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豪華絢爛! 年代で振り返る、豪華モデルたちが魅せるランウェイの歴史とその変化

  • 2024.10.5
1950s 〈右から・Lila〉ドレス/ELIE SAAB BRIDAL(www.eliesaab.com) 「ディーヴァ ドリーム」イヤリング WG×エメラルド×ダイヤモンド ¥6,391,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン) 〈Alex〉ドレス/GIAMBATTISTA VALLI(www.giambattistavalli.com) 〈Amelia〉コート 参考商品/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) ネックレス/MARIA NILSDOTTER(marianilsdotter.com) ブローチ/SUSAN CAPLAN(susancaplan.co.uk) 〈Anok〉ドレス/GIAMBATTISTA VALLI(www.giambattistavalli.com) 「フィオレヴァー」ピアス WG×ダイヤモンド ¥5,918,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン) シューズ(参考色) ¥143,000/FERRAGAMO(フェラガモ・ジャパン) 〈Jill〉コート グローブ/ともにRICHARD QUINN(www.richardquinn.com) ネックレス/MARIA NILSDOTTER(marianilsdotter.com) バッグ ¥280,500/MICHAEL KORSCOLLECTION(マイケル・コース カスタマーサービス) 〈Angelina〉ドレス/RICHARD QUINN(www.richardquinn.com) チョーカー/CRISTINA SABATINI(www.cristinasabatini.com) 〈Lina〉ジャケット ¥4,500,000 スカート ¥290,000(ともに参考価格) シューズ 参考商品/すべてDIOR(クリスチャン ディオール) バッグ ¥363,000/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン)
〈右から・Lila〉ドレス/ELIE SAAB BRIDAL(www.eliesaab.com) 「ディーヴァ ドリーム」イヤリング WG×エメラルド×ダイヤモンド ¥6,391,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン) 〈Alex〉ドレス/GIAMBATTISTA VALLI(www.giambattistavalli.com) 〈Amelia〉コート 参考商品/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) ネックレス/MARIA NILSDOTTER(marianilsdotter.com) ブローチ/SUSAN CAPLAN(susancaplan.co.uk) 〈Anok〉ドレス/GIAMBATTISTA VALLI(www.giambattistavalli.com) 「フィオレヴァー」ピアス WG×ダイヤモンド ¥5,918,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン) シューズ(参考色) ¥143,000/FERRAGAMO(フェラガモ・ジャパン) 〈Jill〉コート グローブ/ともにRICHARD QUINN(www.richardquinn.com) ネックレス/MARIA NILSDOTTER(marianilsdotter.com) バッグ ¥280,500/MICHAEL KORSCOLLECTION(マイケル・コース カスタマーサービス) 〈Angelina〉ドレス/RICHARD QUINN(www.richardquinn.com) チョーカー/CRISTINA SABATINI(www.cristinasabatini.com) 〈Lina〉ジャケット ¥4,500,000 スカート ¥290,000(ともに参考価格) シューズ 参考商品/すべてDIOR(クリスチャン ディオール) バッグ ¥363,000/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン)

1978年、UK版『VOGUE』が毎年開催する若手ライターのためのタレントコンテストで特別賞を受賞した14歳の私は、当時編集長だったベア・ミラーから何か協力できることはないかと聞かれた。失うものなど何もなかった私は、「理想を言えば、ビル・ギブの次回のファッションショーのチケットをもらえたらいいなと思います」と答えた。驚くべきことに、チケットはきちんと用意された。ホテルのボールルームで、ジェリー・ホールやマリー・ヘルビンといったモデルたちが私の夢見たフォックステールやジャージー、つややかなレースの服を身に纏い、すらりと伸びた脚でランウェイを闊歩するのを見て、私は至福の境地に至ったのだった。

