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「どう転んでも地獄」托卵を気付かぬモラハラ夫に同情の声…木曜ドラマ『わたしの宝物』

  • 2024.11.7

「どこに出しても恥ずかしくないモラハラ夫」を体現してみせた『わたしの宝物』(フジ系列)の登場人物・神崎宏樹(田中圭)。妻である美羽(松本若菜)の存在を軽んじる言動が目立つ宏樹どもを抱いて涙する姿や、少しずつ美羽に対する優しさを取り戻していく様子に賛同する声も。

田中圭演じる宏樹に芽生えた“父性”

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(C)SANKEI

夜にいきなり会社の部下を自宅に招いて食事を用意させたり、自宅に忘れた書類を取ってこさせたりなど、妻である美羽を蔑ろにするような言動ばかり繰り返していた宏樹。第1話では、立派なモラハラ夫に映っていた彼だが、2〜3話にかけてその印象が変化していく。

宏樹が美羽につらくあたっていたのは、自身こそが職場でストレスのかかる立場に追いやられていたから。上司からは無理なスケジュールでプロジェクトリーダーを押し付けられたり、後輩からは都合の良い先輩扱いされて敬遠されたりと、小さなストレスを積もらせて心身を消耗させていた。

そんな宏樹が、ホッと心安らげるサードプレイス=喫茶店を見つけ、続けて美羽が子どもを産んだことで、少しずつ心境を変化させていく

自身がどれだけ美羽につらく当たっていたのか、本来持ち得ていたはずの優しさを失っていたのか。仕事から離れ、一杯のコーヒーを飲んでゆっくり一息つく15分を覚えてから、宏樹に余裕が生まれた。後に栞と名付ける子どもを抱きながら、抑えきれず咽び泣いたのは“父性”のあらわれなのだろうか。どちらにせよ、美羽の出産をきっかけに、宏樹は彼女への態度を軟化させていく。

泣く栞をあやすなど積極的に世話を買って出たり、仕事の都合をつけてお宮参りに参加したり、美羽の出産前は堂々と「父親の役割放棄宣言」をしていたにも関わらず、そんな冷徹な姿はもはや見当たらない。

一人の人間のなかに両立し得る、正の面と負の面を表現し、両者の曖昧なコントラストを見事に画面上に反映させた田中圭の手腕もさることながら、宏樹が優しくなるにつれ、美羽の罪悪感も増幅していく構造上の妙まで浮き彫りになる第3話だった。

ハッピーエンドになる可能性は?

果たしてこのドラマに、ハッピーエンドになる余地はあるのだろうか?

宏樹は、栞が自分の子ではない可能性に思い至っていない。時期に違和感がないこと、美羽の身辺に興味が薄れていたせいで、幼馴染の冬月(深澤辰哉)の存在も知り得ないことが、余計に宏樹の視野を狭くしている。

しかし、冬月と宏樹は一度だけやりとりをしている。本人同士を認識していたわけではなく、ただの通りすがりとしてではあるが、少しでも宏樹が美羽の不審さに気づけば、過去の一瞬を思い返して真実に気づく可能性はゼロではない

海外での事件に巻き込まれ、亡くなったと思われていたはずの冬月が生きていた。誰よりも美羽自身がそれを望んでいたはずだが、宏樹の態度が改善を見せ始めているいま、冬月が美羽とふたたび邂逅するのは得策とは言い切れない。

SNS上でも「何がどう転んでも地獄」「宏樹がかわいそうに思えてきた」「冬月、帰ってこないで……」などの声も。1話ごとに目まぐるしく、展開が移り変わっていく『わたしの宝物』。美羽の罪悪感は膨れ上がるばかりなのか、宏樹は真実に気づくのか、冬月の次の行動は?



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_