運営するうえで、先人たちのように血を流したり、命を失ったりする心配はありません。

投票するだけでいいのです。だからせめて、投票所に足を運ぶ汗くらいは流しましょうよ。

橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。

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