卑劣な罠によって拡散された動画のせいで、全てを失った女子高生。平然と生活する加害者たちに華麗なる復讐を果たす！

今や生活の中で欠かせないインターネットだが、一歩間違えると人生を狂わせてしまう可能性を秘めている。ネットで拡散された書き込みを完全に削除することは難しく、何気ない投稿によって生涯苦しめられる人がいるのも事実だ。

『消せない「私」～炎上しつづけるデジタルタトゥー～』（黒田しのぶ/ぶんか社）では、拡散された動画を発端にすべてを失った主人公の復讐劇が描かれている。

ごく普通の女子高生だった灰原硝子（はいばらしょうこ）は美容師・徳道仁（とくみちじん）との出会いをきっかけにメイクを覚え、同級生たちから注目される存在になっていった。

しかしそのことを快く思わない海崎藍里（うみさきあいり）らの手によって、卑劣な罠にはめられてしまう硝子。そこで撮影された動画がネット上に流出し、瞬く間に拡散される事態に。さらに、この事件をきっかけに両親が亡くなってしまう。すべてを失った硝子は、復讐を果たすために再び彼らの前に姿を現し……。

第1巻では、硝子がかつてのクラスメイトである藍里に報復する様子が描かれる。

持ち前の容姿を武器にキラキラした生活を送っていた藍里は、結婚を目標に日々婚活にいそしんでいた。硝子は同級生だと悟られないよう別人へと成り変わり、徐々に藍里の信用を得ていく。しかし、学生時代から変わらない藍里の横柄な態度や傲慢な性格を目の当たりにし、湧きあがる怒りをおさえられない。激しく感情をあらわにする硝子の姿から、彼女の“復讐”に対する決意を改めて感じることができる。

本作は童話をモチーフに描かれており、ドレス姿のまま階段から落ちる藍里を“シンデレラ”にたとえる場面はまさに“らしさ”が溢れた名シーンだ。復讐に手を染めるヒロインの物語は人気のテーマながら、本作は細かな演出によってその存在感を強めている。作者こだわりの演出の数々をぜひ楽しんでほしい。

硝子が復讐を果たした先には何が待っているのか。あなたのその目で確かめてみてほしい。

文＝ネゴト / 渡辺美咲