週3日勤務、IRAによる爆弾テロ、両親の離婚など、苦難に満ちた70年代のイギリスで育った私は、ファッション黎明期の魔法に夢中になった。うれしいことに、ロンドンのライトルームで今秋から開催される新しい没入型の展覧会、「Vogue: Inventing the Runway」展は、私があの頃に感じた衝撃や感動を再現してくれている。この展覧会は、ランウェイショーの歴史をさまざまな時代の映像や写真(30年代にガブリエル・シャネルが最新作を披露する様子や、40年代・50年代のクリスチャン・ディオールやクリストバル・バレンシアガによる工夫を凝らしたショー、90年代のジョン・ガリアーノやリー・マックイーンによる尖った演出のショーなど)によって掘り下げている。また、社交界の名士から、大物バイヤー、インフルエンサー、今日のショーに登場するセレブリティまで、出席したゲストたちのエピソードも満載だ。展示はベル・エポック期のイギリス(またフランスやアメリカ)で、一部の特権階級のみに一風変わったクリエイションを披露し世間を沸かせたルシールことレディ・ダフ=ゴードンから、グローバルに注目を集めるスーパースター級のデザイナーまで多岐にわたる。特にスーパーデザイナーたちのショーは、ファレル・ウィリアムスによるルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2024年春夏ショーのようなスペクタクル感あふれるポップ・カルチャーの巨大イベント、あるいはリオデジャネイロで行われたニコラ・ジェスキエールによるルイ・ヴィトンの2017年リゾートショーのように、別世界のようなロケーションで行われるようになった。

ジャケット ¥700,000 セーター ¥270,000 スカート 参考商品 イヤリング ¥83,000/すべてDIOR(クリスチャン ディオール)
ジャケット ¥700,000 セーター ¥270,000 スカート 参考商品 イヤリング ¥83,000/すべてDIOR(クリスチャン ディオール)

特筆すべきは、初期のファッションプレゼンテーションはショー形式ではなく、人間すら登場しなかったということだ。1850年代、我々が今考えているファッションの生みの親であるシャルル・フレデリック・ウォルトは、生身の女性に作品を着せて見せるというコンセプトを導入したが、それ以前は、おしゃれな女性たちはミニチュアの人形にスタイリングされた服を見て選んでいたのだ。やがて独立して店を構えたウォルトはすぐに強固な顧客基盤を抱え、プライベート・サロンに貴族の女性たちを集めて発表会を開くようになった。また、裕福な男性の愛人たちも、毎週木曜日の朝にサロンに呼ばれていた(ただし、この曜日の規則を破るのはご法度だ)。

その半世紀後、ガブリエル・シャネルがファッションショーでこの世界に変革をもたらした。ショーに起用された女性たち(1920年代初期の頃は、どこか鼻持ちならない雰囲気を漂わせた高級娼婦たちだった)は豪奢な装飾が施されたカンボン通りのサロンの階段を下り、店内を闊歩した。春と秋のショーは初回から大勢の顧客が押し寄せ、その後2週間ほど毎日同じ時間にショーが開催された。だが、ファッションショーが真に世界的な現象となったのは、1940年代のことである。田舎から出てきた威勢のいい青年ピエール・バルマンはルシアン・ルロンのもとで働いていたが、裏方のデザイナーから独り立ちして自身のメゾンを築いた初の例となった。長く続いた戦争がようやく終わった1945年にメゾンを設立したバルマンの初のコレクションは、女性らしさを輝かせるものだった。ペットのプードル、バスケットを連れて客席の最前列に座ったガートルード・スタインは『VOGUE』に、バルマンを絶賛する彼女にとって最初で最後のファッション批評を寄稿した。

ドレス/ATELIER PRABAL GURUNG(prabalgurung.com) 「ディーヴァ ドリーム」イヤリングWG×エメラルド×ダイヤモンド ¥6,391,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン)
ドレス/ATELIER PRABAL GURUNG(prabalgurung.com) 「ディーヴァ ドリーム」イヤリングWG×エメラルド×ダイヤモンド ¥6,391,000/BVLGARI(ブルガリ ジャパン)

