1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【明日海りおさんインタビュー】「自分が真っ先にスイッチを入れることで、稽古場の温度も上がっていく」

【明日海りおさんインタビュー】「自分が真っ先にスイッチを入れることで、稽古場の温度も上がっていく」

  • 2024.10.6

ロサンゼルスの大企業で働く3人の女性が、力を合わせて横暴なハラスメント社長に復讐する痛快なミュージカル・コメディ『9 to 5』。仕事と家庭の両立に奮闘するシングルマザー・ヴァイオレットを演じる元宝塚歌劇団花組トップスター・明日海りおさんに、初日を目前に控えた今の心境を尋ねました。

ライブのような楽しさを味わえる、エネルギッシュな楽曲も魅力

10月6日より上演される『9 to 5』は、音楽界の“LIVING LEGEND”と称されるドリー・パートンが手掛けたミュージカル。2009年にブロードウェイで上演され、トニー賞やグラミー賞にノミネートされた、歌あり、ダンスあり、笑いありの人気作です。稽古も佳境に入り、インタビュー前日にはオーケストラを入れての通し稽古を行ったばかりという明日海りおさんに、まずはその手ごたえから尋ねてみると……。

「今回の作品は展開がとてもスピーディなので、昨日までは演者もスタッフさんも段取りを体に入れるだけで精一杯でしたが、昨日の通し稽古ではようやくオケの皆さまとも息が合ってきて。演者もお互いの息を感じながらリラックスしてお芝居ができて、『9 to 5』の世界を楽しく生きている感覚を味わえました」

痛快なコメディとしての楽しさはもちろん、それぞれの登場人物に乗り越えるべき課題があり、新しい一歩を踏み出していく過程がしっかり描かれるのも、本作の見どころです。

「私が演じるヴァイオレットは仕事のできるベテラン社員。家ではシングルマザーとして息子を守り、会社では男社会のなかで身を粉にして働いている女性です。ずっとひとりで踏ん張ってきた彼女が、ドラリーとジュディというふたりの女性と意気投合したのをきっかけに、お互いに足りないところを補いながら、力を合わせて会社を改革していく……。その変化も素敵だなと思います」

80年代に大ヒットしたドリー・パートンによるテーマ曲「9 to 5」をはじめ、エネルギッシュな楽曲の数々も、明日海さんが本作のオファーを受ける決め手のひとつに。

「アップテンポなカッコいいナンバーから、登場人物が感情を吐露するしっとりしたナンバー、温かいデュエットソングまで、どの曲も歌っていて楽しくて。お客さまにも、ライブに来たような楽しさを味わっていただけると思います」

クラシックな王道ミュージカルの後だからこそ、ポップなコメディを

本作のみならず、毎回異なるキャストとスタッフで構成される舞台のカンパニー。雰囲気づくりで意識しているのは、「自分のやるべきことに誠実に取り組むこと」だと話します。

「台詞が体に入っていない段階でも、本当に心を込めて演じる。そうやって真っ先にスイッチを入れることで、みんなも『真剣モードだな』と敏感に感じ取ってくれて、稽古場の温度が上がっていく。そうやってカンパニーの雰囲気もできあがっていく気がします」

おのずと次の作品が決まっていた宝塚在団中とは異なり、退団後の今は、みずから仕事を決め、キャリアを重ねていく必要があります。今の明日海さんはどのような基準で、出演作に臨んでいるのでしょうか。

「在団中のように次の作品が決まっていることは、安心でもあるんです。今はそうではないので、お話をいただけるだけで嬉しくて。ただ、そのなかでも意識しているのは、似通った作品が続かないこと。『9 to 5』の前に出演していたのが『王様と私』というクラシックな王道のミュージカルだったので、次は設定も人物像も異なるポップなコメディをやりたかったんです。それならいつも見てくださっている方も、『今度はこういう感じなのね』と楽しめると思うので。いろいろな役に挑戦するなかで、『私におまかせください!』と言えるような役に出会えたら嬉しいですし、新たな引き出しが増えるのも嬉しい。コメディでも悲劇でも、『こういう役がぴったりだね』と言ってもらえるところまでやりたいです」

