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【比較レビュー】包丁が切れると料理はうまくなるか…?《価格差約300倍》100均包丁と3万円包丁で切り比べてみた

  • 2024.10.14

いい包丁を使うと料理は上手くなるの?

いい包丁を使うと料理は上手くなるの?
いい包丁を使うと料理は上手くなるの?

筆者は料理は好きですが、上手とはいえないレベル。 当然、毎日の調理の際に包丁は使うのですが、なんとなく購入した数千円程度のものを使っています。 しかし実際のところ、 お店や料理本などで見るような美しいレベルで食材を切ることはできません。そこで沸き上がったのが、包丁を変えれば食材を上手に切ることができるようになり、料理が上手くなったように感じるのだろうかという疑問。

これを検証するため、100円ショップのダイソーで税込み110円で購入したプチプラ三徳包丁と、燕三条の伝統と刀の遺伝子を受け継ぐ本格包丁を比較しようと考えました。

これが今回の使用アイテム。1本税込み3万2100円の「剣謙心 DP霞流鋼割込口金付三徳包丁170mm」です。刀身に入った模様、全体のシルエットの美しさとさすが高級包丁といった風情です。

1本税込み3万2100円の「剣謙心 DP霞流鋼割込口金付三徳包丁170mm」。
1本税込み3万2100円の「剣謙心 DP霞流鋼割込口金付三徳包丁170mm」。

お次に、100円ショップの包丁です。切り出した鉄板に刃を付けました的な立体感のない刀身。コストをギリギリまで削ったようなプラスチック製の柄。しかし税込110円で包丁が提供できることがすごい。

ダイソーの三徳包丁
ダイソーの三徳包丁

税込価格差291倍、 ざっくり約300倍の価格差のある2本の包丁を比べれば、さすがに鈍感な筆者でもその切れ味の違いが実感できると考えたのです。

手に取ってみるまでもなく、道具としての気合いが違う

2本の包丁を並べてみたところ。上がダイソーの三徳包丁。下が税込3万円オーバーの「高級三徳包丁」。同じ道具で価格差が約300倍ってやはりすごい。
2本の包丁を並べてみたところ。上がダイソーの三徳包丁。下が税込3万円オーバーの「高級三徳包丁」。同じ道具で価格差が約300倍ってやはりすごい。

剣謙信の「剣謙心 DP霞流鋼割込口金付三徳包丁170mm」(以下「高級三徳包丁」)が到着したので、筆者は比較用のプチプラ三徳包丁を近所のダイソーで買ってきました。当たり前ですが税込み110円です。100円ショップで包丁が売っていること自体もすごいのですが、過去にも使ったことがあるのですが、それなりに切れるのがもっと恐ろしいのです。

しかし、同じ包丁ですが、素人目にもわかるくらいダイソーの100円プチプラ包丁「Galaxy 万能包丁」(以下「100円万能包丁」)が安っぽい。ペラッとした包丁の刃、見るからに安価なプラスチック製の柄と、さすが100円といった印象です。

これに対して高級三徳包丁はその名の霞流鋼(霞流し鋼=ダマスカス鋼)のとおり、ローカーボンステンレスとハイカーボンステンレスを交互に折り重ねた美しい模様が現れた刀身、芯材にはV金10号という現在最高峰のステンレス刃物鋼が使用され、金属製の口金が装備され、さらに金属の中子が柄の部分までしっかりと通った本通し仕上げと、こちらも素人目にも高そうとわかる仕様になっています。

実際に手にとってみると、「100円万能包丁」は実測85gと非常に軽いのですが、プラスチック製の柄は細く安定感に欠け、強い力を掛けたり、細かな作業をしたりするのにやや不安です。また、プラスチック素材が安っぽく滑りやすいのも不安感を増長させます。一方「高級三徳包丁」は実測で178g、倍以上重いのですが刀身と柄の間に配置された金属製の口金の重さなどで持ったときのバランスがよく、積層強化材の柄はぴったりと手になじみ、持ちやすく安心感があります。

