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【MLB】「あんなのはフィクション」名将が語る一世を風靡した“マネーボール”の真実とカムバックが続くベテラン監督の手腕とは?

  • 2024.10.10
MLB監督として21年のキャリアを誇るバック・ショーウォルター氏(C)Getty Images
SPREAD : MLB監督として21年のキャリアを誇るバック・ショーウォルター氏(C)Getty Images

近年、様々なデータが計測されることから年を追うごとに新たな戦術や評価軸が構成されるMLBの世界。「バレル率」「ブラスト率」「ノーダウター」といった、数年前まで耳にしなかったような新しい指標で選手を語ることも少なくはなく、まさにMLBでの野球はデータスポーツとしての側面が強くなっていると言えるのではないだろうか。
そんなデータを重視した野球で成果を収めた最初の事例として有名なのが「マネーボール」だろう。

■なぜ名将は「マネーボール」を一刀両断?

1990年代末から2000年代初頭に、他のチームと比較して豊富な財力がなかったアスレチックスのビリー・ビーンGMが考案したのは、徹底したセイバーメトリクスの数値に基づくチーム編成。“最も効率の良い投資”として、選手の年俸等も考慮しながら編成されたアスレチックは、彼がGMに就任した1997年以降快進撃をみせ、1999年にはポストシーズン進出を逃しながらも87勝、2000年からは3年連続でポストシーズン進出を果たすなど文字通りチームを再建したのだ。この様子を題材に執筆された書籍、及び映画が世界中でヒットしたこともあり、野球好きであれば「マネーボール」という単語はおそらく一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

【動画】ブラッド・ピット主演で映画化されたマネーボール

アスレチックスの快進撃もあり、セイバーメトリクスを重視した戦法を取り入れる球団が他にも現れるなど球界でも一定の評価がされたと思われる「マネーボール」。しかし、実は映画『マネーボール』を含め、この理論に否定的な見解をもつ関係者も少なくない。10月3日にFOX SPORTSが報じたのはメッツなど過去に監督を務めたバック・ショーウォルター氏が映画『マネーボール』について否定的な見解をもつというものだ。
記事の中でショーウォルター氏は「あの映画は茶番劇だ。野球関係者にとって、ただのハリウッド映画にすぎない」と発言。この発言の根拠となるのが、映画の描き方だ。「あの映画では、当時のアスレチックスにいた優秀な先発投手4人についてまるで語られていない」とショーウォルター氏。彼が語った4人の先発は、バリー・ジト投手、ティム・ハドソン投手、マーク・マルダー投手、コーリー・リドル投手のこと。103勝でア・リーグ西地区優勝を果たした2002年、23勝をあげサイヤング賞を受賞したジトを中心に、15勝のハドソン、19勝のマルダー、8勝ながら30先発したリドルら強力な先発投手陣に対して、確かに映画ではまるで語られていない。
映画では、レッドソックス時代に捕手として再起不能な怪我を負いながらも一塁手として獲得し“再生”させたスコット・ハッテバーグ内野手など、GMの独特なスカウティングや戦術がメインに語られていたため、球界全体でみても優秀なタレントだった彼ら先発陣を無視したものとなっているのは否定できないだろう。
また、ショーウォルター氏は「彼は良い野球人だったが、その描写が気に食わなかった」と、当時アスレチックスの監督だったアート・ハウ氏の描き方に関しても言及している。ハウ氏は、1996年から7年間アスレチックスを指揮すると2000年から3年連続でのプレーオフ進出に貢献している。だが、映画内ではGMのやり方に反抗するなど、ある種“敵役”として描かれているのだ。意見がぶつかり合った事実はあるのだろうが、映画で描かれたまるで老害のよう振る舞いは、おそらくハリウッド的な脚色があったのだろう。

■年々目立つベテラン監督の需要

先進的な戦術として描かれた「マネーボール」。年を追うごとに出てくる、様々なデータや指標によって考案される戦術も今後きっと広がっていくに違いない。しかし、あくまでも生身の人間がプレイするゲームであることから、“名将”と呼ばれるようなコミュニケーションに長けた監督の需要は失われることはないはず。
今季からエンゼルスの指揮をとったロン・ワシントン監督、来季からレッズの指揮をとると報道されたテリー・フランコーナ氏、2023年にレンジャーズの監督に就任し1年でワールドチャンピオンに導いたブルース・ボウチー監督など、実際にベテラン監督に対する需要はデータ面や戦術など進化するテクノロジーに反して増している傾向がある。
“マネーボール以降“ともいえる、データを駆使した先進的な野球と、古くから受け継がれてきた伝統的な野球を知る“名将”のマネジメント。そんな両者をかけ合わせたチーム戦術が今後のトレンドとなっていくのだろうか?

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