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フェロー諸島の旅 Part2 -家族と過ごす、北欧流のシンプルな幸せのかたち-

  • 2024.10.8

前回に続き、デンマークの自治領であるフェロー諸島での旅の思い出をお届けします。

前回記事|”ヨーロッパ最後の楽園 フェロー諸島” ダイナミックな自然を楽しむ旅Part1 -オラフ祭り-

今回は、フェロー諸島出身の友人の家族と過ごしたエピソードにも焦点を当て、そこで感じた「北欧の高い幸福度」の秘密にも触れたいと思います。

フェロー諸島がどんな場所なのか、そこで暮らす人々のあたたかさや文化を感じながら、ぜひ一緒に想像を膨らませてみてください。

また、フェロー諸島観光のハイライトでもあるTrælanípa(トラエラニパン)での絶景ハイキングや、おすすめのお土産情報もご紹介します。この記事を通して、フェロー諸島に足を運んだような気分を味わっていただけたら嬉しいです。

Eiði(アイエ)でスリル満点のハイキング

フェロー諸島は、海と絶壁に囲まれた独特の地形に恵まれた国です。フェロー諸島に来たならハイキングを満喫せずには帰れない!ということで首都のトシュハウンから車で50分ほどドライブをしてEiði(アイエ)という町へやってきました。

あいにく天候はどんより曇りの日だったのですが、霧に包まれた景色もフェロー諸島らしさのひとつです。

私はドライブ中に見る風景が大好きでした。壮大な緑の山の景色を見ながら車を走らせていると、時折カラフルな家たちが立ち並んでいる町が現れます。わぁ、と目を奪われつつ写真や動画を撮っていると、また辺り一面がゴツゴツした岩肌と海だらけ、という景色に移り変わります。

こうして感動しっぱなしの50分のドライブを楽しんでいるうちに、あっという間に目的地に到着しました。

写真ではうまく伝わらないのですが、実際に見るとかなり急勾配の丘の側面に一本道が作られており、階段を上るように進んでいきます。

丘を登りきると、自分たちより高いものが何もなくなり、圧倒的な解放感に包まれました。強風が吹き荒れていたので、本当に飛ばされてしまうのではないかとかなり怖かったです。

ケーキの先端だけ切り取られたようにも見える不思議な岩を見たり、寝転んでみたり、壮大な自然を大満喫しました。

先端まで行くと、丘の一番高いところから海を見下ろすことができるのですが、柵などもないので、風に飛ばされないよう慎重に動くことが重要です。一生分のスリルを味わいました。

8月でも風が吹くと体感気温は0度近くなるので、重ね着をして、雨風を防げるアウトドア用の服装で出かけましょう。帽子や耳当てもあると強風から守ってもらえます。

雨風の強い一日、室内でのヒュッゲなひととき

翌日は悪天候だったので、基本的に室内で過ごすことにしました。

友人のおじいちゃんの家にお邪魔して、家族の写真やアート作品を見せていただいたり、ランチを一緒にいただいたりしてゆったりした時間を過ごしました。

お家は高台に位置していて広い窓からのオーシャンビューが自慢だそうですが、あいにくの天候でその絶景を見ることができなかったのが少し残念でした。

それでも、天候が悪くても家の中はとても快適で、寒くて暗い日こそ暖かい家の中で過ごすことの幸せを強く感じました。まさに、デンマークの「ヒュッゲ」文化です。

悪天候でも屋外で楽しむ強者も

夕方には首都トシュハウンへ出掛けて、最近できたというラーメン屋さんで夕食を取りました。本格的で大満足のお味。友人の従兄弟たちと一緒に食べに行ったのですが、みんな美味しいと言って食べてました。

日本人としてはスープがもう少し熱々だったら嬉しかったのですが、これもヨーロッパのラーメン屋さんあるあるのようです。

この日は一日中天気が悪く、空はどんよりとして雨風が吹き荒れ、まるで夏とは信じられないくらい冷え込みました。それでも厳しい天候と対照的に、温厚な性格のフェローの人たちのあたたかさが際立つ一日でした。

フェロー諸島観光のハイライトTrælanípan(トラエラニパン)

googleで”フェロー諸島”と検索すると画像のトップに出てくるのがTrælanípan(トラニラエパン)です。Sørvágsvatn(ソルヴァグスヴァテン)という湖とセットでとても有名な景勝地です。

