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SNSの「胸焼けに梅干し」実は間違い!消化器外科専門医が理由を解説

  • 2024.10.16
胸焼けに梅干しは効果的?
胸焼けに梅干しは効果的?

日常生活で、胃酸が上がってくるような感覚や胸の辺りがヒリヒリと焼けるような感覚を覚えることはありませんか。こうした症状は「胸焼け」と呼ばれています。

ところで、ネット上では、「胸焼けのときに梅干しを食べると、症状が緩和する」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。胸焼けになる原因や改善方法などについて、筑波胃腸病院(茨城県つくば市)理事長で消化器外科専門医の鈴木隆二さんに聞きました。

かえって胃酸の分泌を促進させる可能性も

Q.そもそも、胸焼けが起きる原因について、教えてください。

鈴木さん「胸焼けは、胃酸が食道に逆流することで起こります。通常、胃には強力な酸があり、これが食物を分解して消化します。しかし、食道にはこの酸を防ぐ仕組みがありません。胃と食道の間には『下部食道括約筋』というバルブのような構造があり、食べ物が胃に入った後に締まりますが、このバルブがうまく機能しないと、胃酸が食道に逆流してしまいます。

さらに、食べ物によって酸をたくさん出すことが、胃酸が逆流してしまう原因になることもあります。その結果、胸の中央あたりで焼けるような感覚が生じるのです。これが『胸焼け』です」

Q.「胸焼けのときに梅干しを食べると症状が緩和する」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。理由も含めて、教えてください。

鈴木さん「『梅干しが胸焼けの症状を緩和させる』という情報は、科学的な根拠が乏しいです。梅干しは酸味が強く、胃酸を一時的に中和すると考えられることがありますが、実際は酸が多い食品なので、食べるとさらに胃酸が分泌される可能性があります。

先述のように、胸焼けは胃酸が多過ぎて起きるため、梅干しやかんきつ類などの酸性の食品を食べると、症状を悪化させることが多いです。これは、火事を消そうと水をかけたら、実は燃えていた油に水がかかり、かえって炎が大きくなるような状況とよく似ています。

梅干しの酸味が、胃酸の分泌を促進してしまうことがあるため、胸焼けのときには摂取を避けた方が無難です」

Q.胸焼けのときに、酸性の食品の摂取以外にやってはいけないことはあるのでしょうか。

鈴木さん「胸焼けのときには、次の行為を避けることが大切です」

(1)脂肪分が多い食べ物を摂取する揚げ物や脂っこい食べ物は、胃での消化が遅れ、胃酸の分泌を増やす可能性があるため、胸焼けを悪化させます。

(2)酸性度の強い食べ物や飲み物を摂取するトマトやかんきつ類、コーヒー、アルコール、炭酸飲料など、酸性の食品は胃酸を刺激しやすく、症状を悪化させることがあります。

(3)食後、すぐに横になる食後、すぐに横になると、胃の内容物が食道に逆流しやすくなるため、食後少なくとも2〜3時間は横になるのを避けましょう。

(4)喫煙喫煙は、胃酸を抑える働きがある『プロスタグランジン』と呼ばれるホルモンの生成を抑制し、その結果、胃酸の分泌が増えることがあります。また、たばこに含まれるニコチンは胃の血流を減少させるため、胃の防御機能が低下し、胃酸の影響を受けやすくなります。

加えて、喫煙は下部食道括約筋の働きを弱め、胃酸が逆流しやすくなるため、胸焼けのリスクを高めます。従って、喫煙は胃酸の分泌を増加させるだけでなく、逆流を引き起こしやすい状態をつくり出すため、胸焼けを悪化させる要因になります。

喫煙は直接的に胃酸を増やし、間接的に逆流を促進するという、二重の悪影響を及ぼすため、胸焼けや胃酸逆流のリスクを高めます。

Q.胸焼けは自然に治るものなのでしょうか。胸焼けの症状を緩和させる方法のほか、胸焼けが続く場合の対処法について、教えてください。

鈴木さん「胸焼けは一時的で軽度の場合、自然に治ることがありますが、頻繁に起こる場合は治療が必要です。軽度の胸焼けであれば、市販の制酸薬を服用すると胃酸が中和されるため、即効性があります。

また、胸焼けになる場合、生活習慣を改善することも重要です。次のことに取り組んでみてください」

(1)食事を工夫食事を少量に分けて食べたり、脂肪分が多い食品や酸性の食品を控えたりすることで、胸焼けのリスクを減らすことができます。

(2)姿勢に注意先述のように、食後は少なくとも2〜3時間は横にならず、頭を高くして寝ることも効果的です。

(3)減量太り過ぎていると胃にかかる圧力が増し、胃酸が逆流しやすくなるため、減量が胸焼けの予防に役立つことがあります。食道裂孔ヘルニアなど、胃にかかる圧力によって、解剖的に食道の締まりが悪くなってしまうことも、肥満の方には見られます。

もし胸焼けが頻繁に起こり、自然に治らない場合は、胃酸を抑える『プロトンポンプ阻害薬(PPI)』や『H2ブロッカー』という処方薬が必要になることがあります。また、慢性的な胸焼けが続く場合、胃食道逆流症(GERD)などの病気が疑われるため、医療機関で胃カメラの検査などを受けるのをお勧めします。

Q.ちなみに、胸焼けを放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。

鈴木さん「胸焼けを放置すると、食道にダメージを与え、さらなる健康問題を引き起こす可能性があります。例えば次の3つの症状が生じる可能性が高まるでしょう」

(1)食道炎胃酸が繰り返し食道に逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こします。これにより、痛みや出血、飲み込みにくさなどが生じます。

(2)バレット食道長期間の胃酸の逆流により、食道の粘膜が変性します。このことをバレット食道といいます。バレット食道になると、食道がんのリスクを増大させます。

(3)慢性的なせきや声のかすれ胃酸が喉や気道にまで逆流すると、慢性的なせきや声のかすれを引き起こすこともあります。

このように、胸焼けを放置すると、食道が毎回「酸のシャワー」を浴び続けているような状態なので、やがて粘膜が傷つき、炎症やさらなる疾患を引き起こすリスクが高まります。胸焼けの症状が長く続く場合は放置せず、医療機関で適切な治療を受けることが重要です。

オトナンサー編集部

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