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【続2】愛人生活で贅を極めた港区女子。仕事と「普通の生活」を失い思い知った、男の本性は…

  • 2024.10.11

「港区女子」。それは何かと世間の好奇心を煽る存在。

彼女たちは一体どんな女性なのか? そんな議論が度々上がるけれど、港区で暗躍する素人美女、パパ活女子、あるいはラウンジ嬢など……「港区女子」の意味合いや捉え方は人それぞれ。

そして謎に包まれた彼女たちにも時間は平等、歳をとる。港区女子たちは、一体どんな着地をしているのだろうか。現在アラフォーとなっていると思しき元港区女子たちの過去と現在に迫る。

※この物語は実際の出来事を元にしたフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

▼前半はこちらから

 

男が女を黙らせる方法

東堂さんが私意外の女の子と会っていると気づいたときは、嫉妬に任せて泣いたり罵ったりもした。

けれど、「心から愛してるのは由利だけなのに、何が不安なの?」「僕にとって由利以上の女性はいないよ」と、彼は心底不思議そうにのらりくらりとかわすばかりで気抜けしてしまった。

そもそも出会った当初から東堂さんには本妻意外にも長年の愛人と子供がいて、2つの家庭を養っている。私が彼の浮気に胸を痛めたところで、彼はそんなことに動じる男ではないし、まったくの無意味であることは身を持って知った。

とはいえ私の不機嫌を察した彼がオファーしたのが、この高級賃貸のマンションの一室だ。

そうして私は、彼の意図通り黙らざるを得なくなった。

パパの地雷を踏んだ女

「ねえ、おいしいなんてものじゃない。天国みたいな味がする!」

もはや下品なほど分厚い白トリュフを口にした朝美のテンションにうまく合わせられず、私は思わずカウンターにフォークを置いた。

「朝美ちゃんて、本当にいつもおいしそうに食べるよね。人生楽しそうだな〜」

東堂さんも朝美につられて笑っている。今日は朝美がいて本当によかった。彼女がニコニコしているおかげで場が華やかに和む。東堂さんが連れてきた後輩の経営者もすっかり朝美を気に入った様子で、あれこれ話しかけていた。

「どうしたの由利? 体調でも悪い?」

「うーん、ごめんなさい。この白トリュフ、先週も食べたばっかりで、さすがに胃が受け付けなくて。ちょっと匂いがキツすぎる。もうちょっと普通の優しい和食がよかったな」

思わず本音を言うと、東堂さんの笑顔がわずかに引き攣り「しまった」と思った。

お金よりも、愛がほしい

「おいおい、やけに贅沢だな今日の由利は」

普段は底抜けにお人好しだけれど、彼は馴染みの店をとにかく大切にしている。それをけなすのは地雷だ。しかし彼はワインを片手に、私の失言をあっさり受け流した。

その様子がかえって私の神経を逆撫で、止められなくなる。

「それに私……そもそもあんなに馬鹿みたいに広い部屋も、こんな高いゴハンも別にいらないよ。ねえ、私は東堂さんと一緒にいたいの。年末年始も一緒にいてほしい。愛してるのは私だけなんでしょ? 結局は奥さんと子どもが一番なの?」

無駄に高いワインが、私を饒舌にする。

東堂さんは元彼とはちがう。たとえ奥さんと子どもがいても、他の若い女の子に目移りしても、私を一番に愛してくれているはずなのに。

「僕の人生に、由利以上の女性はいない」。いつかそう言った彼の言葉を信じていた。なのに現実はどうだろう。iPhoneの子どもたちも待受画像、奥さんと年越しにオーストラリアへの家族旅行を企画していたLINEのトーク画面。彼のバッグから他の女に贈っただろうGraffのジュエリーの領収書も見つけたばかりだ。

お金で本音を封じられる、都合のいいただの愛人になんてなりたくない。

目下、彼のおかげでお金には困らないけれど、彼の遊びに付き合うために仕事は大幅に減らした。朝美のように堅実な仕事もなければ、普通の恋人も作れない。私には東堂さんしかいないのに。

「……わかった。年明け、ハワイでも行こうか。由利の好きなヨーロッパは寒すぎるからね。そうだ、ゴルフを少し習っておきなよ。プライベートのレッスン手配しておくから、由利ならすぐに上手くなって存分に楽しめるよ。あ、クリスマスプレゼントも選ばなきゃなあ」

思いつめた私は祈るように東堂さんの目をじっと見つめたけれど、彼は至って穏やかに私から目を逸らすと、普段と変わらないご機嫌さでしゃべり始めた。

けれど、その瞳の奥には冷ややかな苛立ちが小さく滲んでいるのを私は見逃さなかった。

ーもう、終わりだ。

皆が何事もない様子で贅を極めた食事を楽しむ中、私は1人、芳香な白トリュフの香りに包まれたまま絶望したのだった。

 

次回予告▶️ 限界を感じた由利は愛人生活に終止符を打ち、堅実な青年と晴れて結婚。しかし、愛人生活の意外な後遺症に苦しむことになり……?

▼友人「朝美」の20代~現在はこちらから




取材/山本理沙 イラスト/黒猫まな子

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