湖と断崖絶壁が生み出した唯一無二の景色が多くの人を惹きつけ、多くの観光客が訪れます。

湖は海抜約40m、崖は海抜約140mという高低差によって、まるで海の真上に湖が浮かんでいるように見えるスポットです。

フェロー語の長い名前を覚えるのはけっこう難しいので、英語のLake above the ocean(海の上の湖)という愛称で覚えるのがおすすめです。

海から垂直にそびえ立つ崖のことをTrælanípan(トラエラニパン)と呼び、スタート地点から片道1時間程度のハイキングで到着します。ここから湖の方向を見ると、湖が海の真上に浮いているような目の錯覚を味わえます。 湖に沿った小道を進みながら山々を眺めることができ、とても気持ちのいいハイキングでした。

また一番奥まで進むとBøsdalafossur(ボスダラフォスール)という滝まで行くことができます。Sørvágsvatn(ソルヴァグスヴァテン湖)からの水が海に流れ落ちるのを間近で見ましたが、ものすごい迫力でした。先の尖った岩がゴツゴツと海から生えている景色も圧巻です。

photo by Isak Niclasen

ハイキングの道のりは平坦なので子供や犬を連れて訪れる人も見かけましたが、途中小さな川を渡ったり、ぬかるみも多かったのでトレッキングシューズなど防水の靴で行くことをおすすめします。

私が行った日は快晴で風も穏やかだったのでハイキング日和だったのですが、風の強い日は崖の先端に近づかないよう十分な注意が必要です。実際、風に飛ばされて崖から落ちてしまう危険性があるとのことです。フェロー諸島の強風は侮れません。

photo by Isak Niclasen

ハイキングを開始する時に受付で200krの登山料を支払う必要があります。ガイドをつける場合、登山料込みで大人1人450krがかかりますが、バイキング時代にこの崖から奴隷が落とされていたなどの歴史的ストーリーを聞くことができるようです。

個人的に、フェロー諸島に行くならTrælanípan(トラエラニパン)は必ず訪れるべき場所だと感じました。フェロー諸島ならではの壮大な自然が味わえ、気持ちのいい時間を過ごせます。 空港からも車で7分程度と非常にアクセスが良いので、初日や最終日のスケジュールに組み込むのもおすすめです。

島時間が流れるのは世界共通?

トラエラニパンでのハイキングのあとは、フェロー諸島出身の友人の親戚のパーティがあるということで私もお邪魔させてもらいました。

開始時刻は18時でしたが、私たちがハイキングから帰る頃には遅刻確定という時間に。一度家に帰って慌てて身支度を整えたのですが、実際にパーティが始まったのはなんと19時過ぎのことでした。

開始予定の18時には、主催者も開催場所である家にまだ帰ってきていなかったらしいのです。

フェロー諸島ではみんな時間感覚がゆったりしてるんだよ、と教えてもらいましたが、島にはゆったりした時間が流れるのって世界共通なんだなぁと思いました。

ご飯を食べたり、お話したり、ボードゲームをしたり充実した時間を過ごし、帰路に着いたのは日付が変わってからでした。

誕生日パーティとファミリーの強い絆

翌日にも別の親戚のパーティがありました。

フェロー諸島では、4軒のお家にお邪魔しましたが、どのお家もとても広々としていて、インテリアのレベルも高く、機密性も高いぽかぽかの快適なお家でした。フェロー諸島は広い土地が残っているようで、散歩していても大きな家を見かけることが多かったです。

リビングの他に部屋5つとバスルーム2つくらい備えているお家がほとんどなのではないかと思います。

今回お邪魔したうちの一軒には、業務用かと思うほど大きくて立派なアイランドキッチンがあり、その横に15人くらいは座れそうなダイニングテーブルがあるという大豪邸でした。

フェロー諸島で過ごした8日間という短い時間でも、フェローの人々は家族や親戚の絆が本当に強く、つながりを大切にしているということがひしひしと伝わってきました。

家族や大切な人と一緒に美味しい食事を楽しみ、楽しい時間を過ごすというシンプルなことが北欧の幸福度の高さの大きな理由のひとつだと感じます。

おばあちゃんとのあたたかいハグ

フェロー諸島での滞在中、一番お世話になったのが友人のおばあちゃんです。

初日のランチは何がいいかと時間をかけて考えた末に愛情たっぷりのラザニアを作ってくれたり、クリスマスプレゼントでもらったという新品のベッドシーツを私のためにおろしてくれたりと、その大きな愛情に包まれると、まるで自分が家族の一員になったかのような温かさを感じました。

食事の際にはいつも「これもお食べ」「もっとお食べ」と日本のおばあちゃんの家に行った時のように美味しい料理でもてなしてくれました。そのおかげで、私が「ありがとう」の次に覚えたフェロー語は「お腹いっぱいです」という言葉になりました。

