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儒烏風亭らでんの落語がたり!⑤『芝浜』/嘘から何が出る?芝浜の夢

  • 2024.10.11

こんにちは! 儒烏風亭らでんです。いきなりですがみなさま「嘘」をついたことはありますか? きっとここで心当たりの欠片もない人はいないでしょう。気乗りしない約束を交わされそうになったときの「存在しない先約」「行けたら行く」「突発的家庭事情」などは定番。1限に行きたくないときの「自主休講」「単位を効率的に取るため、あえてギリギリまで休む」「割とすぐ治る二日酔い」などは大学生のみなさまにとっては身近なものではないでしょうか。

嘘をつくことは一時凌ぎにしかなりません。あとから嘘がバレたり、罪悪感が重くのしかかったり、まあ後悔することばかりです。かく言う私も上京したてのころについた嘘があります。福岡から東京に来たばかりのころ、とてつもなくお金のない時期がありました。

お金のない時期は、満足な食事とは言い難い食生活を送っていました。これは上京したて故のお金の使い方の下手さ、常に時間に追われて食事のことまで考えが回らない余裕のなさなどに起因するでしょう。そんな中とある日の夕方、祖母から一本の電話がありました。内容としては「最近どう?」や「ちゃんと食べてる?」などのテンプレすぎる連絡。正直ちゃんと食べてるかどうかは微妙だったので、はぐらかしつつ答えてその日の電話は終わりました。数日後、祖母から大きい荷物が届きます。中身は慣れ親しんだ地元の米と好きなお蕎麦でした。中身を見た瞬間「ああ全てバレていたんだな」と察し、なんだか照れくさいような気持ちになったのを覚えています。思えば祖母にはどれだけ嘘をついても、あとからバレていました。これが家族の勘なのでしょうか。

さて、今回紹介する落語「芝浜」はそんな嘘と家族の噺です。

江戸の浮世、奥さんは旦那さんの酒浸りで自堕落な生活に頭を悩ませていました。

旦那さんの名前は魚勝(うおかつ)、本来ならば、かなり目利きの魚屋ですが、いまやその影はなく酒に溺れ、仕事は放り出し、怠け者街道まっしぐらな様子です。現代でも江戸の世でもお金がなければ生活できません。お金がなければ酒も買えないため、奥さんはどうにかこうにか説得し、魚勝は芝の浜へ向かいます。

【ちょこっとコラム】

魚勝が早朝の芝の浜で顔を洗う描写があるのですが、海水で顔を洗うってどんな感じなのでしょうか……? 落語家さんの中には噺の中で「海水で顔洗うか!?」と思わず突っ込む方も…今度海に行ったらやってみたいと思います。

ようやく仕事に行ってくれたと安堵する奥さんでしたが、魚勝はすぐに帰ってきます。どうしたのかと思えば魚勝の手には革財布が握られています。芝の浜で拾ったのだと言うそれは、五十両あまりの大金が入っていました。現代のお金にすると500万円に相当します。魚勝は祝いに一杯ひっかけ、友人を呼び大盤振る舞い、泥酔してその日は眠ってしまいました。

本当にこのままでいいのか、この財布は自分たちのものではないのに持っていていいのか、奥さんは考えます。

次の日、起きてきた魚勝に奥さんはこう告げます。

「ほら、お前さんいつまで寝てるんだい。さっさと芝浜に商いへ行っておくれ」 「いやいやいや、昨日芝の浜で拾った財布があるじゃねえか。あのお金がありゃあ」 「お前さん、昨日は芝の浜には行ってないよ。お前さん夢でも見たんじゃないのかい」

財布を拾ったということを「夢」にしたのです。さあこの嘘は魚勝をどう動かすのか。 奥さんの嘘はいつバレるのか。 二人の暮らしはこの先どうなるのか。 この先はどうぞ落語「芝浜」でお楽しみください。

ああよかった! 今月も締め切りまでにコラムを書き終えた!!もう23時か……楽しみにしてた日本酒でも飲もうかな。 いや、やめとこう。

「また夢になるといけねえ」

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