だが、かつてルシアン・ルロンで共同デザイナーを務めたクリスチャン・ディオールという小柄で物静かな男性を称えた歓喜は、バルマンのデビューがもたらした興奮をはるかに超えた。彼がルロンのメゾンでデザインし、1945年に開催された「テアトル・ドゥ・ラ・モード」(ミニチュアの人形サイズのファッションショーで、コレクションを買う人よりも催し物を見に来る人の方がはるかに多かった)で発表された服は、細くくびれたウエスト、柔らかなショルダーライン、ボリュームのあるシルエットのスカートが特徴で、長い間主流だったボクシーなスーツとシンプルなスカートからの変化、新たな息吹を感じさせるものだった。そして1947年2月、ディオールの基盤が確立された。数々のプレゼンテーションが行われたパリ・モンテーニュ通りにあるディオール本社は、彼の手がけた服を華々しく引き立たせるようにつくられており、グレイを基調とする部屋はベル・エポック期のシックな美しさそのものだった。この大騒ぎを一目見ようと詰めかけた社交界の名士たちの中には、ウィンザー公爵夫人、レディ・ダイアナ・クーパー、ナンシー・ミットフォードも含まれていた。ディオールを信奉する女性たちはかわいらしく、シックで、きびきびと動いていた(数年後、黒髪を短めのボブにカットしたヴィクトワール・ドゥトルロウが登場し、たちまち若々しい輝きの象徴となった。伝統的なディオールガールとはまったく異なり、彼女が着た服はセンセーショナルなくらいモダンに見えたのだった)。

1957年、ディオールがわずか52歳でこの世を去ったことにより、彼が片腕として信頼を寄せていたイヴ・サンローランは弱冠21歳にして巨大メゾンの責任を背負い、一躍脚光を浴びることになった。彼のコレクションは若々しく活気に満ちており、わずか2年の間に、ごく少数のデザイナーが30年かけて成し遂げられる以上の偉業を打ち立てた。だが、パリのセーヌ川左岸に集まっていた実存主義者たちにインスパイアされて1960-61年秋冬シーズンのショーで打ち出したビートニク風ルックは、神聖なるディオールにそぐわないと酷評された。過去にはサンローランが軍の召集に抵抗するのを助けたとされるディオール・メゾンだったが、もはや彼を追放することにためらいはなかった(なお、この頃のディオールは、見る人を挑発するようなショーの先駆けにもなった。こうしたファッションショーは後に次々と開かれるようになる)。

1960s 〈右から・Celina〉ドレス 参考商品/LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン クライアントサービス) 〈Soyeong〉ドレス 参考商品/MICHAEL KORS COLLECTION(マイケル・コース カスタマーサービス) ブーツ/DEAR FRANCES(jp.dearfrances.com) イヤーピース/CHRISHABANA(chrishabanajewelry.com) 〈Ugbad〉ドレス/PROENZA SCHOULER(www.proenzaschouler.com) シューズ/ANCUTA SARCA(ancutasarca.com) イヤリング/ÉLIOU(www.eliou.com) 〈Lulu〉ジャケット ¥2,828,100 スカート ¥377,300(ともに予定価格)/ともにCHANEL(シャネル カスタマーケア) ブーツ ¥183,000/COURRÈGES(エドストローム オフィス) 〈Amelia〉ガウン/ALBERTA FERRETTI(www.albertaferretti.com) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈Phoebe〉サングラス/NATASHA ZINKO(natashazinko.com) 〈Iris〉ドレス ¥636,700/RABANNE(エドストローム オフィス) バングル/LOUISE OLSEN X ALEX AND TRAHANAS(alexandtrahanas.com) 〈Anok〉ドレス ¥2,420,000(参考価格)/GIVENCHY(ジバンシィ ジャパン) イヤリング/SHAUN LEANE(shaunleane.com) バングル/LOUISE OLSEN X ALEX AND TRAHANAS(alexandtrahanas.com) リング/MARK FAST(markfast.com)
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こうして独り立ちしたサンローランは、1961年12月に恋人のピエール・ベルジェとミューズのドゥトルロウの協力を得て、自らのメゾンを率いることになった。際どい作風で知られる印象派画家、ジャン=ルイ・フォランの旧邸宅で発表された彼の初期のコレクションは品の良さの極みを示すものだったが、1966年頃になるとオートクチュールが限られた極めて裕福な顧客にしかアピールできないことに嫌気がさし、プレタポルテのリヴ・ゴーシュ・コレクションを発表した。サンローランは、鮮やかな色彩を用いた飾り気のないシンプルなピースで社会変革を促す若者のパワフルなムードをとらえ、すぐにクレージュとパコ・ラバンヌ(前者は元々バレンシアガのテイラーであり、後者はバレンシアガのために美麗なボタンを作っていた)がこの精神に共鳴した。クレージュのショーでは、フランソワーズ・アルディのような少女の初々しさを感じさせる女性たちが登場。胸のふくらみを押さえつけ、短いスカートをはき、ウィッグを子どもっぽく束ねた姿で、ジャズのサウンドトラックに乗りながら新しいムードを表現した。ハサミで裁ち切った真っすぐなラインが特徴的で、曲線などなかった(映画『ポリー・マグー お前は誰だ』や『欲望』を思い浮かべてほしい)。

