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『ミッドナイトスワン』で鮮烈なデビューを飾った服部樹咲にインタビュー。初の長編主演映画へ込めた思い

  • 2024.10.10

映画『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』は、愛知県の尾州地域を舞台に、困難にぶつかりながらデザイナーになる夢に挑む、発達障害のある高校生の物語。毎朝、機織りの音で目覚める決まりがある史織(服部樹咲)には、苦手なことが多い。ところが手がけたデザイン画を親友の真理子(長澤樹)がファッションコンクールにエントリーしたことで、初めて服作りに挑むことに。

初の長編主演映画で得た気づき

『BISHU 世界でいちばん優しい服』

──映画『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』は長編映画としては初めての主演作ですが、これまでの作品との違いはありましたか?

これまでと比べ、撮影前の準備から変わったと思っています。たくさんのことを用意しておかないと上手く表現できないと思いました。私が演じる史織は、発達障害と向き合っている役柄です。実際に当事者の方たちにお話を聞き、理解を深めていきました。監督ともたくさんディスカッションして、史織自身の内面はもちろん、癖や姿勢、動きなど、外側の部分も緻密に決め、準備万端で臨みました。クランクイン前はあまりに不安だったので、監督にいろんなことを相談しているうち、「史織はこう言いますか。こうした方がいいですか」と細かなことまで聞くようになっていました。監督が「任せるよ。樹咲ちゃんが作る史織でいいから」と言ってくださり、ようやく「そうか、私が作った史織でいいのか」と安心できたんです。それからは現場に自分なりの史織を持っていき、その都度、監督と確認しながら進めていきました。

──最初に脚本を読んだときの史織の印象を教えてください。

史織のかわいらしさに目が行き、愛おしいキャラクターだなと思ったので、そこをうまく表現できたらと思いました。また友情、家族愛にもあふれています。観終わった後に穏やかな気持ちになって、自分まで優しくなれるような作品がありますが、今作はまさにそういう映画です。後味の良い作品にしたいと思いました。史織は嘘がつけません。私も嘘が嫌いで、思ったことをストレートに口にすることが多いです。正直でまっすぐなところは自分と似ている部分かなと思います。史織が初めて自分のしたいことをお父さんに打ち明け、対峙するシーンは自分の経験と重なりました。あのとき、たぶん史織は人生で初めてお父さんに自分の意思をぶつけたと思いますが、私にも同じことがありました。クラシックバレエを4歳からやっていたのですが、親に「バレエを辞めて俳優になりたい」と告げるときには、すごく勇気が必要でした。そのときの記憶がシーンに重なりました。

『BISHU 世界でいちばん優しい服』

──作品ではお父さん(吉田栄作)が史織を思うあまり、過保護になってしまうところや姉(岡崎紗絵)との軋轢など、“家族あるある”がたくさん描かれています。

実際に私も姉がいますが、岡崎さん演じる姉・布美の史織に対する態度はそっくり。小さなお母さんみたいにチクチク言ったりする感じが、まるで一緒です(笑)。岡崎さんのことを本物のお姉さんのように感じながら、演技することができました。吉田さんが演じているお父さんが、心配し過ぎて史織のやることに反対してしまうところなどは、私の母と重なるところもあり、とても共感できる家族構成だと思います。

──史織はなかなか自分の気持ちを表に出せない女の子ですが、演じるうえで難しかったのはどんな点ですか?

いざ現場に入ってみたら、たくさん準備をしたおかげなのか、まったく不安なく演じることができました。ただ準備段階で難しかったのは、史織が発達障害の自分とどれぐらい向き合っていて、自覚しているのかというバランスです。史織は台詞が短く、最初に脚本を読んだ段階では彼女の本心がわからず、脚本の言葉の裏側を頑張って読み探っていくような感覚がありました。発達障害の当事者の方に取材することで、埋めることができた部分もたくさんあります。史織は表情が特徴的で、彼女特有の目つきや口をモゴモゴさせるといった仕草は、監督と一緒に現場で作っていきました。

──町並みも素敵ですが、実際にロケした尾州を役柄に生かしたところもありますか?

実際に尾州地域で、全編を撮影できて、スタッフの皆さんと3週間ほどずっと同じホテルに泊まれたことは大きかったと思います。朝、みんなで集まって撮影が始まる風景が大好きで、あの地区ならではの長閑な町中で撮影できたことが、何よりうれしかったです。機織り工場を事前に見学させていただいたことも、心に残っています。機織りは機械がするんですが、糸を見つけて結んだりするのは全部、手作業。それを職人さんが、とても手際よくされているのが本当にかっこいいんです。劇中でもしていますが、とても細い糸を職人さんが手で扱っているのを目の当たりにして、「これを自分でもやるのか!」とも正直、思いました(笑)。「伝統的なもの作りって、かっこいい。素敵だな」とこの映画を通して、気づきました。

──実際、史織役として手際よく作業をこなされていましたが、手先は器用ですか?

