1. トップ
  2. 恋愛
  3. 薮宏太、梅田彩佳、草間リチャード敬太が息もぴったりに描く、アラサー作曲家の成功前夜

薮宏太、梅田彩佳、草間リチャード敬太が息もぴったりに描く、アラサー作曲家の成功前夜

  • 2024.10.12
薮宏太さん、梅田彩佳さん、草間リチャード敬太さん(Aぇ!group)が出演するミュージカル『tick,tick...BOOM!』が、10月6日に開幕。アラサーの作曲家の揺れる心情を描く舞台を、囲み会見の模様を含めてレポートします!
薮宏太さん、梅田彩佳さん、草間リチャード敬太さん(Aぇ!group)が出演するミュージカル『tick,tick...BOOM!』が、10月6日に開幕。アラサーの作曲家の揺れる心情を描く舞台を、囲み会見の模様を含めてレポートします!
『tick, tick... BOOM!』
『tick, tick... BOOM!』


「僕はまだ何も成し遂げていないのに、あと1週間で30歳だ……」

薮宏太さんと梅田彩佳さん、草間リチャード敬太さん(Aぇ! group)が、“夢”と“現実”の間で葛藤する若き作曲家の姿を描いた3人ミュージカル『tick, tick…BOOM!』(チック・チック・ブーン!)に出演。

ブロードウェイの歴史を変えたロック・ミュージカル『RENT』の作者ジョナサン・ラーソンの、半自伝的物語の久々の上演とあって、ミュージカル・ファンの期待も半端ない中で開幕した舞台を、囲み取材の模様とともにリポートします!

“あうんの呼吸”が光るノンストップステージのあらすじ

観客が客席に入ると、既に幕は上がり、ステージ上にはニューヨーク・ソーホーにあるアパートの一室が見える。開演15分前になると主人公ジョン(薮宏太)が奥からふらりと現れ、煙草をくゆらせながらオペラやポップスを聴いたり、ベッドに寝そべったり。いつしか、場内には“チック、チック”と時を刻むような音が響き、だんだん大きくなってくる。そしてその音は……。

『tick, tick…BOOM!』開演前のプレショーでは、ジョンの日常のひとときがリアルに表現される
『tick, tick…BOOM!』開演前のプレショーでは、ジョンの日常のひとときがリアルに表現される


ここで物語が始まり、ジョンは客席に向かって語り始める。この“チック、チック”は“ある男=僕の不安が膨れ上がる音”だという。

ミュージカル作家を夢見るジョンは、ダイナーで働きながら創作に励んできたが、成功にはほど遠い。ダンサーの恋人スーザン(梅田彩佳)は田舎暮らしを提案し、成功したビジネスパーソンの親友マイケル(草間リチャード敬太)も、就職を勧めてくる。

30歳という節目の年齢を前に、焦りが募るジョンには、一つだけ望みがあった。来週には5年間あたためてきた新作の試演会を控えているのだ。もしも誰かの目にとまれば、道が開けるかもしれない。期待と不安が入り混じる中、試演会は日一日と近づき……。

ミュージカル・ファンが胸揺さぶられる「とある演出」

『tick, tick…BOOM!』
『tick, tick…BOOM!』


もともとはジョナサン・ラーソン自身が“一人ミュージカル”として試演を重ねていたのが、彼の逝去後に3人芝居にアレンジされ、2001年に開幕。主人公は名前こそ“ジョン”ですが、ラストのとある演出でジョンのモデルがジョナサンであることが示唆されるため、ミュージカル・ファンにとっては『RENT』を発表する前のジョナサンはこんな心情だったのかと、余計に胸揺さぶられずにはいられない作品です。(ちなみに、ジョナサンは自身の成功を知ることなく『RENT』の開幕直前に急逝)

『tick, tick…BOOM!』大作曲家スティーヴン・ソンドハイムに憧れるジョンだったが……
『tick, tick…BOOM!』大作曲家スティーヴン・ソンドハイムに憧れるジョンだったが……


この“ほぼジョナサン”ことジョンを演じるのが、薮さん。ジョンの日常を見せる開演前の“プレショー”では、脈絡なく動きながら、さまざまな思いやアイデアが浮かんでは消えるさまをリアルに見せ、セリフを発する前から観客を引き込みます。