サンローランにとっては、新しい若い顧客(と取り巻き)たちが一気に目の前に現れた格好だ。カトリーヌ・ドヌーヴ、ベティ・カトルー、パロマ・ピカソ、マリサ・ベレンソン、ナン・ケンプナー、ルルー・ドゥ・ラ・ファレーズといった女性たちは、ディオール時代に彼の服を着ていた女性たちとはまるで違っていたというのは想像できるだろう。やがて、その興奮はクチュール界にも押し寄せた。それから数十年が経ち、サンローランが引退して久しい頃、私はドヌーヴと一緒にいつ始まるとも知れないゴルチエのクチュールショーが始まるのを席で待っていた。ドヌーヴはクチュールの顧客としてまったく申し分のない上品な装いだったが、突然、結婚式や葬式の始まりを告げるムーア人の女性のように耳をつんざくような、背筋が凍りつくような金切り声を上げた。ゴルチエのショーはその直後に始まったのだった。

一方、1970年代のニューヨークの空気とランウェイを象徴していたのはホルストンだ。マンハッタンのミッドタウンにあるオリンピック・タワーのショールームには、彼の友人であるビアンカ・ジャガーアンディ・ウォーホル、ジャクリーン・ケネディをはじめ、大勢の人々が集まっていた。彼らは皆、パット・クリーヴランドやカレン・ビョルンソン、アンジェリカ・ヒューストンといったランウェイを闊歩する「ホルストンネッツ」に引けを取らないくらい完璧に着飾っていた。カルバン・クライン、ラルフ・ローレンダナ・キャラン、ペリー・エリスが主役を張っていた1986年に私は初めてショーのためにニューヨークを訪れたのだが、つい最近までアメリカファッション界の神と呼ばれていたホルストンは、その頃には事業がすっかり傾き、さらにその2年後にはエイズ関連の合併症で表舞台から姿を消していった。また、1986-87年秋冬のペリー・エリスのショーは活気と楽しさに満ちていたが、最後に挨拶をするために舞台に現れたエリスは衰弱してやせ細り、2人のアシスタントに抱えてもらわなければならなかった。彼はそれから約3週間後に亡くなった。

オスカー・デ・ラ・レンタ、ビル・ブラス、キャロリン・ロームといったデザイナーたちは、アッパー・イーストサイドのレディたちに向けてコレクションを披露した。ブルック・アスターやナンシー・キッシンジャー、バーバラ・ウォルターズといった顧客の女性たちは皆、前シーズンの主だったピースを身につけてショーに参じた。

