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挨拶は無視。わざとらしい名字呼び。いつも一緒だったママ友からの嫌がらせに心が限界に達して…

  • 2024.10.15

昨今、SNS上での下品なバズワードとして「親ガチャ」というものがある。子どもは親を選べないということを前提に、自分の親に対して「ハズレ」を投げかけるリスペクトゼロの言葉だ。その対極にあるのが、ことわざの「親の心子知らず」だろう。多くの親は子育ての苦労を子どもに自慢しない。当然の事のように子が巣立つまで大切に慈しむ。その言葉にしない愛が伝わるか伝わらないか、それが子育てにおける分水嶺なのだ。

『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』(野原広子/KADOKAWA)は、ママ友とのちょっとした誤解、嫉妬、ストレスの矛先となってしまった末に起きる仲違いをリアルに描いた作品だ。

主人公のサキは、嫌がらせを受けても娘の前では気丈に振る舞う。子どもへそそぐ愛情と悪意に立ち向かう力。タイトルからは想像も出来ない母の強さが込められているのが本作なのである。

これはママ友に限らず、学生でも、会社の同僚とでも起きる、“ごく一部の当事者以外理由が判らないすれ違い”が生み出す「イジメ」の物語に相違ない。

イジメは突然終了する。多くの場合、それまでイジメていた者が新たな標的となるという展開が描かれるが、それでスカッとする読者はいない。読者が求めているものはイジメの完全な終了なのだ。そうでないとイジメられていた当事者は救われない。では本作はどうか。その結末はその目で確かめてほしいが、一言で表現するとしたら「ホラー」だ。こんな恐ろしい終わり方があるのか…!

日常に突然降りかかる理不尽な孤独。精神的暴力の数々。一部のリーダーの持つ憎悪に引っ張られて生まれる悪意無き悪意に、人は抵抗する術を持たない。何より自分はその場所に通う子どもを持つ親であり、(最優先されるのは子どもの無垢な感情なのだから当然なのだが)毎日否応なしに幼稚園に行き、沈黙の暴力を振るう人々と対面しなければならないのだから。

その足掻きと苦しみ。先の見えない地獄。閉じた社会の恐怖がぎゅっと込められた本作を手に取るときは、覚悟を持ってほしい。

文=ネゴト / ニャム

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