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奈良の秋の風物詩・正倉院展、第76回の注目点は「見比べ」?

  • 2024.10.13

社会科の教科書等で一度は目にしたことがあるのではないだろうか? 約1300年間、天皇による勅封管理されてきたことで、奇跡的な保存状態で守り伝えられてきた聖武天皇(701年~756年)ゆかりの「正倉院宝物」。その宝物が一般公開される『第76回 正倉院展』が10月26日より「奈良国立博物館」(奈良市)でスタートする。

宮内庁正倉院事務所の西宝庫の扉が開き、参列者が開封の儀のために宝庫内へ入る様子(2024年10月2日撮影)

『正倉院展』開催に先立ち10月2日、宝物が納められている「宮内庁正倉院事務所」で『開封の儀』が執りおこなわれた。朝10時頃、正倉院事務所・飯田剛彦所長先導のもと、参列者が正装姿で西宝庫へ。約1時間かけて、宝庫内の6つの部屋(北倉・中倉・南倉)各扉に付けられた勅封の巻かれた麻縄を切り、海老錠(えびじょう)を解く。

奈良国立博物館の井上洋一館長

この『開封の儀』から『閉封の儀』(11月29日)までの間、約9000件にも及ぶ宝物について正倉院事務所の職員が点検や防虫剤の交換等をおこなっている。この開封期間中、「奈良国立博物館」で約2週間だけ、一部の状態の良い宝物(今年は57件)を一般公開するのが、奈良の秋の風物詩として名高い『正倉院展』だ。

■ 76回目の「正倉院展」、今年の見どころは?

今年の「正倉院展」の注目は、令和4、5年度に正倉院事務所主導で製作された再現模造と、そのオリジナルである原宝物を実際に見比べられることだ。再現模造は、単なるコピーではなく、最新の科学技術による分析・調査結果に基づき、人間国宝ら伝統技術保持者の匠の技で、原宝物と同じ材料、技法、構造、さらには保存方法も同じにするほど忠実に再現したもの。「もうひとつの正倉院宝物」といっても過言ではない。

令和5年度に完成したばかりの再現模造『紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)』は、聖武天皇の遺愛品目録『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』にも記載がある宝物で、聖武天皇が実際に使用したであろう「肘おき」だ。

北倉 紫地鳳形錦御軾(宮内庁正倉院事務所提供)聖武天皇が愛用した可能性がある美しい錦仕立ての肘おき

令和4年度に完成した再現模造『碧瑠璃小尺(へきるりのしょうしゃく)』(ガラス製の黄と緑のものさし)と、再現模造『瑠璃魚形(るりのうおがた)』(4色の魚飾り)は、当時の役人たちが身に付けた腰飾り。明治期から様々な形で模造製作はおこなわれていたが、昭和47年以降の同事務所主導による再現模造としては、初のガラス製宝物だ。

中倉 碧瑠璃小尺、黄瑠璃小尺(宮内庁正倉院事務所提供)腰帯に通したと考えられるガラス製のものさし

これらの再現模造は、奈良時代当初の姿を再現しているので、約1300年経った原宝物が、いかに奇跡的な状態で現存しているのかを改めて実感できる機会になる。

■ 要注目、メインビジュアルを飾った宝物

南倉 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(宮内庁正倉院事務所提供) 現存唯一の七宝鏡

さらに、多くのファンが毎年関心を寄せるメインビジュアルを飾った煌びやかな宝物として、「奈良国立博物館」の記者会見で「現存唯一」と紹介された七宝鏡『黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)』も注目だ。背面に十二弁の宝相華文が表され、その花弁に3色(黄、緑、深緑)の七宝釉薬が焼き付けられており、精巧で華やか。

他にも、聖武天皇ゆかりの鏡20面のうちのひとつで、花鳥文様が美しい白銅鋳造の大型円形鏡『花鳥背円鏡 附帯、紙箋(かちょうはいのえんきょう つけたり おび しせん)』や緑色の地に極彩色で花文が描かれた『緑地彩絵箱(みどりじさいえのはこ)』など、美しい宝物の数々が出陳される。

「第76回正倉院展」は「奈良国立博物館」にて、10月26日から11月11日までの開催。開館時間は、朝8時~夕方6時、金・土・日曜日・祝日は午後8時まで(入館受付は閉館60分前まで)、料金は一般2000円ほか。チケットは、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要。詳細は公式サイトにて。

取材・文・写真/いずみゆか

「第76回 正倉院展」

期間:2024年10月26日(土)~11月11日(月)
時間:8:00~18:00(金・土・日曜日、祝日は20時まで)
※最終入館受付は閉館60分前まで
休館日:会期中無休
入館料:一般2000円、高大生1500円、小中生500円 ※事前予約制の日時指定券が必要

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