パッケージングについては「100円万能包丁」のほうが近代的な印象。「高級三徳包丁」はある意味伝統的な紙箱仕様です。
パッケージングについては「100円万能包丁」のほうが近代的な印象。「高級三徳包丁」はある意味伝統的な紙箱仕様です。

価格差約300倍なので、当たり前といえば、当たり前ですが3万円オーバーの「高級三徳包丁」のほうが実際に食材を切ってみる前から圧倒的に切れそうな印象なのです。

まずはビンチョウマグロのサクを刺身にしてみた

まずは比較的切りやすいと思われる「ビンチョウマグロ」のサクを切ってみました。スジも少なく、価格も安いので多少の失敗は許せるイメージです。
まずは比較的切りやすいと思われる「ビンチョウマグロ」のサクを切ってみました。スジも少なく、価格も安いので多少の失敗は許せるイメージです。

切っても差が出づらい食材を切っても仕方ないので、比較的切りにくい刺身で比較を行ってみました。それでもスジなどが少なく切りやすい「ビンチョウマグロ」での比較です。

「高級三徳包丁」で切った「ビンチョウマグロ」。刺身の角が潰れることもなく、断面も非常にフラットで美しいのがわかるでしょう。
「高級三徳包丁」で切った「ビンチョウマグロ」。刺身の角が潰れることもなく、断面も非常にフラットで美しいのがわかるでしょう。

まずは「高級三徳包丁」で切ってみました。筆者は自宅の三徳包丁で刺身のサクを切ると刺身がボロボロになるのがイヤでサクは買わずにパックの盛り合わせを買う派ですが、「剣謙信三徳包丁」はびっくりするくらい滑らかに「ビンチョウマグロ」のサクの中に包丁の刃が入っていき、刺身の角も潰れることなく、気持ちよく切れました。

もっと差が出るかと思ったのですが「ビンチョウマグロ」について、包丁の違いでびっくりするほどの差は出ませんでした。
もっと差が出るかと思ったのですが「ビンチョウマグロ」について、包丁の違いでびっくりするほどの差は出ませんでした。

これに対して「100円万能包丁」は、滑らかに刃が入らず、刺身の角は潰れ、刺身をボロボロにしてしまうのでは?と思ったのですが、結果はかなり上々。「高級三徳包丁」に比べると、刺身のサクに対する刃の入り方も滑らかではないですし、切るときに力が入っているのも事実ですが、刺身の角が潰れるほどではなく、切断面もさほど荒れることなく「ビンチョウマグロ」を刺身にすることができました。

「ビンチョウマグロ」については、どちらの包丁を使っても、自宅でサクから刺身にしてもいいかと思えるレベルの結果といえます。

スジの多い「本マグロ中トロ」のサクを切り比べてみた

「100円万能包丁」で「本マグロ中トロ」のサクを切ろうとすること自体が食材に対する冒涜なのでは?とすら思いましたが、実際に切ってみました。
「100円万能包丁」で「本マグロ中トロ」のサクを切ろうとすること自体が食材に対する冒涜なのでは?とすら思いましたが、実際に切ってみました。

「ビンチョウマグロ」は刺身のサクのなかでも比較的切りやすいといえるでしょう。これに対してスジの多い「本マグロ中トロ」はかなり切りにくい刺身です。脂がのって柔らかな身が固いスジの間に挟まっているので、切れ味の悪い包丁では刺身がズタボロになってしまいます。

筆者は「本マグロ中トロ」なんてものは、お寿司屋さんの刺身用包丁でしかきれいに切れないと思っていたので「高級三徳包丁」の切れ味に驚きました。
筆者は「本マグロ中トロ」なんてものは、お寿司屋さんの刺身用包丁でしかきれいに切れないと思っていたので「高級三徳包丁」の切れ味に驚きました。

