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億単位の研究が水の泡に? 大損害の危機を回避したワーママの活躍が、地味すぎて誰にも気づかれない話

  • 2024.10.9

【前回までのあらすじ】冴えないサラリーマン研究員をしている私は勤続20年でやっとチャンス到来。所属企業から億単位の研究費を頂くことになりました。多大な予算をもらったことは、関係者はみーんな知っています。私もプレッシャーに押しつぶされそうになりますが、大丈夫!何とかなる!と平静を装っていました。そんなある日…どうやっても、実験シミュレーションが上手く行かないのです。嘘だ!もらった予算で発注もかけちゃったよ。どうする?!どうすんだーー!!!試験をしていると、突然、プログラムが、正常な動きをしなくなりました。『突然』というのはちょっと説明が足りなさすぎる。例え話をさせて下さい。プログラムは好きな数式が組めます。『10』という答えを出したい時、【1+1+・・+1】要するに『1』を10回足すことも可能ですし、【2×5】でも、【1×10】でも答えは『10』になります。今まで、ずーっと『1』を10回足し続けていたコードで演算させていました。うーん。ちょっと不細工だな~と気になっていたのです。今回、【1×10】に変更してみたのです。とはいえ、メインプログラムとは関係のない場所。なのに、動きが止まってしまった。完全に。これくらいで正常な動きをしない…なんてことはありえない。はず。

億単位の予算を頂いている技術

ハッキリ言って、この技術のスタート直後は、「そんな技術できるハズない。」と言われましたし、「特許を出願しても意味がないのでするな。」と役職の高い方々からもお言葉を頂き、散々でした(当時の詳細を書いた記事です→最先端技術を競う職場で、ときに偉い人の意見はただの老害になることもあるよね、という話)。そんな中、やっとのことで実装に漕ぎつけた技術。成功させたい。それなのに…あれ?おかしいな。演算したデータが、期待していた結果にならない。なんなら、全然上手く行っていない。ん?なんでだろ。今まで上手くいっていたデータをよっこらしょ!と出してきて、このコードで演算させても、なんかおかしい。ん?やっぱり、軽くいじった所がダメだったかな?ん?ん?でも、さっきの修正したおかげで、今まであった、ちょっとしたプログラムの矛盾点?変な式?がなくなったハズなんだけど。理論上は。矛盾点がなくなると、結果が出なくなるなんて。待てよ。ということは、

今までのプログラム、間違ってた?

サーーーと血の気が引きます。予算、通してしまったぞ。多額の発注ももうかけてるぞ。暑い季節なのに、冷や汗が止まりません。どこかでセミの劈くような声がしました。時計は18時近くになっています。昔はみなし残業バリバリだった技術系の現場ですが、今はホワイト中のホワイト。終業時間になると競うようにして帰宅する環境になりました。だかしかし、

帰れない、いや帰りたくない

こんな中途半端な演算のまま、帰る訳にはいきません。男性のように、「あれー?仕事終わらない。今日は残業かな~」で帰れないのがワーキングマザー。18時には店じまいしてスタコラサッサとお家に帰らなければなりません。19時までの保育園送迎に間に合わせねばならぬ。もうタイムリミットが近づいています。終業の支度をしながら、考えます。マズイ…とてもマズイ。かもしれない。演算が全て間違っていたかも…そうなると、技術自体が台無しになります。サーっと足元から床が抜け落ちるようなヒヤリとした感覚になり、不安の波が押し寄せます。その日、家に帰っても、

研究が気になって仕方がありませんでした

成功させなければ。他に予算をもらうべき研究を抑えて、我々の研究に投資してもらったんだ。今まで沢山の人にも協力してもらった。そのおかげで予算を頂くことができた。直属の上司達の顔を潰すわけにもいかない。しかも、これが成功すれば、それなりの利益を生み出すことが分かっています。研究の成功だけでなく、投資回収+マネタイズもできます。自分を鼓舞します。プロだもの。プロの企業研究員だもん。成功させる。自身のやりたい研究ではなく、利益を生み出す研究をしてきた。幾度となく研究会を開いて、最も求められる形に近づけてきた。検討会の激しい論戦と応援してくれた人の顔が浮かびます。次の朝…誰よりも朝早くに研究室に向かう…ということも出来ないのがこれまたワーキングマザー。3人の子どもの面倒をみつつ、自分の支度をします。地味に1本前の電車に飛び乗れて、すこーしだけいつもよりも早く出社できましたが、そんなこと誰も知りません。簡単な朝礼の後、解析用のPCの電源を付け、準備します。あの部分。昨日直したプログラム。夜中に頭の中でパソコンの画面とコードがでてきて、何度も反芻しました。不可解になっている部分があります。そこが糸口になるかもしれない。退職した賢い研究員が過去にアルゴリズムを組んでくれた部分が後半にあります。小難しいコードが書かれているので、「まぁこれはこのままで。動くからいいか。」と前任者が担当していた部分はそのままにしていました。しかし、メスを入れるべき時かもしれない。

ブラックボックスがあれば、そこが命取りになる

もう一度アルゴリズムを読解しつつ、解析を進めます。パチパチパチパチ…夢中でプログラムを書いていると、いつの間にかお昼になっていました。うーむ。この時、いつも誰かに相談する私は、誰にも相談できませんでした。主任研究員である自分がしっかり確かめ、不具合が起きている所と改善点をしっかり提示してから相談しなければ、心配と混乱を招くだけ。もしも技術的に実現困難であっても、・どこがダメで・どうしてダメなのか・今後改善の余地はあるのかを明確にしてから相談しないと。このコードの修正が比較的短時間でできる研究員は、今、私しかいません。もちろん、私が優秀な訳ではなく同じレベルで出来る人はゴマンといますが、今までの流れや、所属企業の専門性を理解し、コードを調整しているため、他の人だと時間はかかると思います。それにしても、孤独です。トンネルの中を懐中電灯で1人探検しているみたい。道に迷っているけれど、誰も相談相手なんていない。自らの手足で進まねばならない。そこで、気がつきました。ん?んんん?あった。ここの動作、おかしい!もう一度、丁寧にコードを紐解きます。すると、簡単なコードに単純なミスがありました。

シンプル過ぎて逆に分からなかった

カーー!!ここか!やっぱりここだ。何度か試運転をして、データをとっかえひっかえしてみました。やっといつも通りの結果が出ました。よかった。ミスを補正できた。地味に、とにかく静かに、誰にも気がつかれずに大ピンチを背負い、そっと1人で修正しました。なんだかね。これが技術系の醍醐味かもしれませんが。じ、地味すぎるぜ!とにかく!その後は特に不安になる部分はなく、なーんにもなかったように研究が進んでいます。はぁ~~よかった。多額の予算をもらえることになり、大チャンスではありましたが、一歩間違えれば大ピンチになる。それがサラリーマン研究員の面白いところではありますが、もう一晩でかなり白髪増えたよ。日々精進します!では、またです!

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