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ヴァンドーム広場1番地が秘める、15室のクワイエット・ラグジュアリー・ホテル。

  • 2024.10.12

ヴァンドーム広場の1番地に昨年末、ショパールのオーナーであるショイフレ家が経営するホテルがオープンした。そのアドレスから「1, Place Vendôme(アン・プラス・ヴァンドーム)」とホテルは命名されている。ショパールのCを控えめに盛り込んだゴールドの装飾をあしらった青い扉がエントランスなのだが、扉は宿泊客だけに開かれる。というのも、ここはホテルといってもコンセプトがプライベートメゾンなのだ。

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ヴァンドーム広場1番地、ショパールのウィンドーに挟まれた青い扉がホテルのエントランス。お向かいはルイ・ヴィトンのブティックだ。©️Gregory Copitet

広場に面したほかの建物と同じくここも1930年に歴史的建造物に指定されていて、ホテルのファサードも屋根も広場の建築時のままである。1番地はかつてホテル・ドゥ・ヴァンドームがあった場所で、10年前にショイフレ家が買収。そのホテルをクローズし、5年をかけての改修工事によってスイート10室を含む合計15室のホテルに変貌を遂げたのだ。室内建築を任されたのは、ラグジュアリーなホテルやレストランを多く手がけているピエール=イヴ・ロション。エレガンスと洗練あふれるホテルの誕生である。

気軽に入って行ける場所ではないと言われると、どんなホテルなのか余計に気になるのでは? 15の客室の内装はそれぞれ異なっている。これは客室が統一されていることが多いホテルと違い、ファミリーホームのイメージからだ。またシェフのボリス・アルガラによるメニューは、7時から22時までゲストは希望の時間にオーダーできる。朝食を午後に取ることもできれば、パテ・アン・クルートを朝食やおやつ代わりにも、というように。あらゆる面で5ツ星ホテルのサービスが待つホテルだが、それに加えてパリ市内にあるほかのパラスホテルと違って、優先されるのは何よりもゲストのリクエスト。宿泊客はショイフレ家がゲストをもてなすように、このホテルに迎え入れられるのだ。

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伝統とモダンが融合するエントランスホール。photography: Mariko Omura

エントランスホールに入った瞬間から、アン・プラス・ヴァンドームはホテルではなく個人の邸宅!!と感じられる。左側には18世紀の暖炉があり、その左右に時代は不明だけれど黒ベースの花を描いた絵画が2点飾られている。シンメトリーな飾り方はとてもクラシックだ。その向かい側の壁の窪みには、青いムラノグラスのビーズが連なるジャン=ミッシェル・オトニエルによる見事なアートピースが天井から床へと。伝統とモダンが向かい合って溶け合うという、オーナーがこの建物に込めた思いが凝縮されたシンプルなエントランス。レセプションは歴史が息づくようなブルゴーニュ・ストーンの階段を上がった中2階の吹き抜け部分にある。

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ライブラリー・サロンの活用法は宿泊客の自由に任されている。書棚にテキサスに関わる書籍が並んでいるのは、この建物が19世紀の一時期テキサス共和国(1842〜43年)の大使館だったことからだ。フランスが国家として承認した数少ない国のひとつだった。©️Gregory Copitet
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7時から22時の間、キッチンは常にオープン。宿泊客のお腹の空き具合にフレキシブルに対応する。©️raphaelmaetivet

