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脳梗塞かも…と思ったら【医師監修】その後の生活の質を左右する!4つのFASTチェックと治療法

  • 2024.10.14

脳梗塞の治療は時間との闘いです。一刻も早く適切な対処ができるかどうかで、その後の生活の質が左右されます。今回は、脳梗塞の治療について、杏林大学医学部付属病院脳卒中センター長の平野照之さんに教えてもらいました。

脳梗塞に有効な2つの治療法

脳梗塞を起こすと血流が途絶えた場所の神経細胞がダメージを受けますから、できるだけ早く血流を再開させることが肝要です。そこでまず行われるのが、血栓を溶かす薬を点滴で投与する「t-PA(ティーピーエー)療法」と、血管にカテーテル(細い管)を入れて血栓を取り除く「血栓回収療法」です。
 

■t-PA療法     

t-PA療法

発症後4.5時間までの早期に行う治療法です。t-PA(アルテプラーゼ)製剤を1時間ほどかけて点滴で投与します。血液が固まりにくくなるので、出血のリスクがある人は受けられません。

「t-PA療法は発症から4時間半以内に開始します。就寝中に発症して朝、症状に気付いたような場合はいつ発症したかがわからないため、以前は治療できないことが多かったのですが、最新のCTやMRI検査の結果次第では、発症時間が不明でも治療が可能になりました」と杏林大学医学部付属病院脳卒中センター長の平野さんは話します。

■血栓回収療法     

血栓回収療法

発症後24時間以内に行う治療法です。足の付け根の血管から脳にまでカテーテルを挿入し、「ステントリトリーバー」と呼ばれる網目状の器具で血栓を絡め取ります。t-PAができない例に最初から行うこともあります。

血栓回収療法も以前は発症後8時間以内が治療対象でしたが、こちらも画像検査の結果によっては最長24時間まで延長可能に。「治療を諦めずに済む患者さんが増えているのは朗報。脳梗塞の治療は日進月歩。適切な治療を迅速に行うことで後遺症を残さずに回復できる人もいます」と平野さんは言います。

くも膜下出血や脳出血の治療法も知っておきましょう

くも膜下出血や脳出血の治療法も知っておきましょう

■くも膜下出血
脳の血管の一部がコブ状に膨らむ「脳動脈瘤」。これが突然破裂すると、くも膜下出血が起こります。治療では、動脈瘤の根元をクリップで留める「クリッピング術」や動脈瘤にコイルを詰める「コイル塞栓術」で、動脈瘤の再破裂を防ぎます。

■脳出血
血圧を下げたり、脳のむくみを取ったりする薬物治療が中心です。出血による血腫が大きい場合などは、それを取り除く手術を行うこともあります。

「脳梗塞かも…」まず4つのFASTチェックを! 

「脳梗塞かも…」まず4つのFASTチェックを!

もしや脳梗塞かも……と思ったとき、ぜひ試してほしいのが「FAST」によるチェックです。 こんな症状が出てきたら、すぐに救急車を呼びましょう。

・Face……顔の片側が下がる、ゆがむ
・Arm……腕の片方に力 が入らない  
・Speech……言葉が出てこない、  ろれつが回らない  
・Time…… 発症時間を確認して、すぐ119番に電話する

鏡を見て顔の片側がゆがんでいないか、両腕を同じように持ち上げられるか、言葉がちゃんと出てくるか、いつから症状が出たのかを確認する方法です。もし異常が一つでもあれば、すぐに救急車を呼びましょう。

新型コロナへの感染で脳梗塞のリスクが上がる恐れも

新型コロナへの感染で、 脳梗塞のリスクが上がる恐れも

実は、脳梗塞についても新型コロナの影響が少なくないことをご存じでしょうか。平野さんは大きく2つの問題があると話します。

■脳梗塞の発症リスクが上がる
「一つは、脳梗塞の発症リスクについて。新型コロナに感染すると血液が固まりやすくなることがわかっています。特に高血圧や糖尿病などの持病がある人や脳卒中を起こしたことのある人が感染すると、発症リスクが上がります。新型コロナ予防は、脳梗塞予防にもつながるわけです」と平野さん。

■感染症を恐れての受診控え
もう一つの問題は、新型コロナを心配しての受診控えです。高血圧の患者さんが受診を控えて手持ちの降圧薬がなくなり、脳出血を起こしたというケースもあったそう。また脳梗塞の症状が出ているのに受診をためらい、いよいよ病状が悪化してから救急車で運ばれてくることもあるといいます。

「数分から24時間以内に症状が消える一過性脳虚血発作(TIA)や軽症の患者さんで受診が遅れる傾向があるようです。様子を見ているうちに時間が過ぎ、効果的な治療を受けられなくなった患者さんもいました。脳梗塞治療は時間が勝負。病院では感染症対策をしっかりしていますから過度に怖がらず、とにかく早く受診を」

■救急車を呼ぶときは、感染対策を心掛けて     

救急車を呼ぶときは、感染対策を心掛けて

脳梗塞を疑う症状だけでなく、感染症の可能性はないか、発熱や風邪のような症状はないかも伝えるようにしましょう。そして同行する家族ともども極力、マスク着用で病院へ。「これまでと変わらない質の高い診療を継続できるよう、感染予防にどうかご協力ください」と平野さん。

<救急車を呼ぶときに注意すること>
・発熱や風邪の症状があれば伝える  
・新型コロナウイルスなど感染症の可能性があれば伝える  
・極力、マスクを着用 (嘔吐などで難しい場合は除く)

脳梗塞は効果的な治療を迅速に行えば、救命はもちろんのこと、後遺症も最小限に抑えられます。症状が出たときに慌てずに対処できるようにしておきましょう。

教えてくれたのは、平野照之(ひらの・てるゆき)さん

教えてくれたのは、平野照之(ひらの・てるゆき)さん

杏林大学医学部付属病院脳卒中センター長。杏林大学医学部教授。1988年、熊本大学医学部卒業。同大学第一内科、国立循環器病センター、豪州メルボルン大学、大分大学などを経て、2014年から現職。専門は脳卒中医療。日本脳卒中学会理事、日本神経学会代議員など多くの学会の要職に就く。著書(監修)に『脳卒中の再発を防ぐ本』(講談社刊)がある。

取材・文=佐田節子 イラストレーション=おおの麻里 構成=大矢詠美(ハルメク編集部)

※この記事は雑誌「ハルメク」2021年2月号を再編集、掲載しています。


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