「高級三徳包丁」で切ってみたところ、余計な力が入らないので、刺身の角が潰れることもなく、包丁自体の切れ味がよいのでスジが引っかかって伸びてしまうこともありません。「本マグロ中トロ」を切るなら専用の刺身包丁が必要かと思ったのですが、「高級三徳包丁」なら、筆者は自宅では絶対に切りたくないと思っていた「本マグロ中トロ」も十分の以上のレベルで刺身に切り分けることができました。

一方「100円万能包丁」で「本マグロ中トロ」を切った結果はズタボロとはならなかったものの、お高い「本マグロ中トロ」を切るなら、それなりの包丁を用意したいと思うには十分なものでした。脂で滑りやすく柔らかい身と硬く切りづらいスジを同時に切断するので、包丁の切れ味に対する要求レベルはかなり高いと思われます。そのため「100円万能包丁」では刺身のサクに滑らかに刃先が入っていかないため刺身の角がやや潰れ、さらにスジをうまく切断することできず、引っ張ってしまうので、スジの部分が伸びて刺身の形が変わってしまうことがあるのです。

潰れて、よじれて、スジの部分が伸びてしまった「本マグロ中トロ」。こうなるから筆者は家で刺身を切るのはイヤなのです。しかもお高い「本マグロ中トロ」なので残念。
潰れて、よじれて、スジの部分が伸びてしまった「本マグロ中トロ」。こうなるから筆者は家で刺身を切るのはイヤなのです。しかもお高い「本マグロ中トロ」なので残念。

あまり美しくない仕上がりです。

さすがに「本マグロ中トロ」のような切りづらい高級食材は、それなりの包丁で切る必要があるのでしょう。というか、三徳包丁でそれなりのレベルで「本マグロ中トロ」が切れる「高級三徳包丁」のほうが異常ともいえます。

トマトってこんなに気持ちよく切れるんだと驚愕

トマトを簡単に薄切りにしてしまう「高級三徳包丁」。まさに一刀両断という印象で本当に切るのが気持ちいいのです。
トマトを簡単に薄切りにしてしまう「高級三徳包丁」。まさに一刀両断という印象で本当に切るのが気持ちいいのです。

刺身でのテストを行ったので、包丁の試し切りのお約束ともいえるトマトも切ってみました。半分に切ったトマトを薄切りにしてみたのですが、それぞれの結果は以下のような印象です。

「高級三徳包丁」の場合、トマトの皮の部分で滑ることなく、滑らかに包丁がトマトに入っていき、皮、身、柔らかなタネの部分と硬さの異なる部分もほとんど同じ力で切り進むことができます。そして柔らかなタネの部分も含めてスパッと両断される印象。

トマトスライス1枚1枚の断面が恐ろしくフラットできれいなのがわかるでしょうか。トマト全体もまったく潰れておらず、角もしっかりと立っています。
トマトスライス1枚1枚の断面が恐ろしくフラットできれいなのがわかるでしょうか。トマト全体もまったく潰れておらず、角もしっかりと立っています。

切っているうちに「もしかしたら、もっと薄く切れるのでは?」と、ドンドン薄く切りたくなるのです。また、余計な力がまったくかからないので、トマト自体が潰れることもなく、しっかりと角の立った美しいスライスに仕上がります。

「100円万能包丁」の切れ味は、ひと言でいうなら「平凡」です。トマトの皮部分への包丁の入り方はやや抵抗があり、どうしてもやや力が入ってしまいます。そのため、半分切ったトマトを切っているうちにトマトに力がかかって、トマトが潰れて開いてしまうのです。

「100円万能包丁」でここまで切れれば上出来ともいえるでしょう。しかし、比較するとトマトは潰れて変形しており、柔らかなタネの部分から水分が流れ出ています。
「100円万能包丁」でここまで切れれば上出来ともいえるでしょう。しかし、比較するとトマトは潰れて変形しており、柔らかなタネの部分から水分が流れ出ています。