そして感情が高ぶって歌い出す1曲目のナンバーでは、キーボードに激しい思いをぶつけながら弾き語りし、恋人や親友に振り回されるくだりでは、豊かな表情でコミカルなセンスを発揮。

『tick, tick…BOOM!』
『tick, tick…BOOM!』


梅田さんはジョンが“最高の彼女”と呼ぶスーザンを都会的な爽やかさで体現しつつ、チャーミングな俳優や凄腕エージェントなどを手堅く演じ分けます。いっぽう草間さんも、8歳で出会って以来のジョンの親友マイケルを、時にキレのある動きを見せながら人懐こく演じ、またジョンの父(一瞬の出番ながら意外な風格)やダイナーの客などを次々と演じ分けています。

『tick, tick…BOOM!』
『tick, tick…BOOM!』


全編を通じて3人は抜群のチームワークを見せますが、中でも聴き逃せないのが、ダイナーの情景を皮肉交じりに歌うナンバー「Sunday」でのハーモニー。どこか大仰で楽しいこの楽曲は、実はジョン(そしてジョナサン自身)が憧れる大作曲家スティーヴン・ソンドハイムへのオマージュで、物語後半に実際にソンドハイムが(声で)登場する伏線となっています。(とあるミュージカル・スターが演じるソンドハイム役もお楽しみに!)

『tick, tick…BOOM!』
『tick, tick…BOOM!』


ミュージカル・ファンにとっては何より“ジョナサン・ラーソンがより身近に感じられる必見作”ですが、“自分の人生、これでいいのか”と不安や焦りを感じがちなアラサーの心情をまざまざと描く、普遍的な作品ともいえる本作。時に笑い、時に胸を突かれながらあっという間に過ぎてゆく、ノンストップの2時間弱となることでしょう。

【囲み取材】「(ゲネプロでは)客席が怖過ぎました(笑)」(草間)

『tick, tick... BOOM!』囲み会見にて、薮宏太さん(中央)、梅田彩佳さん(右)、草間リチャード敬太さん(左)
『tick, tick... BOOM!』囲み会見にて、薮宏太さん(中央)、梅田彩佳さん(右)、草間リチャード敬太さん(左)


晴れやかな笑顔で囲み取材に登場した薮さん、梅田さん、草間さん。ジョン役の薮さんは「気が付いたら僕は一度も(舞台から)はけていなくて。集中力を持って臨まないと」と気を引き締めつつも「早く本番で歌を届けたい」と意気込み充分。一方、草間さんはゲネプロの客席に、『RENT』出演経験者が駆けつけたことを知り「客席が怖過ぎました」と笑わせます。

本作では実際にピアノ(キーボード)を弾いている薮さん。「ただ弾くだけでなく、自分が書いた曲を弾いている設定なので、自分の感情から出てくるように弾かないといけなくて。幼稚園から小学校まで音楽教室に通わせてくれた両親に感謝しつつ、今年の1~2月から久しぶりに練習しました。譜面はあまり読めないので、ダンスの振り付けの感じで覚えましたね」と特訓の日々を振り返ります。

スーザン役をメインとしつつも、他にもさまざまな役を演じ分ける梅田彩佳さんは「10役くらいかな?(笑)一瞬で違う役に切り替えるのが難しいのですが、お二人が向き合ったとき、その役としてこちらを見てくださるので助けられています」と薮さん、草間さんへの信頼を語り、草間さんは「ニューヨーカーらしい“俺が、俺が”という感じをつかむのが難しかったです」と吐露。

ここで薮さんが草間さんについて「めっちゃシャイなんですよ」と解説(?)し、「(気持ちを)開放しようぜ」と率先して仲を深めたエピソードを披露。最後に「ジョナサン・ラーソンが自分の身を削って作品に込めた愛を感じていただけるよう、3人でさらに頑張りたいです」と、観客に向けてメッセージを送りました。

<公演情報>
『tick, tick…BOOM!』10月6~31日=シアタークリエ、11月3~4日=東海市芸術劇場、11月7~11日=COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

文:松島 まり乃

元記事で読む
の記事をもっとみる