1. トップ
  2. ファッション
  3. ハンドメイド一筋のマリア・トゥーリが貫く、“メイド・イン・イタリー”へのひたむきな姿勢【若手デザイナー連載】

ハンドメイド一筋のマリア・トゥーリが貫く、“メイド・イン・イタリー”へのひたむきな姿勢【若手デザイナー連載】

  • 2024.10.13
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。

イタリアのヴェローナに拠点を置くデザイナー、マリア・トゥーリ(MARIA TURRI)は、いわゆる“ビジネス”に興味がないようだ。手作業で服を作り続ける彼女の理想は、「コレクションを小さなバッグに詰めて好きなショップに持って行き、そこで発表すること」だそうだが、これは現代においてなかなか叶えられるものではない。そこで彼女は今シーズン、パリのピカソ美術館の近くで新作を披露することにしたのだが、私は運命的な何かを感ぜずにはいられなかった。というのも、黒い髪を無造作にまとめた彼女の姿が、ピカソが1900年に描いた妹ローラの肖像画を思い起こさせたからだ。

私がトゥーリに初めて出会ったのは2018年、彼女がイタリア版『VOGUE』の「Who Is on Next?」でを受賞したときのこと。“メイド・イン・イタリー”の伝統を受け継ぐ若手デザイナーにスポットライトを当てたこの企画で、私は審査員を務めていた。それから早6年、彼女は母となり、メンズウェアも展開するようになった。

2025年春夏コレクションにはバックデザインに意匠を凝らしたルックがいくつもあり、中央にファブリックを流れ落ちるように配したものや、ねじれたストラップで吊るしたオープンバックドレスなどもある。また、レースアップのディテールが施された一着は、着るのに手助けが必要なほど複雑な結び目が奥行きをもたらしていた。

ゆったりとしたドロップウエストのドレスは彼女のシグネチャーのようなもので、タックの入ったデザインはその意外性が光る。テーラリングでは、1つボタンのロングジャケットのほか、ドロップクロッチパンツやワークジャケットなどが揃えられていた。なかでも目を引いたのは100年前の麻生地で仕立てられたジャケットで、18世紀風のシルエットが印象的だ。

マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。
マリア・トゥーリ 2025年春夏コレクションより。

2018年もそうであったように、トゥーリはここでも“メイド・イン・イタリー”が持つ意味を教えてくれたような気がする。彼女はミシンと手縫いの両方を取り入れた職人的なアプローチを取るが、最終的な仕上がりは決して「完璧」ではない。これは彼女の美意識、そして価値観の表れだが、通訳を務める彼女の夫はこんなふうに説明してくれた。

「彼女はブランドを成長させるためにやっているのではなく、自分のクリエイティビティを表現するためにやっているのであって、マーケットが求めるものとは結びついていません。それに小さなコレクションですし、マリアはそれをパーソナルに保つためにも、顧客との繋がりを築くためにも、あまり多くの店舗に卸したいとは思っていません。ほんの数店舗でよいのです。彼女にとって一番大切なのは、顧客がデザインのひとつひとつを味い、楽しみ、幸せを感じられることです」

Text: Laird Borrelli-Persson Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

READ MORE

元記事で読む
の記事をもっとみる