“今の明日海りお”を好きになってもらえたことが嬉しい

新たな役に全力で挑むには、普段からベストなコンディションを整えておくことも重要に。

「ダンスがある作品なら、しっかり踊れる体でいたいし、歌があれば、役の気持ちを自在に歌で表現できる、歌える自分でいたい。自分を元気に保つためにも、オフには体力づくりをしたり、ドラマや映画、舞台をたくさん観て新しいものに触れるようにしています」

最新のインプットのひとつが、最近運転免許を取ったこと。

「作品のなかで車を運転するときに、免許を持っていないとできない演出に出合うこともあって、免許を取ることにしたのですが、自動車学校で新しく人と出会うのがおもしろくて。教え方も先生によってまったく違って、いろいろな人がいるんだなあ……といい経験に。授業で教習ビデオが流れるときは、『カメラの切り替えはこうしたほうがいいかも』とか『この台詞はちょっと不自然だな』とか……、ついつい心の中でダメ出ししながら観てしまっていました(笑)」

退団から5年が経ち、さらに活躍の場を広げるなか、ドラマやバラエティ番組を観て、明日海さんのファンになったという人も。新たなファン層の広がりに驚きながらも、力をもらっているそう。

「もちろん昔から応援してくださっているファンの方には本当に感謝していて。家族とも友達とも違うけれど、一番大事な存在です。でも退団して、“もう男役ではない明日海りお”を好きになってもらえたことも嬉しい。今の自分がやっていることも、誰かに喜んでもらえているんだ……と、背中を押してもらっているような感覚です」

PROFILE:
あすみ・りお 1985年生まれ、静岡県出身。2003 年に宝塚歌劇団に入団。2014年に花組トップスターに就任し絶大な人気を誇る。2019年に退団。退団後は舞台に加えて映像でも活躍。近年の出演作に舞台『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』『精霊の守り人』『王様と私』、ドラマ『大病院占拠』『下剋上球児』『グレイトギフト』『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』など。2025年2月より舞台『昭和元禄落語心中』に出演予定。

明日海りおさん出演舞台 ミュージカル『9 to 5』

ロサンゼルスの大企業に勤めるシングルマザーのヴァイオレット(明日海りお)。日々の生活に追われながら仕事と家庭を両立し、社内で確固たる地位を築いていたヴァイオレットは、若手社員ジョー(内海啓貴)に慕われる一方で、 社長フランクリン(別所哲也)の横暴に悩まされていた。ある日、同じようにフランクリンのハラスメントに耐えているグラマラスな秘書ドラリー(平野綾)、新入社員のジュディ(和希そら)と意気投合したことで、 フランクリンをとっちめる計画を立てる。その計画を敵対するロズ(飯野めぐみ)に知られたことで、思わぬ騒動を引き起こすことに——。

歌詞・音楽:ドリー・パートン
脚本:パトリシア・レズニック
原作:20世紀フォックス同名映画
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
出演:明日海りお 平野 綾 和希そら 内海啓貴 飯野めぐみ 別所哲也
日程:
10月6日(日)~10月21日(月)東京・日本青年館ホール
10月25日(金)~10月28日(月)大阪・オリックス劇場
11月1日(金)~11月3日(日)福岡・キャナルシティ劇場
11月7日(木)〜11月8日(金)静岡・静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
https://9to5.jp/

撮影/朝岡英輔 スタイリング/大沼こずえ ヘアメイク/中村未幸 取材・文/工藤花衣
ワンピース/ルームエイト ブラック(03-6824-4059)、イヤリング/ケンゴ クマ プラス マユ(03-3470-4061)

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

ファッション、美容、更年期対策など、50代女性の暮らしを豊かにする記事を毎日更新中! ※記事の画像・文章の無断転載はご遠慮ください

元記事で読む
の記事をもっとみる