1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【六本木】サントリー美術館「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」

【六本木】サントリー美術館「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」

  • 2024.10.11

元禄の浮世を写す風俗画、風流才子・英一蝶(はなぶさいっちょう)

サントリー美術館で開催中の「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」[2024年9月18日(水)~11月10日(日)]を見て来ました。

英一蝶は、元禄年間(1688~1704)前後に江戸を中心に活躍した絵師です。 市井の人々の一瞬をユニークな視点で捉えた独自の風俗画を生み出して人気を博しました。

承応元年(1652)京都に生まれた英一蝶は、はじめ狩野探幽(かのうたんゆう)の弟・安信(やすのぶ)に入門し、江戸狩野派の高い画技と、幅広い古典の教養を身に付けます。 狩野派の画技に加え、20代~30代の頃に松尾芭蕉から学び俳諧で培った機知に富むユーモアのある人物描写が、一蝶の新しい風俗画を生み出しました。

一蝶の描く新しい都市風俗画は多くの人に受け入れられ愛されたそうです。一蝶の画風を慕う弟子も集まり英派(はなぶさは)が形成されました。

人気絶頂の40代で島流しとなる波乱万丈の人生も。後に将軍代替わりの大恩赦で江戸へ戻り英一蝶を名乗ります。 江戸の風流才子・英一蝶の没後300年を記念する展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。館内は撮影禁止です。

 

出典:リビング東京Web

「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」展示風景 サントリー美術館

英一蝶への助走、多賀朝湖(たがちょうこ)時代

英一蝶の父・多賀白庵(伯庵)(たがはくあん)は、伊勢亀山藩主・石川主殿守憲之(いしかわとのものかみのりゆき)の侍医でした。 「多賀朝湖」と名乗っていた時期は、一蝶が狩野派の枠を超えて、独自の画風を確立して行った時期でもあります。

島流しの後に恩赦で江戸に戻り「英一蝶」と名乗りますが、母方の姓「花房」に由来するとも、荘子の胡蝶の夢からとったとも考えられています。

《四条河原納涼図(しじょうがわらのうりょうず)》《投扇図(とうせんず)》

江戸時代の市井の人々の日常を軽やかに捉えた一蝶の風俗画《四条河原納涼図》(左)と《投扇図》(右)。

京都の暑い夏に涼をとる川床(かわどこ)でくつろいで過ごす人々を描いた《四条河原納涼図》。 画面左側に、盃を片手に高く上げて川を覗き込む男がいます。川の中も気になる、でも盃のお酒はこぼすまいと必死な様子が笑いを誘います。

神社の鳥居に向かって扇を投げる巡礼者の姿を描いた《投扇図》。鳥居を通過した扇を指さしのけぞる様に喜ぶ巡礼者の姿もあります。 一種の運試しや願掛けと考えられているそうですが、必死の形相がかえって滑稽さを感じさせます。

 

出典:リビング東京Web

英一蝶 左から、四条河原納涼図 一幅 千葉市美術館蔵 展示:9/18~10/14、投扇図 一 板橋区立美術館蔵 展示:9/18~10/14

狩野派アカデミーで学んだ画力《雑画帖(ざつがちょう)》

英一蝶の《雑画帖》全36図全てが展示されるのは英一蝶展では初めてだそうです。

伝統的な花鳥画から、山水画など様々な技法で描かれています。 写生をもとに描いたと思われる背中を丸めて眠る「睡猫図」(左)。笑っているような細い目に顔を隠すように巻いたシッポがカワイイです。

右は、伝統的な狩野派の作風を感じる「龍図」。

出典:リビング東京Web

英一蝶 雑画帖 「睡猫図」(左)「龍図」(右)一帖のうち二面 大倉集古館蔵 通期展示(場面替えあり/本葉面の展示期間:9/18~10/14)

