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地上波では放送できない?!ヒット作を連発する脚本家2人が“共同執筆”した1年前の異色ドラマ

  • 2024.11.22

2023年にNetflixで配信された全9話のドラマ『離婚しようよ』。本作は、夫婦仲が冷め切り、離婚することに決めた、松坂桃李と仲里依紗が演じる主人公夫婦が、離婚に至るまでの険しい道のりや、それぞれの複雑な想いを描出する、地上波ではなかなか観られない内容の作品だ。

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Netflixシリーズ『離婚しようよ』独占配信中

人気脚本家が共同執筆した異色のドラマ

地上波ではなかなか観られないポイントしては、松坂が演じる東海林大志は世襲議員で、勉強不足で政治についての知識も乏しく、失言も多いという、かなりポンコツな人物なのだが、解散総選挙で愛媛から再出馬することになるため、選挙や国会の裏側に切り込み、政権への皮肉もふんだんに盛り込まれていることが挙げられる。こういった内容は今、非常にタイムリーだと思うが、それをポップに描き出しているのは、『ゆとりですがなにか』や『新宿野戦病院』などでも、その時代ごとの背景や社会問題を反映させ、面白い作品にすることが得意な宮藤官九郎だ。

そして、本作で宮藤と共同脚本を務めたのは、現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』の脚本を担当して注目を集め、『セカンドバージン』などでも男女の恋愛模様を見事に描いて人気を得ている大石静。『離婚しようよ』は、宮藤と大石が各話の脚本を交換日記のように、もしくはリレーのように執筆したという。

仲が演じる黒澤ゆいは、愛媛を舞台にした連続ドラマ『巫女ちゃん』で大ブレイクした、国民的な人気女優という設定だが、宮藤が脚本を務めた朝ドラ『あまちゃん』のセルフパロディのようになっていて笑ってしまう。大志のポンコツ描写も宮藤が担当だと推測できるし、錦戸亮が演じる、ゆいの不倫相手・加納恭二との恋愛パートは大石によるものだろうと予想しながら楽しめる。

実際のイメージとのギャップが面白い松坂桃李

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Netflixシリーズ『離婚しようよ』独占配信中

松坂と仲のキャスティングは、『離婚しようよ』のプロットの段階で決まっていたそうで、2人のキャラクターは当て書きだという。松坂は『ゆとりですがなにか』でも、かなりダメダメなキャラクターを演じたが、今回も宮藤の手にかかると、爽やかな好人物だという実際の松坂のイメージとは真逆に近い、女性関係にだらしなく、議員の仕事においてもポンコツな大志を当て書きされている。だが松坂は、ゆいや不倫相手に詰め寄られると目が泳ぎ、仕事でもその場しのぎを繰り返して乗り切ろうとする、頼りない大志そのものに見えるくらい、役になり切って巧みに快演している。

大志は、女子アナの三俣桜子(織田梨沙)との“路チュー”を撮られ、不倫がバレた後も、「女子アナの行く先って脱ぐか政治家になるかですよね」などと失言を重ねたり、妻のゆいにも「怒ってる? 気を悪くしたなら謝るよ」と、自分の態度を顧みない言葉を投げかけたりと、突っ込み所の多い人物だが、地元の愛媛を愛する気持ちは人一倍強く、純粋で憎めないキャラクターだ。松坂自身の持つキュートさが、大志のこういった部分に反映されているのだと思う。

朝ドラでも活躍中の仲里依紗による名演技

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Netflixシリーズ『離婚しようよ』独占配信中

迷言の多い大志だが、ゆいは歯に衣着せぬタイプで、「気を悪くしたから怒ってんの!」と即座にズバッと返すし、「人生が長すぎて1人の人をずっと好きでいることなんか無理」といった、視聴者に刺さる名セリフも発している。今期の朝ドラ『おむすび』にも出演し、“大女優”だと噂されたものの、実際の仕事はカラオケビデオ出演だというオチがついた、ヒロインの姉を好演している仲。

『巫女ちゃん』での決めゼリフ「かしこみかしこみ」をチャーミングに発し、大志との仲が険悪な状態でも、SNSの“YUIチャンネル”の生配信は欠かさず、ラブラブな“仮面夫婦”を演じるゆい役は、演技力抜群の仲だからこそ体現できたのだと実感する。

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Netflixシリーズ『離婚しようよ』独占配信中

また、錦戸が演じる自称アーティストの恭二は、“色気ダダ漏れ”のキャラクターだと話題になったが、ゆいのことを想って作ったオブジェの“対価”を「ゆいの空いてる時間、全部」と言って、彼女の心を掴んだにもかかわらず、「俺の空いてる時間を全部あげるとは言ってないよ」とか「離婚してくれとも言ってない」などと言い放ち、ゆいを冷たく突き放すなど、男女の駆け引きのようなセリフも特徴的だ。

誰にでも何かしら刺さるポイントがある傑作ドラマ

思いっきり弾けたコメディの部分と、先の読めないラブストーリー、そして選挙について学べる政治パートなど、とにかく見どころの多い『離婚しようよ』。古田新太と板谷由夏が演じる、ゆいと大志、それぞれの離婚弁護士が過去に恋愛関係だったアナザーストーリーや、山本耕史が演じる大志の対立候補の選挙活動は爆笑ものだし、ゆいと恭二のロマンティックな描写に加え、“離婚”を通して関係性が変化していく大志とゆいの夫婦の物語、さらに議員として地元住民の声に耳を傾けるようになる大志の成長など、観れば観るほどハマるポイントの多い傑作ドラマだ。

気になるセリフが多い『離婚しようよ』だが、最後に、ゆいの母・富恵(高島礼子)による名言を紹介したい。

「旦那ってさ、どんなに好きになっても動物学的には他人じゃん。子どもには敵わないよね」

このセリフは観る人によって、共感するか、心が痛くなるか、分かれると思うが、宮藤&大石共同脚本だからこそ紡ぎ出された名言ではないだろうか。そんなセリフや名場面が盛りだくさんの『離婚しようよ』は、きっと誰にでも刺さる何かがあるはずだ。



Netflix『離婚しようよ』

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP