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乳がんを知り、アクションの輪を広げるために。発信者のための学びの場「Social Echo Club」レポート

  • 2024.10.15

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インフルエンサーやエディターなどの発信に携わる人々がともに学び、知識をアップデートしていくプロジェクト「Social Echo Club(ソーシャル・エコー・クラブ)」。ピンクリボン運動強化月間である2024年10月3日(木)に、「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」をテーマとするイベントを表参道BENE‐にて開催された。

イベント当日はハースト婦人画報社が運営する「ELLE」「ELLEgirl」「Harper's BAZAAR」「25ans」「婦人画報」「美しいキモノ」「ウィメンズヘルス」「リシェス」のエディターや日頃から交流のある発信者の方々が一同に会し、乳がんの基礎知識や発信をするうえで気をつけたいことを学習。本レポートでは、プログラムの内容や参加者たちの感想をお届け!

自分に目を向け、大切に思う「ブレスト・アウェアネス」

前半のプログラムでは、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の院長である島田菜穂子先生を迎え、島田先生が乳がんの基礎知識を解説。普段から自分の健康状態に意識を向ける、「ブレスト・アウェアネス」の重要性についてトーク。

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日本女性の9人に1人がかかる乳がん

日本人女性の9人に1人が乳がんにかかると言われている現在。働き盛りである壮年層(30〜63歳)に多く、この年齢層ががんで亡くなるトップクラスの原因になっています。乳がんにかかる人や乳がんで亡くなる人は年々増加していますが、「早期発見・早期治療であれば、90%以上の人が治癒する」と島田先生。

「乳がんの特徴や進行スピードなどは人によって異なり、それぞれの症状や求める治療に寄り添った『個別化医療』が進歩しています。また、治療中や治療後も、快適に過ごせる多様な商品や工夫が展開され、乳がんの生存率は向上し、乳房も残せる、あるいは戻せる時代になっています」(島田先生)

ELLEgirl

乳がんは二次予防が大切

乳がんが増えている大きな理由は、ライフスタイルの変化だという。

「乳がんの発生と進行の原因に、「エストロゲン」が影響しています。エストロゲンは、出産の準備や女性らしい体づくりをする女性ホルモンの一種。妊娠や閉経をするとエストロゲンの分泌が低下しますが、昔より初潮から閉経までの期間が長くなり、女性の社会進出などを背景に高齢出産や出産をしない女性も増えました。エストロゲンに影響を受ける期間が長くなったことが、乳がんにかかる人が増えている理由の一つと言われています」(島田先生)

また、ピルや不妊治療、更年期障害の治療などで薬として女性ホルモンを使用することも、リスクを高める要因に。ただし、「乳がんになる原因は、はっきりと解明されていない」と現状を伝えた。

「原因がはっきりとわかっていない現在の状況だと、乳がんを確実に予防する一次予防はありません。だからこそ、早く見つけて早く治療する二次予防が重要です。命を奪われるリスクが少なくなるだけでなく、治療後の出産や仕事など、将来の夢をあきらめなくてすむためにも早期発見と治療が大切なのです」(島田先生)

自分の体に意識を向ける「ブレスト・アウェアネス」

乳がんを早く見つけ、治すために重要となるキーワードの「ブレスト・アウェアネス」。

「『ブレスト・アウェアネス』とは、乳房を意識する生活を習慣化すること。普段から自分の乳房の状態を把握しておけば、変化にも気づけます。乳がんだけではなく、自分に目を向けたり、大切に思うことは健康感覚の向上につながる大切な考え方です」(島田先生)

ブレスト・アウェアネスのポイント

1.自分の乳房の状態を知る

2.乳房の変化に気をつける

3.変化に気づいたらすぐ受診する

3.定期的に乳がん検診を受ける

自分の乳房に関心を向けることが第一歩。服を脱いだ状態で触ったり、鏡で見てセルフチェックを続け、変化を感じたらすぐに「乳腺科」「乳腺外科」「乳腺外来」へ相談を。また、手では触れないほどのがんが隠れている可能性があるため、セルフチェックで異常を感じなくても、検診を受けて状態を確認することを島田先生は推奨している。

自分の乳房の状態を知るセルフチェックは習慣化が重要で、バスタイムやボディクリームを塗っているときなど、「日常のなかでできることを続けましょう」と語ってくれた。

「セルフチェックは、自分の状態を知って変化に気づくためのもので、病気を診断するためのものではありません。ネットであれこれ調べ、これは大丈夫かなと受診を踏みとどまることのないように。異変に気づいたら、確実に安心するためにも、迷わず乳腺科に受診しましょう」(島田先生)

乳がんの検査では、早期乳がんのサインである石灰化が映し出せる「マンモグラフィ」や、手では触れられない1〜2mm程度のしこりを見つけ出す「超音波検査」という画像診断が行われている。

