1. トップ
  2. 『住宅ローンの変動金利上昇』で返済額はいくら上がる?「固定」、「変動」をシミュレーション

『住宅ローンの変動金利上昇』で返済額はいくら上がる?「固定」、「変動」をシミュレーション

  • 2024.10.13

17年ぶりに大手銀行で住宅ローンの変動金利を引き上げ

undefined
写真:西村尚己/アフロ

世界的なインフレの波が日本にも押し寄せ、電気・ガスなどのエネルギー関連に加え、食料品や日用品の値上がりが続いています。ただ、物価上昇に合わせて23年、24年と大幅な賃上げ基調もあり、「物価上昇と賃金上昇が循環する経済成長の波に入った」と判断することもできます。

これを受けて、日本銀行は、デフレ時に実施するゼロ金利政策から脱し、7月31日には、政策金利を0~0.1%程度から0.25%に引き上げを実施しました。そこで気になるのが、住宅ローン金利の上昇

現在借り入れている人も、これから借り入れている人もどのように対策するとよいか考えてみました。

undefined
写真:PIXTA

日銀が金利を上げるとどんな影響があるのでしょうか?まず、朗報としては、預金金利の引き上げがあります。実際、8月からの大手銀行の金利は、普通預金金利が0.02%から0.10%へと5倍アップ。定期預金金利(1年)も0.05%から0.125%へと2.5倍にアップしました。

その一方、住宅ローン金利は現在よりも融資金利がアップすることになります。これから住宅を購入する人は、同じ住宅価格でも今までより多くの返済額を払う必要が出てきます。ちなみに企業にとっても、金利が上がり過ぎると、銀行から借り入れをして、研究開発を進めたり、工場建設をすることがむずかしくなってきます。

undefined
筆者作成

預金金利が日銀の動きに合わせてすぐにアップしたのに対し、住宅ローンの融資金利は市場動向を見て、1カ月に1度見直すこともあり、適用金利の変更が遅れていました。

しかし、大手銀行ではいよいよ10月1日の適用金利から変動型の住宅ローンの基準金利を0.15%引き上げることになりました。

「固定金利型」と「変動金利型」

undefined
筆者作成

現在住宅ローンの借り入れをしている人も、これから住宅ローンを組んで家を購入しようという人も「金利引き上げ」と言われると不安に感じる人が多いでしょう。しかし、すぐに慌てる必要はありません。

住宅ローンの金利には、大きく言うと、市場の金利動向に従って変動する「変動型」と、借りたら全期間一定の「固定型」の2つがあります。固定型は金利上昇によって、返済額が増えるリスクがない分、適用金利は高め。変動型は逆に低めに設定されています。

変動型は適用金利が6カ月ごとに見直されますが、実際に返済額がアップするのは、契約時から5年後で、そのあとも、5年ごとに返済額が見直されます。しかも、返済額の見直し自体も1.25倍よりも高くならないように調整され、もしも、それよりも高い返済額を払わなければならない場合は、あとで上乗せして支払いをしていく仕組みとなっています。金利が借り入れ時の2倍になったからと言って、返済額が2倍になるということはありえないわけです。

3000万円借り入れた場合のシミュレーション

undefined
筆者作成

例えば今、住宅ローンを3000万円借り入れて、35年間で返済するとした場合、変動型と固定型で返済額はそれぞれいくらになるでしょうか?変動型の借り入れ金利を0.475%、固定金利型を1.83%として計算すると、それぞれの返済額は変動型が月7万7544円固定型が月9万6781円となり、変動型が約2万円安くなります。これならば、多くの人が変動型を選ぶことでしょう。

しかし、もし、このまま好景気が続き、金利の引き上げも進んだとします。5年後に変動金利が1.5%に引き上がり、10年後に2.5%に引き上がると、10年後の変動型の返済額は10万669円と約2.5万円アップします。ここまで金利が上がるかどうかは不透明ですが、決して、絵空事ではありません。以降も2.50%でずっと推移した場合の総支払額は変動金利が4023万9240円、固定金利が4064万8064円と変動金利のほうが40万8824円安くなりました。

では、どちらを選べばよいか、なかなか悩ましく判断に苦しむところですが、変動型を借り入れておいて、将来の返済額アップに備えて、毎月2万5000円の積み立てをしておくというのもひとつの方法です。

そうしておけば、もしも返済額がアップすれば、積み立てはできなくなりますが、返済が滞ることはありません。


undefined

監修・執筆 / 酒井富士子
経済ジャーナリスト/金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。ファイナンシャル・プランナー
上智大学卒業。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。近著に『おひとりさまの終活準備BOOK』(三笠書房)、『「お金の増やし方ぜんぶわかる!新NISA超活用術』(Gakken)など多数

※サムネイルおよび記事内の画像はイメージです。