いえ、全然器用ではないです(笑)。撮影日の前日に結び目が目立たないような糸の結び方を教えてもらい、待ち時間に吉田さんと「素早くできたらかっこいいね」とずっと一緒に練習していました。

「夢は追っていたら、必ず叶えられる」

『BISHU 世界でいちばん優しい服』

──史織もそうですが、10代で将来の選択を迫られることは大きな決断が必要になります。服部さん自身はどのように決めたのでしょうか。

私は中1ぐらいまでずっとバレエのことしか考えてなくて、芸能界にはまったく興味がありませんでした。ただその頃、バレエでプロとして海外でも活躍することは自分には無理なんじゃないかと思い始めていました。バレエ一筋で頑張りすぎて燃え尽きたのか、これ以上はできないと考えてしまったんです。バレエ以外に自分は何で輝けるだろうと考えたとき、同じように表現である演技ならバレエのように好きになれるかもしれないと思いました。親に話してみたら、もちろん反対されて、1カ月ぐらい話し合いが続きました。その間、母はずっと憂鬱だったらしく、姉からも「考え直した方がいい」と言われました。母は「バレエをやめなくてもいいでしょう」と言ったんですが、私は「俳優になりたい」というより、バレエを諦める理由が欲しかったのだと思います。そんなとき、デビュー作である『ミッドナイトスワン』のオーディションを見つけ、これならバレエも生かせると許してもらえたんです。

──劇中、「才能を見つける人と守る人がいる」という台詞がありますが、服部さんにとっては誰がそれに当たりますか?

バレエを始めたのは、母が才能を見つけてくれたのがきっかけです。幼稚園の盆踊り大会で踊っていたとき、指先が色っぽくて、絶対に踊りを習わせた方がいいと確信したそうです。守ってくれたのは家族です。バレエを続けることはとても大変で、コンクールで地方に行かなくてはならなかったりもするのですが、そのたびに家族みんなが私の生活に合わせてくれました。演技の面では、『ミッドナイトスワン』のオーディションで私を見初めてくれたプロデューサーの森谷雄さんです。オーディション会場に入ってきた瞬間から存在、空気が違ったと話してくださいました。この作品のプロデューサーでもあります。

──『ミッドナイトスワン』で多くの人に注目され、今回はついに初主演映画を飾りました。

この映画のメッセージでもありますが、夢は追っていたら、必ず叶えられると信じています。昔から、そうでした。バレエのコンクールで1位を目指して練習を重ね、1位になることができました。そういった成功体験があるからこそ、自信がついたのかもしれませんが、俳優にも絶対になるんだと思ったから、今、ここにいます。史織が服を作って、歩きたいと思って、どんどん形になっていく。そこには自分と重なる部分があります。観てくださる方のなかには、史織と同じように夢を追っている人、あるいは夢に向かって進みたいけれど、以前の私のように反対されている人もいるかもしれません。そんな方が観たら、一歩前に進める、背中を押してもらえるような映画だと思います。

──史織は部屋に憧れのデザイナー、滝沢セシルさんのポスターを貼っていますが、服部さんにはそういう憧れの存在はいますか。

韓国の俳優キム・テリさんです。2022年に「二十五、二十一」というドラマで知り、大ファンになりました。2023年もその作品ばかり観ていて、何周もしているうちに台詞を覚えてしまったぐらいです。「自分はこの先、本当に俳優でいいのか」と不安で自信が持てなかったときに彼女の演技を見て、「絶対こうなりたい。こういう演技がしたい」という具体的な目標ができました。今では、すっかりキム・テリさんのファンです。主演で全16話あるドラマなのですが、どの瞬間も役にしか見えないんです。1秒たりともキム・テリ自身が現れることなく、衝撃的でした。本当にしっかり役を作って、準備をたくさんして、撮影に臨まれていることが伝わってきます。どんな役でも服部樹咲である瞬間が見えないよう、私も演技できたらという目標になりました。

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──現在、18歳ですね。新成人ですが、心境の変化はありましたか?

よくお店などの注意書きに「18歳未満は〜」と書いてあることがありますが、その対象に入れられることがなくなったのはうれしいです。いろんな場面で、「もう成人なんだな」と感じます。以前から早く18歳になりたかったのですが、実際になってみると、15、16歳のときに考えていたほど、大人ではなかったです。今は一刻も早く20歳になりたいです(笑)。

──20歳になったら、してみたいことはありますか?

特にはないのですが、20歳からがやっと大人と認められるような気がするんです。数字だけでもいいから、20歳になりたい(笑)。「早く一緒にお酒を飲みたいね」と言われることも多いです。去年、ドラマ「EVOL」でトリプル主演した青木柚さんと伊礼姫奈さんとは「20歳になったら、お酒を飲もうね」と約束しています。今回も吉田さんと「次に会うときは、きっと20歳を超えているから、お酒を飲めるようになっているね」という話をしました。

──逆に10代のうちにやっておきたいことはありますか?

海外で撮影したいです。具体的に言うと韓国の映像作品に出られたらいいなと思っています。韓国映画やドラマを観続けて、現地の友だちをいっぱい作って、毎日のように話しているうちに韓国語も話せるようになりました。毎日、韓ドラにK-POPのコンテンツにと韓国のエンタメにどっぷり浸っているので、自然と吸収していたのだと思います。『ミッドナイトスワン』ロングランの舞台挨拶のときには、観客の皆さんに韓国語を披露して、草彅剛さんにも褒めていただきました。ぜひ10代のうちに韓国の現場を訪れてみたいです。

『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』

監督/西川達郎

出演/服部樹咲、岡崎紗絵/長澤樹、黒川想矢、清水美砂/吉田栄作

10月11日より先行公開、10月18日より拡大公開

bishu-movie.com

問い合わせ先/ミカゲシン 050-3131-8658

Photos: Nobuko Baba Styling: Shuhei Sakaue Hair & Makeup: Sugaya Masaki Text: Aki Takayama

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