島一蝶時代、東京都指定有形文化財《神馬図額(しんめずがく)》

元禄11年(1698)、一蝶は、突然、捕らえられて三宅島へ配流となります。 第5代将軍・徳川綱吉(とくがわつなよし)の「生類憐みの令」を皮肉った流言に関わった疑いとされましたが、実は真犯人は別にいたそうです。

吉原の幇間(ほうかん、太鼓持ち)だった一蝶の派手な行動が幕府に目を付けられたからではないかと考えられています。 江戸時代の島流しは死罪と同じくらいの意味がありました。

配流先の三宅島での一蝶の作品は、「島一蝶(しまいっちょう)」と呼ばれています。 江戸の注文主から贈られる画材で描かれた「華やかな画風」の風俗画と、島民からの依頼で描いた「堅実で穏やかな画風」の神仏画や吉祥画など信仰に関わる絵画の2つに大別されるそうです。

東京都指定有形文化財《神馬図額》。御蔵島の稲根神社に奉納された絵馬で、前足を高く上げた躍動感のある神馬の姿です。

出典:リビング東京Web

英一蝶 東京都指定有形文化財 神馬図額 一面 元禄12年(1699)頃 東京・稲根神社蔵 通期展示

江戸帰還後の英一蝶、メトロポリタン美術館所蔵3作品が特別出品、新出の仏画も!

発見!新出の仏画《釈迦十六善神図(しゃかじゅうろくぜんじんず)》

《釈迦十六善神図》(右)は、近年発見された新出の仏画で、一蝶の江戸帰還後の作品だそうです。

釈迦、文殊、普賢の三尊は金泥(きんでい)で表され、鮮やかな濃彩で描かれた諸天善神が三尊を守護するように囲み、仏法守護の威神力のパワーを感じさせます。

緻密で繊細な描線と極彩色が一蝶の確かな技量を伝えているとされています。

出典:リビング東京Web

英一蝶 右側、釈迦十六善神図 一幅 個人蔵 展示:9/18~10/14

豪華絢爛の金屏風《舞楽図・唐獅子図屛風(ぶがくず・からじしずびょうぶ)》

今回、メトロポリタン美術館所蔵の英一蝶の3作品が特別出品されています。

金地に鮮やかな色彩で描かれた《舞楽図・唐獅子図屛風》。

中世以来描かれて来た伝統的な画題「舞楽図」は、一蝶の師・狩野安信も描いてます。 本作は、一蝶の風俗画から見ると「少し硬い印象」とのことですが、「人物の面貌は一蝶風」に変えているそうで、舞楽の場面は細かく丁寧に描かれているとのことです。

裏面に描かれた「唐獅子図」は、「狩野探幽の唐獅子図がもとになっている」そうですが、墨で一気に描かれた唐獅子たちの表情は、一蝶風にアレンジされていて茶目っ気があります。

 

出典:リビング東京Web

舞楽図・唐獅子図屛風のうち舞楽図 英一蝶 六曲一双(表) メトロポリタン美術館蔵 通期展示

 

出典:リビング東京Web

舞楽図・唐獅子図屛風のうち唐獅子図 英一蝶 六曲一双(裏) メトロポリタン美術館蔵 通期展示

天下降雨、老若男女、共に過ごす雨宿り《雨宿り図屛風(あまやどりずびょうぶ)》

英一蝶晩年の大作《雨宿り図屛風》。 特別出品となったメトロポリタン美術館所蔵の3作品のうちの1つです。

にわか雨でしょうか、垂れこめる雨雲、枝垂れる柳、武家屋敷らしき門の前に雨宿りに集まる人々。 門の柱にぶら下がって遊ぶ子供。手をかざして空を見上げる武士。花売りや飴売り、竿竹売りに琵琶法師…。

身分や年齢、職業も異なる老若男女が、天から降る雨の下では一時的に同じ空間で少しの時間を共有する運命の巡り合わせの不思議を感じさせます。

池田輝方の《夕立》(大正5年(1916)山種美術館蔵)を思い出させる作品です。

「雨宿りの主題は一蝶にとって特別な意味を持つ」そうで、同じ主題の《雨宿り図屛風》(東京国立博物館蔵 展示:10/14まで)も展示されています。 10月14日(月・祝)までは両作品を一緒に見ることが出来ます。

