1. トップ
  2. 恋愛
  3. “奇跡の田舎”と呼ばれる山間の地に開校した、子どもたちが主体的に躍動する食と大地の学び舎【オルタナティブ・カルチャーを育む町 vol.1】

“奇跡の田舎”と呼ばれる山間の地に開校した、子どもたちが主体的に躍動する食と大地の学び舎【オルタナティブ・カルチャーを育む町 vol.1】

  • 2024.10.11
松岡美緒とワーグ、そして2歳の愛息が案内してくれたのは、森の学校みっけの子どもたちも大好きで日常的に通っているという清涼な滝。
松岡美緒とワーグ、そして2歳の愛息が案内してくれたのは、森の学校みっけの子どもたちも大好きで日常的に通っているという清涼な滝。

両親の仕事の関係から日本各地で暮らし、イギリスの大学院を卒業後、パキスタン、南アフリカを経て、神山でオルタナティブスクール「森の学校みっけ」を開校した松岡美緒。一方、松岡のパートナーのジェローム・ワーグは、フランスで生まれ、21歳で渡米。世界的なスローフードムーブメントを巻き起こしたアリス・ウォータースのレストラン「シェ・パニーズ」でヘッドシェフを務め、2016年に日本へ移住。東京のオーガニック・レストラン「ザ・ブラインド・ドンキー」のオーナーシェフと、神山で地産地食が楽しめる「かま屋」の料理監修を兼任する。さまざまな国で暮らした二人が、豊富な経験の集大成の場として選んだ神山とはどんな場所なのか。

子どもたちが腕を振るうことも多いというキッチン(右下)。屋内にはご飯を炊く大きな釜や、薪が並べられていた。左上は校舎。
子どもたちが腕を振るうことも多いというキッチン(右下)。屋内にはご飯を炊く大きな釜や、薪が並べられていた。左上は校舎。

国際的な平和構築NGO活動に従事する中で、食を通して持続可能な社会を考える重要性と素晴らしさを身をもって体験した松岡は、それを教育の場で実践的に生かしたいと考えるようになる。自然豊かな場所で、周囲の人たちの理解も得られる場所──。頭の中でイメージしていた理想が神山にあった。「神山の人はみなさん“やったらええんちゃうん”と言って背中を押してくれます。その大らかな町民性と、神山の綺麗な水と空気があったからこそ移住を決意しました」と松岡は言う。

オルタナティブスクールは、従来の画一的な学校教育とは異なり、子どもが主体となって自律的に学ぶプログラムが組まれるのが特徴だ。2022年に開校した森の学校みっけには現在、小学校1年生〜6年生の生徒たち21名が通っている。「自分が何をしたいかといった目的がなかなか見つけられないでいる子どもたちも多い中、みっけでは、毎朝子どもたちが輪になって、その日学校に来た目的や、やりたいこと、成し遂げたいことと向き合い、話し合いながら時間割を作っていきます」。

教室は小さな山小屋一つと、美しい川が流れる広大な自然だ。「コンポストトイレも、きちんとおがくずで覆えば一切におわないんです。その排泄物を1年置き、野菜の堆肥にして、収穫物を食す。子どもたちは自然の循環を日々学んでいます。食のスタッフとともに薪やストーブを使って生徒たち自ら釜でご飯を炊き、週に1度は自分たちが考案したメニューでお昼作りをしています。みっけの子どもたちの逞しく、身の回りにあるもので問題解決する生きる力に、私自身も日々学ばされています」

自然と一体となった森の中にある校舎は、地元の人をはじめ、多くの人たちの協力を得て完成した。
自然と一体となった森の中にある校舎は、地元の人をはじめ、多くの人たちの協力を得て完成した。

気になる学業では、フィールドワークや暮らしの中から読み書きや計算などを学ぶ教科横断的学習を行っている。「ここはもともと田んぼでしたが、人口減少により森と化し、地元の人たちも『死にゆく谷』と嘆いていたそうです。そこを今は子どもたちが元気に走り回っています。この美しい景色の中で学び、遊んだ子どもたちは、気候変動の影響などで変化していく地球を、どうやって再生していくかを知っています」

校舎内観。
校舎内観。

Photos: Ichisei Hiramatsu Tex: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto

READ MORE

元記事で読む
の記事をもっとみる