1970s 〈右から・Jawara〉コート ¥594,000(参考価格) パンツ 参考商品/ともにBURBERRY(バーバリー・ジャパン) サングラス ¥82,500/MYKITA(マイキータ ジャパン) 〈Lulu〉ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈Angelina〉シューズ/AMINA MUADDI(www.aminamuaddi.com) 〈Jill〉ドレス 参考商品/FERRAGAMO(フェラガモ・ジャパン) ネックレス/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈Lux〉トップ ¥248,600/HERMÈS(エルメスジャポン) レギンス ¥112,200/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン) ブーツ/DEAR FRANCES(dearfrances.com) 〈Anok〉ドレス バングル ともに参考商品/ともにGUCCI(グッチ クライアントサービス) イヤリング/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈Ugbad〉ドレス/Pam Hogg(www.pamhogg.com) スカーフ 参考商品/HERMÈS(エルメスジャポン) イヤリング/LOUISE OLSEN(www.louise-olsen.com)
〈右から・Jawara〉コート ¥594,000(参考価格) パンツ 参考商品/ともにBURBERRY(バーバリー・ジャパン) サングラス ¥82,500/MYKITA(マイキータ ジャパン) 〈Lulu〉ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈Angelina〉シューズ/AMINA MUADDI(www.aminamuaddi.com) 〈Jill〉ドレス 参考商品/FERRAGAMO(フェラガモ・ジャパン) ネックレス/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈Lux〉トップ ¥248,600/HERMÈS(エルメスジャポン) レギンス ¥112,200/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン) ブーツ/DEAR FRANCES(dearfrances.com) 〈Anok〉ドレス バングル ともに参考商品/ともにGUCCI(グッチ クライアントサービス) イヤリング/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈Ugbad〉ドレス/Pam Hogg(www.pamhogg.com) スカーフ 参考商品/HERMÈS(エルメスジャポン) イヤリング/LOUISE OLSEN(www.louise-olsen.com)

80年代のロンドンは、言うまでもなく才能と熱狂的な楽しさのるつぼだった。私は男性用のスカートにクロップド丈のジャケット、染色されたコットンのパッチを継ぎ合わせた特大サイズのシャツと、全身ジョン・ガリアーノという人目を引くフル装備でのショーに赴いたものだ。デヴィッド・ホラーとスティーヴィー・スチュワートは、ブランドBodyMapから、レギンスにヒルデ・スミスのパターン、ライクラ製のトップ、あらゆるサイズをカバーするほど大きなシルエットなど先進的で魔法がかったコレクションを打ち出し、振付師のマイケル・クラークが大所帯のクルーたちを率いて、あらゆる年齢層の友人や家族で賑わうショーをつくり上げた。オーストラリアのサンシャインからやってきたパフォーマーのリー・バウリーは、瞬く間にチャチャ・クラブとカムデン・パレスを制覇し、1985年にはタブーをオープンした。このクラブがタブーと名付けられたのは、そこには何もタブーがなかったからだ。彼のファッションは過激な自己表現であり、ショーは何でもありで、観客は大騒ぎしていた。リーはジェンダーの混乱に喜びを見い出し、彼の世界はランウェイの内外を問わずワイルドで、スキャンダラスで、最高だった。彼のアートとファッションには、彼の人生とコミュニティが反映されていた。

ジョン・ガリアーノがファッション・イラストレーターとしてセントラル セント マーチンズを卒業しようとしていたとき、彼を指導していたデザイン講師のシェリダン・バーネットが、ガリアーノの卒論用のイラストレーションに夢中になり、実際に製作してショーで発表するよう説得した。そうして生まれたのが『Les Incroyables』と題されたショーで、わずか3、4分という短さだったが、今も私の脳裏に焼き付いている。ショーでは彼の友人たちや、旅先で見かけた印象的な容姿の人々が、フランス革命の志士たちのように大声で叫び、極限のエネルギーを爆発させていた。コレクションはブラウンズで完売し、バーブラ・ストライサンドとダイアナ・ロスが最初の顧客として名乗りを上げた。

〈右・Lulu〉ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ/AMINA MUADDI(www.aminamuaddi.com) イヤリング/ÉLIOU(www.eliou.com) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈左・Jawara〉コート ¥594,000(参考価格) パンツ 参考商品/ともにBURBERRY(バーバリー・ジャパン) サングラス ¥82,500/MYKITA(マイキータ ジャパン)
〈右・Lulu〉ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ/AMINA MUADDI(www.aminamuaddi.com) イヤリング/ÉLIOU(www.eliou.com) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈左・Jawara〉コート ¥594,000(参考価格) パンツ 参考商品/ともにBURBERRY(バーバリー・ジャパン) サングラス ¥82,500/MYKITA(マイキータ ジャパン)

