食欲がない、疲れやすい、味がしない……。亜鉛不足が引き起こす身体の症状と注意したい10のサイン

2024.10.6

※サプリを摂取する際は、医師や専門家に相談することをおすすめします。

亜鉛は私たちの体が適切に機能するために欠かせない、最も重要な栄養素のひとつ。アメリカなどの先進国で亜鉛欠乏症が発生するのは稀だが、決して油断はできない。

そこで、亜鉛が私たちの健康に与える影響やその不足による症状、また食事やサプリメントからの摂取方法を専門家に解説してもらった。

身近に存在する亜鉛

マウントサイナイ病院の外来栄養サービス部長サマンサ・ディエラス（臨床栄養医・米国管理栄養士）によると、体内に含まれる亜鉛は免疫システムや代謝機能に欠かせない栄養素だ。

「亜鉛を多く含む食品は身近にあります」とディエラス。赤身肉、鶏肉、卵、魚などの動物性タンパク質や魚介類のほかに、マッシュルーム、ケール、エンドウ豆、アスパラガス、ビーツなどの野菜、豆類、ナッツ類、種子類、乳製品にも含まれている。米国農務省は亜鉛含有量の多い食品第1位に牡蠣を挙げているが、人気のあるシリアル（ケロッグの「オールブラン」など）も亜鉛を十分に摂取するための食品として推奨している。彼女によるとまた、市販薬の中にはホメオパシーの代替品として亜鉛を使用しているものもあるし、サプリメントとして単独で、あるいはマルチビタミンの中に含まれている場合もあるという。

亜鉛が重要な理由

その亜鉛は私たちの身体機能の多くで実に重要な役割を果たしている。「皮膚や骨の発育に不可欠で、消化器系、生殖器系、中枢神経系、免疫系を円滑に働かせる」と説明するのはディエラス。Momentousのパフォーマンス・アドバイザーであり、ミネソタ・ティンバーウルブズのNBA栄養ディレクターでもあるジェナ・スタングランド（修士理学、スポーツ栄養士認定スペシャリスト、米国管理栄養士）もこれに同意見で、さらに自然治癒力にも役立つと付け加える。適切な亜鉛レベルの維持により成長と回復のサポートが促されるため、体内で生成することができない亜鉛は食べ物から摂取すべき最も重要な栄養素のひとつ、とスタングランドは言う。

亜鉛不足のサインとは？

研究によると、亜鉛の1日の推奨摂取量は成人女性で約8mg（マイクログラム）、成人男性で約11mgとなり、これらより低い亜鉛レベルは、栄養失調や特定の病気によって引き起こされることがほとんどだ。ディエラスによれば、亜鉛欠乏症は胃腸障害、アルコール乱用歴、減量手術を受けた人に見られることがあるほか、ベジタリアンやビーガンの人、妊娠中や授乳中の人にも見られ、母乳だけで育てている年長の乳児や鎌状赤血球症の子供にも多いそうだ。

ディエラスとスタングランドの二人とも、亜鉛不足のサインとして以下のような症状を挙げている。

体重減少
疲労
下痢
抜け毛
集中力の低下
注意力の欠如
免疫系の抑制
傷が治りにくい
皮膚や胃腸の病変
爪に白い斑点ができる

これらのサインは食事で亜鉛を十分に摂取できていない可能性を示しつつ、ほかの栄養素の欠乏時と似ていることにも注意したい。ディエラスによれば、医師の診断を受けない限り、本当に亜鉛が不足しているかどうかはわからないという。また、亜鉛欠乏症の診断は難しいため、複数の変数を考慮して適切な判断を下せる専門家に診てもらうことが重要だ。「亜鉛レベルは血液検査で測定しますが、性別、年齢、採血の時間、感染症、ステロイドホルモンのレベル、筋肉の異化に影響を受けるので注意が必要です」

亜鉛不足になるとどうなる？

亜鉛欠乏症のリスクはかなり深刻で、長く無視していると多くの健康問題を引き起こす可能性がある。体内の亜鉛が不足すると、ウイルスや細菌が侵入しやすくなる、とスタングランド。ディエラスもまた、食欲への悪影響、味覚や嗅覚の能力低下、過度の体重減少など上記に挙げた症状の多くを引き起こし、さらには下痢の症状が現れる、と付け加える。そのほかの副作用としては、自然治癒力の低下、記憶力の低下、無気力、精神的な理性や注意力の欠如、肌荒れや抜け毛の原因になると指摘する。

亜鉛不足を解消するには

亜鉛レベルを回復させる最善の方法は、食事と亜鉛サプリメント摂取の2つだ。スタングランドは、食事に十分なタンパク質や亜鉛を含むとされている食品を取り入れ、上に挙げた動物性タンパク質、魚介類、野菜などの食品に目を向けるようにアドバイスする。

米国立衛生研究所（NIH）は、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛など、あらゆる種類の亜鉛を含む経口サプリメントを推奨しており、ディエラスもサプリメントでの摂取に賛成派だが、「過剰摂取を防ぐために、量をモニターする必要があります」と注意を付け加える。「ラベルに記載されている要素が確実に含まれているよう、第三者機関による検査を受けたサプリメントを探しましょう」

健康に関することは何でもそうだが、医師に相談して適切な診断を受けることが重要だ。症状が数日経っても改善しない場合は、専門家と一緒に安全な食事法と治療方法を考えよう。スタングランドも「体に異変を感じたら、自分で勝手に判断するのを避け検査しましょう」と念を押している。

Text: Audrey Noble Translation: Moe Ideishi

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