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「バーバリーにとって大きな節目です」──生まれ変わったニューヨーク旗艦店のオープンを前にしてダニエル・リーが語ること

  • 2024.10.13
バーバリー ニューヨーク旗艦店の店内。
Generated imageバーバリー ニューヨーク旗艦店の店内。

ダニエル・リーキャリアの原点はニューヨークにある。駆け出しの頃、ダナ・キャランのもとで働いていた彼は、この頃の経験が今の自分を形成したといまだに感じている。「アメリカ人の可能性を見出す視点、潔さ、積極的な姿勢が好きなのです」と彼は話す。「ニューヨークに来るのをいつも楽しみにしています。面倒だと思うことは一生ありません」

2022年末にリーがチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任して以来、英国ラグジュアリー界最大手のバーバリーBURBERRY)は一時的にロンドンのソーホーに拠点を置いている。ウェストミンスターにある本社の改修工事が終わるまでの間だが、リーは在籍期間のほとんどをソーホーで過ごしており、今回のインタビューもこの臨時のオフィスで受けた。

この日ニューヨークが話題にあがったのは、彼が来週現地に向かうからだ。「この時期はいつも目まぐるしいです」と言うリーは、現在メゾンの最新プレコレクションの最後の仕上げに追われている。終わり次第、改装が進められていたもうひとつの店舗、自身が新たに設計したニューヨークの57丁目にある旗艦店のテープカットを行いに海をわたる。

1970年にオープンし、2000年に入って大きく拡張された6階建てのニューヨーク旗艦店は、今回全面的にリフレッシュされた。「一等地にある美しい場所で、建物も実は私たちが所有しています。バーバリーの建築コンセプトを前進させ、進化させるという意味で、私が入社して最初に手がけた店舗でもあります。ショップというものは、とても息の長いものであるべきです。なので、通常はワンシーズン限りで旬の終わりを迎えるコレクションをデザインするのとは大きく異なるのです」

10月16日(現地時間)には正式リニューアルオープンを祝して旗艦店でカクテルパーティーとディナーが開かれ、「英国らしさを改めて吹き込んだ空間」がゲストたちにお披露目される。輸入されたライムストーン床、棚、外観のディテールはジョージ王朝時代の建築のエレガントな厳かさを想起させるよう設計されていて、店内のレールや手すり、欄干はロンドンの街路や鋳鉄製の手すりから着想。「素材のパレットは、メゾンの真髄とヘリテージを反映しています」とリーは説明。また、店内にはテキスタイル・アーティストのトム・アットン・ムーアによるラグが敷き詰められ、リーの望み通り、絨毯やタペストリーがイギリスの田舎の家らしい気風をもたらしている。

伝統と革新のバランスを求めて

カーラ・デルヴィーニュ。
カーラ・デルヴィーニュ。

今月初め、リーが紡ぐバーバリーの物語の新たな一編が公開された。「It's Always Burberry Weather」と題された新キャンペーンには、リーが再構築したメゾンの定番アウターウェア7着をそれぞれ身にまとった7人のアンバサダーが出演。俳優のオリヴィア・コールマン、チャン・ジンイー、バリー・コーガン、バーバリーのヘリテージミューズであるカーラ・デルヴィーニュ、ミュージシャンのリトル・シムズ、サッカー イングランド代表の注目選手コール・パーマーとエベレチ・エゼからなるキャスト陣を、イギリスを象徴する場所や設定で捉えた一連の映像やポートレートで構成されている。

「バーバリーの精神と現代のイギリスらしさを体現する人たちは誰かと考えました。バーバリーのオーディエンスはとても幅広いので、あらゆる芸術やクリエイティブ表現やクラフトを代表する人たちをキャストに起用したかったのです。狭い枠にはめられるようなブランドでは決してないと思います」

オリヴィア・コールマン。
オリヴィア・コールマン。

キャンペーンで特に印象的なのは、ハウスチェックの裏地が付いたキルティングジャケットを着たコールマンが羊の群れに囲まれているカットだ。ジャケットの色はカントリースタイルの定番カラーである深いグリーン。撮影場所はノーフォーク・レーンで、コールマンは1990年代半ばに生産終了したイギリスの4WD「レンジローバー クラシック」に寄りかかっている。鮮やかなヴィンテージ車は、リーのバーバリーに対する全体的なアプローチを表しているのだろうか。

「このブランドは古き良きものを讃えるブランドだと思います。そして私たちが最も美しいと感じ、理想化する状態や形というのは必ずしも最新型ではないのです」と彼は語る。そしてこう続けた。「バーバリーやいくつかの由緒あるブランドにとって、大切なのは常に新しいものを求めるのではなく、すでにあるものの真髄を追求することだと思います。旬であることよりも大事なものが中にはあるのです」。とはいえ、伝統と革新のバランスを模索しながらリニューアルを進めていく上で、やはり今の旬を意識しないわけにもいかない。

バリー・コーガン。
バリー・コーガン。

ランウェイルックを通してメゾンらしさを発掘する方法のひとつとして、リーは服を着用する人物の個性をデザインの礎とする。例えば、先月ロンドンのナショナル・シアターで行われた2025年春夏ショーでは、スパンコールのフリンジをあしらったパーティードレスを頑丈なテクニカルアウターに合わせたルックが登場。アーティストのゲイリー・ヒュームのインスタレーションをバックに披露されたこれらは特に目を引いた。

「スタジオでアイデアを練り、着る人やその人のキャラクターを想像しながらバーバリーの世界観に落とし込むのです。例えばあのパーティードレスの場合、まとっている女性はどう着こなし、どういう場所に着て行くだろうかと考えます。おそらく結婚式か音楽フェスティバルのようなイベントが行われている屋外にいて、目を輝かせてその場を楽しんでいるでしょう。香りによる空間演出がしっかりとされた室内環境ではなく、自然の中にいる。このように、バーバリーの精神に通じる背景や文脈をルックに与えることが大事なのです」

「大切なブランドだからこそ、厳しい目を向けられることもある」

チャン・ジンイー。
チャン・ジンイー。

古くから言論活動が盛んなイギリスに拠点を置くラグジュアリーメゾンとして、バーバリーやその経営陣はしばしば世間の厳しい目にさらされる。創作に携わる者としては、批判的な意見を個人攻撃として受け止めてしまいそうだが、リーはどうなのか。「個人攻撃だと捉えずにはいられませんが、こればかりは慣れるしかありません。というのも、バーバリーがほかの多くのブランドよりも格段に厳しい目を向けられる理由のひとつは、この国にとって大切なブランドだからです。私にとってバーバリーはひとつの組織で、組織には批判は付きものだと思っています」

リトル・シムズ。
リトル・シムズ。

しかし幸いなことに、人びとを天候から守るメゾンの象徴的なトレンチコートと同様に、バーバリーは強くたくましい。リーは最近、新たにCEOに任命されたニューヨーク生まれのジョシュア・シュルマンとともにブランドをリードし始めた。そしてリー曰く、ローズ・マリー・ブラボーとアンジェラ・アーレンツという2人のアメリカ人元CEOとイギリス人デザイナーのクリストファー・ベイリーという組み合わせが、2000年代にメゾンを世界的なファッションリーダーへと成長させた。

ここで話はニューヨークとニューヨーカーに戻る。「からっとした性格の志高い人たちと仕事をするのは本当に楽しいです。アメリカ出身の新CEOを迎えたことは、今のバーバリーにとても合っていると思います」

コール・パーマー。
コール・パーマー。
エベレチ・エゼ。
エベレチ・エゼ。

Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano

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