「一つの検査で、すべてがわかるオールマイティな検査方法はありません。適切に組み合わせて検査を受けることが大事になります。年齢や遺伝、生活習慣などによってどの検査がどんな頻度で必要かは、一人ひとり異なるもの。自分にフィットした検診を受けるには乳腺専門のクリニックに受診し、自分に適した検診メニューや今後のプランを相談することをお勧めします」(島田先生)

乳がんの知識を広げるために

身近ながんであるのにも関わらず、乳がんの受診率は50%以下(2022年時点)で、これはOECD(経済協力開発機構)加盟国のなかでも最低レベルだ、と島田先生。乳がんに対する意識を高めること、そしてその輪を広げていくためにはアクションが必要だそう。

「検診を受けている方が少ないのは大変残念なことです。ブレスト・アウエアネスを行動に変え持続を促すピンクリボン運動で、私たち一人ひとりだけでなく社会全体の意識や行動を変え、乳がんを取り巻く未来を変えることができます」(島田先生)

セミナーの最後には、乳がんの正しい知識を学び、人に伝える勇気を後押しする試験「ピンクリボンアドバイザー認定試験」や、「ピンクリボンウオーク」が紹介。

ピンクリボンウオークは、乳がんを知ること、知らせること、そして支えることで、乳がんにやさしい社会を目指すチャリティーイベント。11月末まで開催されていて、どこでもいつでも自分のペースで参加ができます。目標のゴールを目指すことで乳がんリスクを下げる運動習慣も身に着きます。ラン&ウオークを楽しみながら、乳がん啓発のためのアクションにつながる一歩を一緒に歩むことができる。

ELLEgirl

乳がんの経験を発信する三者三様の思い

後半では、乳がんを告知され、自身の経験を発信する3名を迎え、「身体についての発信で気をつけたいこと」をテーマにした対談を実施。発信で気をつけていることや経験を伝える想いを語り、理解をより深める機会となった。

ELLEgirl

当事者や周りにいる人たちの気持ちも汲み取る

乳がんの治療や症状は、人によってさまざま。経験談が参考になったり、乳がんについて知るきっかけを生んでくれる。

43歳のときに乳がんが見つかったという医療ジャーナリストの増田美加さん。マンモグラフィによる悪性の石灰化という、しこりになる前のステージ0の早期発見で、治療は、悪性の部分を手術で取っただけ。身体にも心にもやさしいものになったのだとか。

「進行がんの方もたくさんいらっしゃるので、『私の体験をどう受け取るのか』というのを常に頭の隅に置きながら発信しています。ただ早期発見だと簡単な治療ですみ、乳房も残せて、命の不安も少ないことを伝えることは、乳がん検診に行くことの意味や重要性をわかっていただけるかなと思っています」(増田さん)

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医療情報を発信するときは、患者だけでなく、家族や友人など周りにいる人も念頭に入れながら伝えているそう。

「家族も心配して悩んで、がんの治療を一緒に乗り越えてきた存在です。当事者だけでなく、その周りにいる人たちも不安なんだ、ということを意識しています」(増田さん)

「笑顔で生きている」と伝えるために

「乳がんになっても笑顔で生きている人がいる、というのを伝えたくて発信している」と言う動画クリエーターのMegさん。36歳のときにステージ2の乳がんを告知された。

「さらりと告知をされたので、正直すぐに受け入れられませんでした。でも受け入れられなかったからこそショックが少なかった、という部分もあって。何を考えたらいいかわからないまま手術まで進んでいきました。左胸の全摘手術をし、半年間の抗がん剤治療を経て、現在はホルモン治療を行っている最中です」(Megさん)

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乳がんについて伝えるときは、「乳がんを一括りにしない発信を心かげている」という。

「動画などで乳がんについて話すときは、冒頭で『私の場合は』と強調するようにしています。また、動画を発信するようになってから、『これって乳がんですか?』『病院に行ったほうがいいですか?』と聞かれることが多々ありますが、私は医療のプロではありません。『メディカルのアドバイスはできないのでご了承ください』と事前に伝えています」(Megさん)

手術後の日常を自分目線で発信

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モデルとして活躍する佐藤弥生さんは、35歳のときに石灰化が発見されたそう。そのときは異常が見られなかったものの、43歳のときに精密検査を受けたところステージ0の乳がんに。影響している範囲が広く、全摘手術が行われました。術後の様子を「弥生日和」というブログでつづっている。

「Megさんと同じく、訳がわからないまま医者からスケジュールが話されました。ショックでしたが、『受け入れなきゃな』という状況でしたね。手術のことや先生に言われたことを書いた日記が溜まってきたので、『思い切ってブログに書いてみようかな』と思ったのがブログをはじめたきっかけです。ブログは反響も大きく、『ステージ0で全摘出』や『しこりがない』、という点に興味が持たれたんだと思います」(佐藤さん)

ブログではインナー選びのことから手術のことまで、幅広く日常についてつづる佐藤さん。がんサバイバーの術後の過ごし方など、自分が体験して初めてわかったことを発信していきたいと語った。

『乳がん=しこり』だけではない?