また、柔らかなタネの部分はスパッと切れたという感じではなく、やや潰れ気味になります。そのため、トマトスライス自体もやや潰れた感じに仕上がってしまいます。

切ったトマトスライスも食べ比べてみたのですが、ただ切っただけなので、スパッと美しく切れた「高級三徳包丁」で切ったもののほうが、気分的なものもあるかもしれませんが美味しく感じました。

「カボチャって切れるんだ」と感心することしきり

カボチャって切れるんだと感心しました。無理矢理力づくで切っているときの半分くらいの力でカボチャが切断できるイメージです。
カボチャって切れるんだと感心しました。無理矢理力づくで切っているときの半分くらいの力でカボチャが切断できるイメージです。

せっかくなので硬いものもと思い、カボチャも切ってみました。普段の包丁でも途中まで刺さった包丁を強い力で押して、たたき切っている印象なのですが……。

本来、刃物は押したり、引いたりするときに切れるものなのですが、カボチャを切っているときは硬くて、力づくでたたき割っている感じでした。しかし「高級三徳包丁」ではカボチャを押して切っていることがよくわかります。力づくでたたき割るのではなく、刃物の切れ味で切断する印象。無理な力がかかっていないので、カボチャを切るときにも逆に安全な印象すら受けました。

普段どおりというか、切るというよりは力づくで割ったというイメージの「100円万能包丁」で切ったカボチャ。こちらのほうが普通でしょう。
普段どおりというか、切るというよりは力づくで割ったというイメージの「100円万能包丁」で切ったカボチャ。こちらのほうが普通でしょう。

逆にちょっと怖い印象だったのが「100円万能包丁」でカボチャを切ることです。切れ味の差も大きいのですが、かなりペラペラの包丁の刃ととてもしっかりとしているとはいえないプラスチック製の柄の組み合わせなので、カボチャを切る際に力をかけるのが怖い。しかも、ほかの食材でも感じたのですが、包丁がスーッとは入っていかないので、力をかけたときにカボチャに刃先が弾かれることもあるのです。この瞬間がとても危ない。いろいろな意味で包丁に強い力をかけないと切れないものは「100円万能包丁」には向いていないと感じました。

よい包丁を使うと、料理はおいしく、楽しく感じる

2本の包丁を比べて性能差を語ることよりも、包丁がよく切れると料理は楽しく、美味しくなるかを検証した今回のテスト。
2本の包丁を比べて性能差を語ることよりも、包丁がよく切れると料理は楽しく、美味しくなるかを検証した今回のテスト。

言い過ぎじゃないのか?と感じたり、大げさだと思われそうなので「よい包丁を使うと、料理はおいしく、楽しく“感じる”」と感じるを付けましたが、断面がどうなっているなどの科学的な根拠はありませんが、よい包丁で切ると少なくても筆者と筆者の家族はよりおいしく感じるのです。

例えば、トマトスライスやキュウリのスティックなど切って、そのまま食べる野菜、さらにナシやリンゴ、オレンジといった皮をむいたり、切っただけで食べるフルーツは断面が美しい高価な包丁で切ったほうがおいしく感じました。はっきりいって、ちょっとびっくりです。

さらに料理が楽しくなるのも、明らかに主観ですが、切るという動作が楽しいのです。だって、なんでもスパッと気持ちよく、美しく切れるのですから、しかも美しく切った食材は、いつもよりおいしく感じるのです。ですから、料理自体がさらに楽しくなります。

筆者は、切れ味の差で料理がうまくなるのかを実感したかったので3万円を超える「剣謙心 DP霞流鋼割込口金付三徳包丁170mm」と100円ショップで税込110円の包丁を比較しました。結果、よい包丁を使うと実際に切ることが楽しくなり、切っただけで普段よりおいしく感じるのですから、よい包丁を使うだけで料理はうまくなるといってよいでしょう。もしかすると料理がもっとうまくなりたいと思ったら、今使っている包丁を見直してみるのもよいかもしれません。

(千秋)

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