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【遅い食事、寝る前のスマホの使用】人工的な光は体内時計を狂わせる?!

  • 2024.10.12

天井を見つめながら眠れない夜を過ごし、ぼんやりした頭で翌日を耐え抜いたことがある? それは、あなたが不規則な概日リズムの影響を受けているから。概日リズムは24時間サイクルの“体内時計”で、覚醒や眠気、空腹感を適切なタイミングで体にもたらす仕組みのこと。

科学ジャーナリストのリン・ピープルズ氏は、新著『The Inner Clock: Living in Sync with Our Circadian Rhythms』の中で、「少なくとも体内時計は、私たちが日中は活発に動き回り、夜はゆっくりすることを望んでいます」と説明している。また、私たちの体内時計は、常に太陽からの合図を待っているそう。

夜明けの空を切り裂く光は、朝を乗り切るために必要なホルモンで体内を満たそうという誘い。夕暮れの空と薄暗い光は、メラトニン(穏やかな気持ちをもたらし、睡眠を誘発する別のホルモン)を分泌すべき時間であることを教えてくれる。

でも、ご存じの通り、現代人の生活を体内時計に合わせるのは難しい。夜9時にスマホをスクロールしていれば、その画面から発される光が早朝の日光と似たような働きをして、メラトニンの分泌を抑えてしまう。逆に真冬は朝が暗いので、体がまだレム睡眠から目を覚ましていない状態で出勤することになる。

この影響は計り知れないほど大きいので、普段から可能な限り体内時計をサポートしたい。でも、一体どうやって? その答えを探るべく、イギリス版ウィメンズヘルスはピープルズ氏を直撃取材。彼女が何年も夢中で研究している、体内時計というテーマについて語ってもらった。

※このインタビューの内容は、分かりやすくするために編集・要約されています。

ウィメンズヘルス(以下WH):電子機器のスクリーンが発するブルーライトは睡眠の質を落とすという話が広がったおかげで、“体内時計”という言葉自体は、かなり馴染みのあるものになっています。でも、この体内時計が乱れると、私たちの健康にどのような影響があるのでしょうか?

リン・ピープルズ(以下LP): 体内時計の急な乱れは、基本的に時差ボケと同じです。あなたのいるタイムゾーンと体内時計のタイムゾーンが異なると、お腹の調子が悪くなったり、頭痛がしたり、何となく体調がすぐれなかったりします。もちろん、適切な時間に眠れなくなる可能性もありますね。

これが慢性化する、つまり体内時計が乱れっぱなしになるのは、大きな不安材料です。この状態では、糖尿病をはじめとする代謝性疾患や肥満のリスクが高くなることが科学的な研究により分かっています。体内時計が乱れると、がんの発症率が上昇するという研究結果も存在します。最近では、認知症やアルツハイマー病と体内時計の相関関係を示す、非常に興味深いエビデンスもありますよ。

私たちの体のシステムは、身体的にも精神的にも、この体内時計に合わせて調整されるようになっています。そのため、体内時計が乱れると、体のシステムも狂ってしまい、やがて医学的な問題を引き起こすというわけです。しかしながら、この現象は目に見えないところで起きているため捉え難く、少なくとも現時点では、十分に観察・研究されていません。

現在、科学者たちは、体内時計の状態を測定して著しい乱れの有無を特定し、それをリセットしやすくするためのツールを作ろうとしています。

WH:この本を書いたことで、日常生活にどんな変化がありましたか? 自分の体内時計と調和するために、どのようなステップを踏みましたか?

LP:この研究に没頭する中で私は、科学から得たヒントを日常生活に取り入れました。一番最初に行ったのは、外が暗くなると同時に家の電気を消すことです。その代わり、家のあちこちにリモコンで操作できる電気キャンドルを置いています。とてもよい雰囲気になってリラックスできますし、ブルーライトから直接受ける刺激が減る分、眠気も感じやすいです。ブルーライトから体内時計に、「まだ日中」という間違ったメッセージが送られることもありません。

また、寝る前の2~3時間は何も食べないようにしています。人間は日中に食べるように進化してきた生き物なので、通常夜7時半以降は食べません。遅い夕食は、体内時計を狂わせることもあります。

特に夜間の飲酒を避けて、規則正しい睡眠スケジュールを維持する努力もしています。毎日ほぼ同じ時間に寝て、起きるということですね。私のフィットビットのデータを見ると、こういった習慣が私の睡眠に大きな違いをもたらしていることが分かります。