 

出典:リビング東京Web

英一蝶 雨宿り図屛風 六曲一隻 メトロポリタン美術館蔵 通期展示

胡蝶の夢か、英一蝶、江戸・元禄の浮世を爽快に描く

英一蝶は、狩野派に学んだ確かな画技と、一蝶ならではのユーモアと観察眼で、多様な画題を描き分けた風流才子・マルチな絵師です。

江戸の文化が花開いた元禄年間、人気絵師として、また俳諧でも活躍した英一蝶。江戸の吉原での華やかさも、島流しの12年も過ぎ去り流れ去る浮き世のことと儚い胡蝶の夢ように感じていたのでしょうか。

浮世に生を受けた市井の人々の一瞬を捉えて写し出す一蝶の新しい都市風俗画は、軽やかで爽快な感じさえします。 人々は一蝶の絵の中に自分や、身近な人の姿を見出して共感していたのかもしれません。

「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」は11月10日(日)まで。 是非お出かけください。

 

出典:リビング東京Web

右から、英一蝶像 二代高嵩谷 一幅 東京国立博物蔵 展示:9/18~10/14、田園風俗図屛風 英一蝶 六曲一双 サントリー美術館蔵 展示:9/18~10/14

小中学生向け「わくわくわーくしーと」 親子で美術館体験

作品をよく見て楽しむための小中学生向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくしーと」。 例えば《雨宿り図屛風》、重要文化財《布晒舞図》のシートをひらくと、鑑賞の手引きとなる言葉がわかりやすく記されています。

親子で楽しみながら作品について学べる鑑賞支援ツールです。※数に限りがあります。

出典:リビング東京Web

小中学生向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくしーと」

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、英一蝶てぬぐい(1‚500円)、有機ハーブティー レモンジンジャー(1‚100円)を購入。 英一蝶手ぬぐいは、重要文化財《布晒舞図》(遠山記念館蔵)の図柄がデザインされています。 ※在庫なくなり次第終了。※価格は全て税込です。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ サントリー美術館

カフェ 加賀麩不室屋

カフェ 加賀麩不室屋では展覧会限定スイーツ「よもぎ麩餅~ニッキ蜜をかけて~」(1,300円)をいただきました。 英一蝶が活躍した元禄時代、「ニッキ」は庶民に親しまれた味だったそうです。 加賀棒茶とのセットドリンク(350円)もおすすめです。 ※販売期間:9月17日(火)~11月10日(日)

 

出典:リビング東京Web

カフェ 加賀麩不室屋

〇サントリー美術館

URL:https://www.suntory.co.jp/sma/

住所:〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階

TEL:03-3479-8600
※10:00〜11:00は「GALLERIA (ガレリア)」の1F入口から入館できます。

 

〇没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

会期:2024年9月18日(水)~11月10日(日)
※作品保護のため、会期中展示替えを行います。

開館時間:10:00~18:00(金曜および11月9日は20:00まで開館)
※いずれも入館は閉館の30分前まで

休館日:火曜日(11月5日は18:00まで開館)

入館料:一般1,700円、大学・高校生1,000円
※中学生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介助の方1名様のみ無料
※最新情報はウェブサイトでご確認ください。

*ミュージアムショップ

営業時間:10:30~18:00
※火曜日・展示替期間は11:00~18:00
※展覧会会期中の金曜は20:00まで営業

定休日:展示替期間中の火曜日、年末年始

○カフェ 加賀麩不室屋

営業時間:11:00~18:00
※展覧会会期中の金曜は20:00まで営業
※ラストオーダーは閉店30分前

定休日:展覧会会期中の休館日、展示替期間中の月曜日・火曜日、年末年始

元記事で読む
の記事をもっとみる