私とおばあちゃんの間には共通の言語がなかったので毎回通訳してもらっていましたが、言語でのコミュニケーションが取れなくても表情や行動で伝え合えることは多くありました。

おばあちゃんは家族みんなが大切で、また家族みんなもおばあちゃんが大好きだということが伝わってきました。おばあちゃんを中心に愛が広がっていく様子は本当に平和で心温まるものでした。

最終日はバスターミナルまでおばあちゃんに送ってもらいました。もうすぐ86歳になるというのにマニュアル車を卒なく運転する姿は、とてもかっこよく見えました。

バスに乗り込む前にお別れの挨拶を。

それは私の人生の中で一番あたたかいハグでした。まるで心がぎゅーっと締め付けられるような感覚と、それでいてふわふわの毛布で包まれているような安心感、そんな矛盾する感情が押し寄せてきて、私の心を満たしてくれました。

フェロー語の面白いあいづち文化

Eiði(アイエ)など地名のつづりをみて気づいた方もいるかもしれませんが、フェロー語はアイスランドと共通の文字を持っています。そして個人的には発音がとても難しく、日本語にはない音が多いのでカタカナにするのも困難です。

フェロー語は古代の北欧言語をルーツとしていて、文法や発音などはデンマーク語やノルウェー語とも似ている部分があるため、フェロー人はほとんどの北欧の言語を理解することができるそうです。

ただ私個人の印象としては、フェロー語はデンマーク語とは全く発音が違ったので、国民のほとんどがフェロー語に加えデンマーク語も話せるのはすごいなと思いました。

ちなみにフェロー語で「ありがとう」は「Takk fyri(タック フィーレ)」といい、これは日本人にとってもカタカナのまま発音すれば伝わるので滞在たくさん使いました!

またフェローの人たちの会話を聞いていて一番面白かったのは、あいづちでした。

突然しゃっくりをしたかのような「ハッ」という音を発するので、最初はとても驚いたのですが、どうやらフェロー語でのあいづちは、通常の息を吐く発声に加え、息を吸う発声があるようです。その音は、まさに「はっと驚く」という表現にぴったりでした。

デンマークやノルウェーなど他の北欧諸国でもそういった発声をする人はいると聞いていましたが実際に聞いたことはなく、フェローの人はほぼ全員が息を吸うあいづちを使っていたのが印象的でした。

フェロー諸島でおすすめのお土産

イギリス産のお菓子

フェロー諸島は第二次世界大戦中にイギリス軍に占領されていた歴史があり、その影響で今でもイギリス産のお菓子が生活に浸透しています。

特にTUNNOCK’Sというブランドの紅茶ケーキとワッフルは個包装されていて、レトロなデザインが可愛いのでお土産にぴったり!友人のいとこたちにもおすすめされました。

フェロー諸島産の毛糸

私は北欧で暮らし始めてから、編み物の魅力に気づきました。

羊が多く暮らすフェロー諸島では、地元で毛糸も生産されているようです。

そんなフェロー産の毛糸を使って、編み物をしてみたいと思い、毛糸が手に入るお店を巡ってみました。

アイスランドでよく見かけるスーパー「Bonus」では、naviaというフェロー諸島のブランドからフェロー産のウール毛糸が販売されており、価格も36kr(約760円)と比較的手頃でした。

旅先で手に入れた毛糸を使って編み物を楽しむのが新たな趣味になりました。

フェロー産の毛糸を使って編んだ巾着型ショルダーバッグ

家族の絆がつむぐ、北欧流のシンプルな幸せ

フェロー諸島での滞在を通して、家族の深い絆を何度も目の当たりにしました。大切な人と美味しい食事を楽しみ、何気ない時間を分かち合うその姿こそ、北欧の幸福度の高さの秘密なのだと感じました。

友人の家族と過ごした時間は、心がじんわりと温かく満たされていくような感覚でした。

大切な人と過ごすという、シンプルでありながら豊かな日常。文字で理解するのは簡単なようですが、実際に体感することで初めて深く理解できるものだと感じました。

次にフェロー諸島に行く際には、可愛らしいパフィンに会うために、野鳥の楽園と呼ばれるミキネス島を訪れたいと思います。一度の滞在で全てを見切れなかったことは少し残念にも思いますが、次の旅への期待に変わり、「また来る理由ができたね」と思うだけでワクワクと愛着が湧いてきます。

ありがとう。また来るね、フェロー諸島。

Thumbnail by Isak Niclasen

Photos by Yurie Shiba

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