半円形の窓が並ぶこのフロアで広場とサントノーレ通りのコーナーを占めるのは、プライベートクラブ的な雰囲気を漂わせる大きなライブラリー・サロンだ。宿泊客はここで思いのままに時間を過ごせる。食事やティータイム、読書......周囲の棚には文学、ガストロノミー、車といったテーマの本が並んでいる。これらはショイフレ家のコレクションからだという。個人宅の雰囲気のクリエイトには書籍のみならず、ショイフレ家が収集するさまざまなジャンルのコレクションからの品がホテルにパーソナルタッチをもたらしている。ラリックの花器だったり、客室内のイヴ・クラインの作品だったり。同じフロアには夜中営業している落ち着いた雰囲気のバーがあり、さらにガラス屋根の下にはコージーなウインター・ガーデンが。ヴェニスの職人によるパット・ドゥ・ヴェールと大理石を用いた見事なモザイクの魅力に目を奪われる空間だ。モザイクに始まり、ホテル内の改修には石工職人、家具職人、寄木細工職人、金箔職人、機織り職人、鋳造職人、石膏装飾職人......さまざまな分野で卓越した腕を持つ職人たちが関わっている。150年以上の時計とジュエリーのクリエイションを支えるサヴォワールフェールの継承を大切にするショイフレ家らしい。

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自然光が差し込むウインター・ガーデン。熱帯の動物たちが描かれたモザイクのクリエイションは、キャロライン・ショイフレが監修。©️raphaelmaetivet
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バー。書棚のトロンプロイユの扉の奥にはシノワズリにまとめられた内装の喫煙ルームが隠されている。©️raphaelmaetivet

建物の2階から7階を占める15の客室に上がるエレベーターは珍しいシリンダー状。これはいまの時代には制作不可能な貴重なフォルムなので改修に際し、保全されることになったそうだ。部屋にはそれぞれショパールのメゾンに結びつく宝石や時間に関わる名が授けられている。時にまつわる星がインスピレーションとなった「Astrologie(アストロロジ/占星術)」、ひし形モチーフと白い輝きでまとめられた「Diamont(ディアモン/ダイヤモンド)」、ベッドの黒革のヘッドボードがマニッシュな「Boussole(ブーソル/羅針盤)」、アジアンテイストの「Jade(ジャド/翡翠)」......フェミニニティが華やかに開花する部屋は「Paraiba(パライバ/南米のトルマリン産地)」だ。それぞれが個性的なので、常連の宿泊客は同じ部屋ではなく、毎回新しい部屋を選ぶとか。

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ブルーグレーにまとめられたエレガントな客室エグマリーン ©️Gregory Capitet
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上: オリエンタルな雰囲気の客室ジャド。下: 客室ピエール・ドゥ・リュンヌはモノトーンでムーンストーンを表現。photography: ©️Gregory Capitet
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刺繍を施したDeGourneyの壁布、クッション、ベッドカバー......ピンク色の明るい部屋はパライバ。©️raphaelmaetivet
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左: 洗面台の水道の蛇口も各部屋のバスルームのインテリアに合わせて特注されている。photography ©️Gregory Copitet 右:ラリックのランプを鏡の両脇に備えたバスルームもある。photography: Mariko Omura

2階の1フロアを占めるのは、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間にインスパイアされた内装のアパルトマンで、ショパールと命名されている。この時代の建築物らしく2階の天井はほかのフロアに比べてとても高く、5.2メートル! ダブルリビングルーム、寝室、ハマム、バスルーム、キッチンがくの字型のスペースにまとめられている。地下には珍しいスイスのワインも揃えたセラーがあり、その奥のこぢんまりとしたスペースには、ガラス張りの壁の向こうに広いキッチンが眺められるシェフズ・テーブルが。ほかのパラスホテルと違って本格的レストランを持たないアン・プラス・ヴァンドームでは、宿泊客は部屋、サロンなど自由な場所で食事がとれることに加えて、このシェフズ・テーブルというチョイスもあるのだ。

とてもエクスクルーシブなアン・プラス・ヴァンドーム。一生の思い出に残る特別なパリ滞在をしたい時に、宿泊してみたいホテルである。

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5.2メートルの高い天井に圧倒されるアパルトマンChopardのサロン。©️raphaelmaetivet
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アパルトマンに配置されたラリックの見事なテーブル。©️raphaelmaetivet

Le 1 Place Vendôme
1.Place Vendôme 75001 Paris
全15室室料 1,300ユーロ〜、スイート 1,900ユーロ〜、 アパルトマン 14,000ユーロ〜
https://www.chopard.com/fr

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