WH:この本には、低所得地域に多く見られる「暗闇の砂漠」というものが出てきますよね。眩しい街頭や投光照明に1日中照らされているエリアということですが、これについて詳しく聞かせてください。

LP:これは長年見過ごされてきた、本当に重大な不正行為だと思います。

経済的に不利な立場にいる人は、地下や工場などの暗い場所でシフト制の仕事をすることが多いです。そのため夜間は、照明の明るすぎる場所で過ごすことが多くなります。低所得地域では、街頭やヘッドライト、警察のライトも目立ちます。いずれも体内時計を狂わせる要因ですね。

ニューヨーク市の公営住宅地には、ひと晩中ビームを発する警察の投光器が設置されています。米国では、主に照明デザイナーで構成されるLight Justiceという団体がこの問題の認知度向上に取り組んでいますが、最終的には政府が基準を設けて規制する必要があるでしょう。

WH:この本では、プロのアスリートがパフォーマンスの向上に体内時計を活用していることについても書かれていますね。

LP:これは、スポーツ科学の面白くて新しい研究分野です。体内時計の研究者たちによると、私たちのパフォーマンスがピークに達する時間帯は人によって異なりますが、平均すると、ほとんどの人の筋力とスピードは夕方前後にピークに達します。これは、かなり興味深いことを意味します。

例えば、サッカーの試合が午後1時に始まるとしましょう。ホームチームにとっては通常のタイムゾーン。でも、対戦相手は3時間先のタイムゾーンから飛行機でやってくるため、彼らの体内時計では試合開始が午後4時、つまりパフォーマンスのピークタイムになるわけです。ホームの選手の体内時計は、まだ午後のスランプに陥ったままかもしれませんね。

このようなことから科学者たちは、“クロノコーチ”という新しいコンセプトをプロのスポーツチームやアスリートに勧めています。具体的には、日光やライトボックスの戦略的な使用、さらにはブルーライトを目に照射するメガネのような奇抜なアイテムの使用によって、体内時計を巧みに操り、適切な時間に設定するというものです。

この本を書くにあたり、オリンピック選手たちに話を聞きましたが、複数のタイムゾーンを超えて会場入りしたあとは、体の調子が狂わないよう、現地の時間に素早く慣れる必要があると言っていました。

WH:体内時計的に見た自分のピークタイムを特定するには、どうすればいいのでしょうか? また、ピークタイムの個人差はどのくらいありますか?

LP:個人差は、生物学的(体の自然な行動)にも人工的(日中と夜間の合図を受けられるか、十分に日光を浴びているかなど)にも、かなりあります。

自分のピークタイムを知りたいときは、休暇を取って、自分の体に任せるとどうなるか見てみましょう。眠くなったらベッドに入り、アラームに頼らず、体が目覚めたときに起きるという生活を数日間続けます。その間に、日中でエネルギーと集中力が最も高くなる時間帯を注意深く観察しましょう。

可能であれば、その時間帯を中心に日常生活を組み立てましょう。社会や仕事のスケジュールによっては難しいかもしれませんが、体は喜んでくれるはずです。

WH:体内時計をサポートするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

LP:体内時計に関しては、3つの基本的なルールを守ってほしいと思います。3つとも実行するのは難しいかもしれませんが、3つのうちの1つか2つを毎日実行できれば十分です!

1つ目は、日中を明るく、夜を暗くすることです。朝起きたら、曇り空でも15分間外に出て、日光を浴びましょう。日中はなるべく窓際で過ごし、暗いところで働いている人は、数分でもいいので外に出る時間を増やしましょう。

夜は照明を消して、スクリーンタイムを制限します。

2つ目に、私たち人間は日中に食べるように進化した生き物なので、その間に食事をします。周りの科学者たちからは、就寝の3時間前には食べるのをやめるよう言われています。

3つ目は一貫性です。毎日同じ時間に起きて、同じ時間に食べて、同じ時間に運動をして、同じ時間に寝るようにしてください。どれも体内時計をリセットし、上手く機能させるのに役立ちます。

WH:最後に、体内時計に関して解いておきたい誤解はありますか?

LP:一番大きいのは、体内時計が関係しているのは睡眠だけではないということ。体内時計は、私たちの健康とウェルビーイングの多くの側面に関係していますから。

※この記事はイギリス版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。

Text: Claudia Canavan Translation: Ai Igamoto

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