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ブラック道長全開! 紫式部、清少納言、和泉式部。三大スターの揃い踏みと執筆動機。

  • 2024.10.16

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

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光る君へ 第38回「まぶしき闇」あらすじ&今週も言いたい放題ブラック道長全開! 紫式部、清少納言、和泉式部の三大スター揃い踏み。三者三様の執筆動機も

今週というか、先週のお当番なのに諸般の事情で周回遅れとなっているM男です。すみません。この後、今週のお当番のN子さんがすぐにアップしてくださるでしょうから、この遅れはすぐに挽回できるはず。しばしお待ちください。

平安女流文学三大スターが、意味深いやりとりを繰り広げた第38回。ブラック道長の屁理屈も含め、メチャ面白い回でした。

藤壺にいるまひろの元へ、殴り込みに来た桔梗

オープニングは、まひろと桔梗のバトル、いやバトルというか、ある意味では桔梗の「殴り込み」にも近い修羅場でした。

 

史実としては、紫式部と清少納言に接点があったかどうかは不明、むしろ無かったのでは、という説が強いようですが、もし二人があの時点、つまり敦成親王が生まれ、一条帝が藤壺に通うようになった頃に出会っていたとしたら、一条帝の心を奪った物語の作者としての紫式部を、清少納言は許すことができず、きっとあのような恨み言のひとつでも投げかけたでしょうね。

 

桔梗が動くにつれ、照明の加減で顔に影が落ち陰影ができ、表情も険しくなり、最後には眼が吊り上がって……。怖いシーンでした。

ついに壊れた伊周。三浦翔平さん、歯は大丈夫でしたか?

眼が吊り上がっていたといえば、伊周もそうでした。吊り上がっているどころか、完全に壊れてしまいました。

 

人形(ひとがた)を嚙み砕くシーンなんぞ、演じる三浦翔平さんの歯が欠けるのではないかと心配しましたよ。

 

一方で、回を追うごとに当初のヤンチャぶりから、どんどんまともになっていく弟の隆家。後には九州で大活躍して道長を助け、安部晴明の「後々、道長さまをお助けします」の予言はあたることに。

 

調べると、隆家の家系は上級貴族として明治時代まで続いたとか。もともとは、彼が花山院に向けて矢を放ったことから伊周の悲惨な人生は始まったわけですから、人間の運命はわからないものです。

出ました!ブラック道長。でも、言ってることは屁理屈なのでは……。

ブラック道長が前面に出てきました。息子を呼んで、何をしなければならないかを諭します。久々のゴットファーサー的演出。音楽もパイプオルガンです。道長のセリフ、おそらく彼もわかっていると思うけど、ロジックが微妙というかかなり破綻しています。

 

「本来、お支えするものがしっかりしておれば、帝はどのような方でも構わない」

「されど帝の御心をいたずらに揺さぶるような輩が出てくると、朝廷は混乱をきたす」

「いかなる時も我々を信頼してくださる帝であってほしい。それは敦成様だ」

ここでパイプオルガン。

「家の繁栄のためではないぞ」

「為すべきは、ゆるぎない力を持って、民のためにまつりごとを行うことだ」

 

うーむ、一見まともなことを言っているように見えますが、結局は自分の孫を帝にしたい屁理屈としか思えませんね。もし敦康親王が帝になったら、伊周サイドからすれば、道長こそが、帝の心をいたずらに揺さぶる存在になるわけですから。もう、ブラック道長全開です。タイトルの「まぶしき闇」とは、このこと?

 

突然そんなことを言われて、驚く頼道の気持ちも分からないではありません。でも、道長は敦成親王を東宮にする方向で突き進もうとします。

 

なぜなら、彰子さまと敦康親王の、ちょっと危ない仲睦まじき姿を見てしまったから。彼の脳裏に浮かぶのは、当然のことながら、まひろが描いた源氏の物語。義母である藤壺と密通してしまった光源氏の姿です。「やばい、これはまひろの物語と同じではないか」彼は、きっとそう思ったことでしょう。

源氏物語、彰子と敦康親王、そしてまひろと道長。重層的に重なる物語

まひろはまひろで、半紙に「不義」「密通」「罪」など、ただならぬ言葉を書きつけて思案顔です。

 

物語の構想を練っているともいえるし、よくよく考えれば、「不義」であり「密通」であるのは、自身と道長の関係もまさにそう。源氏物語のストーリ、彰子と敦康親王の危うい関係、そして自分と道長とのこと。いくつもの思惑が重なり、重層的な響きを奏でながら物語は進行していきます。なかなか深いぞ! こんな深いドラマになるとは。最初の頃、誰がここまで想像したでしょうか。素晴しい!!

 

そんななかで、娘の賢子の裳着に何かいただきたいと、道長にちゃっかりおねだりするまひろ。娘の父親ですからね、それは当然かも。自分が父親であることを知らずか、知らぬふりか、道長は賢子を彰子の女房に出仕させよう、とまで提案。実際この9年後に賢子は彰子の女房となります。

 

「あれ?」なんてカマトトぶってた賢子が、やがては恋多き女性といわれ、大弐三位(だいにのさんみ)として、母の紫式部と並び、百人一首に名を残すとは。なかなか感慨深いものがあります。ちなみに母娘で百人一首に名を残しているのはもう1組、そう、茜こと和泉式部とその娘、小式部内待です。

 

「源氏の物語はお仕事?」無邪気に問う茜。答えられないまひろ。

最初のうちは、あの軽さが浮いていて「なんだかなぁ」の茜でしたが、重い雰囲気ばかりの展開のなか、彼女が登場すると、ちょっと肩の力が抜け、ほっとします。

 

「和泉式部を名乗れ」と言われたことを拒否するなんて、もう抱腹絶倒。

 

茜はまひろに、『和泉式部日記』を渡します。考えてみれば、なかなか重みのあるやりとりが交わされました。

 

「これを書いているうちにまだ生きていたいと思うようになりました。書くことで命が再び息づいてまいりました。まひろ様も、源氏の物語をお書きになることでご自身の悲しみを救われたのでしょ?」と、まひろに問いかける茜。

 

それに対し、「そのような思いではありません。頼まれて書き出した物語ですので。されど、書いておれば諸々の憂さは晴らせますもの」と答えるまひろ。

 

「お仕事なのですね」と無邪気に返す茜。まひろは、それに対し何も答えられません。もしかしたら、なかば当たっているから?

今明かされる、平安女流文学三大スターのそれぞれの執筆動機

冒頭部分での、桔梗との会話がオーバーラップしてきます。

 

心から慕う中宮定子様を思って『枕草子』書いた桔梗。自分の命を長らえるために『和泉式部日記』を書いた茜。

 

一条帝の心を奪うために書きはじめられた『源氏物語』の執筆動機は、もしかすると、二人にくらべるとややピュアさに欠け、だからこそ「お仕事ね」と突っ込まれた時には、返す言葉が見つからなかったのかも。

 

いやいや、動機の真底には、困っている道長を助けたいという彼女なりの愛があったものの、それは公言することはできず、しかも一度書き始めたら、作家としての創作意欲にかられ膨大な物語を書き続けたのでは……。

 

紫式部、清少納言、和泉式部。平安女流文学の三大スターが登場し、それぞれの作品の成立を改めて深く考えさせられた第38回は、道長の権力掌握というメインスト―リーとは別に、なかなか感慨深い回でした。

 

第40回の大台も近づいてきました。大河ドラマって、40回を迎えると、あと数回、師走も近いなぁ、という切ない思いに捉われます。どんなエンディングを迎えていくのか。次回も楽しみです!!

 

「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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