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幼少期から寝付けず、不眠症の大人に。孤独を癒す楽しみを忘れない

  • 2024.10.11

小さな頃はそれこそ、どこでだってすぐに眠る事が出来た。好きな事にめいっぱい夢中になって毎日を過ごしていたからなのか、充実感をもって1日を終えていたような気がする。それが小学校入学前に引っ越しと転校を経てガラッと変わってしまった。仲の良い友達も気心の知れた先生も、お気に入りだった場所とも突然切り離されたような気持ちになって、「前のおうちに帰りたい、今の学校は行きたくない」と毎日親に訴えていた。

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まだ乳児だった弟にかかりきりだった両親は私の訴えに耳を貸してはくれず、学校へ行っても「ヨソモノ」とみなされた私は話しかけても無視をされたり仲間外れにされたりと、小さな子どもの世界でどうにか馴染もうと自分なりに努力していた。それでも新しい友達が出来る訳でもなく家にも学校にも落ち着ける場所がなくて、毎日心細くて寂しい気持ちを抱えながら過ごすうちに、寝付けない夜が増えていった。背が伸びなくなってもいいのか!といくら脅されても寝れないのは変わらない。

1人部屋がなく家族全員横並びに寝ていたので、家族が寝静まるのを待ってこそこそ起き出し、アパートの街灯を頼りに本を読んで「この世界に自分しかいないみたい。ひとりぼっちってこんな感じなのかな」と空想して過ごしたりするうち、今まで暗くて怖いとばかり感じていた夜を少しずつ好きになっていた。

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中学生になって中古のウォークマンを手に入れると、好きな音楽を聴く事でより深く自分の世界に浸れるようになり、無意識に始めてしまうひとり反省会や答えの見つからない悩みで、沈みがちな気持ちをどうにか保てる日も少なくなかった。年齢を重ねるごとに自分の中の悩みの種類は少しずつ変わってきたもののより解決が難しいものが増えていき、考え出すと終わりがなく、相談できる親しい人もいなかったので眠れない夜が増えていた。

幼少期から長い間寝付けない日が続いたからか、大人になるとすっかり不眠症になって「また眠れない時期か、今度はどれくらいの期間続くんだろう」と肝が据わった対応が出来るようになり、眠れない夜と不安定な自分とコミュニケーションを取って過ごしている。

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大人になって嬉しかったのが、夜に出歩ける様になった事だ。運転免許を取って行動範囲が広がると、24時間営業のファストフード店やファミレスに行ってぼうっとしたり家から持参した本を読んだりして過ごす。夜勤の店員さんや勉強している学生、仕事帰りの人がそれぞれの席で静かに食事をしている姿を見ると「自分だけがこの時間に起きている訳じゃない」と思えて、孤独感が少しずつ薄らいでいく感覚があって何だか安心する事が出来た。

コロナ禍になって時短営業が主流になった頃から、出かけられない時はラジオも楽しむようになった。電波を通して顔も知らない人々の生活や何気ない日々を感じる事が出来て、寂しさをあまり感じなくて済む。ひとり暮らしで外出や人と会話をする機会も減っていた時期だったのでだいぶ孤独を癒してもらったように思う。

内向的で人付き合いが得意じゃない私はこれからも眠れない夜を何度も過ごす事になるとなんとなく分かっている。それでも孤独やささくれた心に寄り添ってくれる物事を見つける楽しさを忘れない人間でありたい。

■仲村 和華のプロフィール
本と美味しいものが大好き、カラオケの十八番は欧陽菲菲の「ラブ・イズ・オーヴァー」。曲の好みにしてはまだまだ子供舌の持ち主のアラサー。

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