インターネットやSNSなどを介して膨大な情報が交錯しているなかで、乳がんに対する誤解や誤った知識が出回っていることも。ステージ0の乳がんを経験した佐藤さんは、「『乳がん=しこり』というイメージが強い」ことに気が付いたそう。

「自分で触って、異常があったら病院に行くのは正しい行動の一つですが、ステージ0や非浸潤がんなど、病院の検査でしか見つからないものもあります。現状は、健康診断のオプションとして乳がんや子宮頸がんなどの検査が受けられるようになっていますが、検査がより日常的になることも大切だと思います」(佐藤さん)

Megさんは乳がんを告知されるまで、「乳腺科」等の存在を知らなかったそう。そして動画視聴者の間でも、乳がんの場合は産婦人科に行くべきだと思われている誤解があると気づいたのだとか。「知らないことを調べることはできないので、知っているだけでも心強いはず」と述べた。

誤解や誤った知識が拡散されないよう、増田さんは情報の発信とともに確かな情報源をお知らせしているという。

「たとえば国立がん研究センターの『がん情報サービス』は、知識が全くない方にもわかりやすく、詳しい情報が書いてあります。また、『⚪︎⚪︎(知りたいキーワード) 厚労省』で検索すると、厚労省が発信している情報が得られます」(増田さん)

経験を語ることが支えになる

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病気を抱える不安があるなかで、笑顔で日常を過ごすサバイバーの姿を見て勇気づけられることもありそう。1人の発信が誰かのアクションを後押しし、将来にポジティブな変化をもたらす可能性を秘めている。

「体験談を伝えることは、ピアサポート(同じ経験を持つ者同士が支え合うこと)の一つ。私たちサバイバーが心や気持ちの変化をつづることが、同じ病気の当事者の支えになると考えています。また、自分ごととして捉えてもらい、検診やブレスト・アウェアネスの大切さを伝える役割もあるでしょう」(増田さん)

「同じステージでも治療法は、一人ひとり異なります。『同じステージなのに、なぜ私は〇〇さんの治療とは違うの? 』と不安にさせないよう、乳がん医療は進歩し、治療の個別化が進んでいることも併せて発信しています」(増田さん)

参加者同士で交流を育む時間も......

それぞれ世代も発信している分野も異なる方々が、その垣根を超えて集まったイベント当日。セッションごとの合間には参加者同士で写真を撮ったり気持ちを語り合ったり、ポストイットに思いや感想を書いたり、各々の楽しみ方で過ごした。

ポストイットには、自分の胸をもっと見てあげたい、検査をがんばりたいといった声がたくさん。サバイバーの経験をうかがった参加者からは、「自分や周りの人が病気になって不安になり、そこでやっと調べることが多い。知っているのと知らないのとでは対応の仕方が違うと思うので、お話が聞けて本当によかったと思います」などの感想が寄せられた。

乳がんについてもっと知る

セミナーやパネル・ディスカッションの内容は、ハースト婦人画報社の公式YouTubeで公開中!

セミナー「ブレスト・アウェアネスを学ぶ」

パネル・ディスカッション「乳がんサバイバーと考える、身体についての発信で気を付けたいこと」

またピンクリボン活動は年間を通して行われていますが、10月は特にその啓発運動が強化される時期。これを機に、ピンクリボン活動についてももっと知ってみよう。

ピンクリボンウオーク2024

ピンクリボンアドバイザーになろう

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イベントのお土産には、キャンドルの利益の一部を「BIG against Breast Cancer Foundation」に寄付し、乳がん研究への貢献に働きかけるバオバブ コレクションや、ピンクリボンキャンペーンを展開するイタリア発のランジェリーブランド「インティミッシミ」のトラベルポーチ、「あなたはあなたが食べたものでできている」というメッセージをかかげ自身の体を労わるスイーツづくりをする「ポッシュ」のクッキーが。繰り返し使えるよう「むす美」の風呂敷に包んで参加者に渡された。

「Social Echo Club」とは

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「Social Echo Club(ソーシャル・エコー・クラブ)」は、インフルエンサーやエディターなど発信者がともに正しく学び、価値観をアップデートしていく場として発足したハースト婦人画報社のプロジェクト。2024年3月には国際女性デーに合わせたイベントを初開催された。

不必要な傷つきや軋轢を生まないためには、正しい知識をもとにした、包括的で公平な発信が不可欠。識者を招いたセミナーやパネル・ディスカッションを通し、そこで得た気づきや学びがファンや読者など、その先へ伝播(エコー)していくことを目指しています。

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