しかし、当時のイギリスはアイデアや革新性、創造性という点では際立っていたが、ビジネスにおいては最悪だった。結局、ガリアーノはパリへ拠点を移した。その80年代のパリにいたのは、ひょうきんで軽妙、そして極めて洗練されていたカール・ラガーフェルドである。「私は労働者階級の人間だ」とラガーフェルドは言うが、まさにその通りだ。80年代初頭は、60年代からデザインを担当してきたクロエ(CHLOÉ)で働き詰め、また1983年にシャネルを引き継いでからももちろん、24時間365日働いていたのだから。当時のシャネルは影が薄く、モデルも冴えず、顧客の女性たちは裕福ではあったが、最新のスタイルに身を包むことはなかった。ラガーフェルドは、アトリエでもランウェイでも、こうした状況を一変させた。痩身で高貴な雰囲気をもつイネス・ド・ラ・フレサンジュは彼のミューズとなり、やがてほかのすべての女性を蹴落とす勢いで君臨した。しかし、80年代後半になるとイネスの時代は終わり、代わりに肉感的なボディにブラックのバッスルとコルセットを纏った愛嬌のあるモデルとして、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌが人気を博した。ラガーフェルドはその後、あらゆるトップモデルをランウェイに起用するようになる。しかし、そのうちの一人であるクラウディア・シファーは、場慣れしたランウェイモデルが履くような超絶的な高さのハイヒールを履きこなせなかったため、彼女のためだけには特別にローヒールの靴を彼は作っていた。

1984年、私は初めてシャネルのクチュールショーを見に行った。一般向けの壮麗なショーはパリのオペラ座で行われたが、私が手に入れたチケットは同じ日にショーが終わってからカンボン通りのブティックで催されるものだった。服は確かにほかの誰とも違うものがあったが、少し堅苦しいという印象を受けた。しかしその後、ラガーフェルドがシャネルのために手がけたオートクチュールとプレタポルテのショーのほぼすべてを見るようになり、あっという間に魅了されてしまった。彼のアイデアは尽きることなく、見る者を飽きさせない術を心得ていた。スーパーマーケットに見立てた舞台に何百もの商品を並べ、それぞれに特別にデザインされたラベルを貼り付け、そこに最新作を身に纏った女性たちを登場させた、あのびっくりするような2014-15年秋冬の“スーパーマーケット”コレクションのように、驚くべき演出でショーの体験を再構築した。

1980s 〈右から・Siri〉ジャケット 参考商品/ANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD(ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション) 〈Amelia〉ジャケット スカート ともに参考商品/ともにBALMAIN(バルマン ジャパン) 〈Ace〉ジャケット ¥1,592,360(参考価格)/McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン クライアントサービス) 〈Alex〉ジャケット パンツ ともに参考商品/ともにLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン クライアントサービス) シューズ/LE SILLA(www.lesilla.com) 〈Stephen〉ブレザー シャツ ともに参考商品/ともにBALMAIN(バルマン ジャパン) 〈Anok〉トップ パンツ/ともにMUGLER(inter.mugler.com) シューズ/AMINA MUADDI(www.aminamuaddi.com) 〈Stephanie〉トップ ¥594,000/DOLCE & GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ ジャパン) 〈Judith〉ジャケット パンツ/ともにPRABAL GURUNG(prabalgurung.com) 〈Celina〉コート シャツ パンツ すべて参考商品 ベルト ¥39,600/すべてSPORTMAX(マックスマーラ ジャパン) 〈Milla〉ジャケット/CHARLES JEFFREY LOVERBOY(charlesjeffreyloverboy.com) バンドゥ/ELISSA POPPY(www.elissapoppy.com) 〈Iris〉ドレス 参考商品/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン) シューズ 参考商品/NINA RICCI BY HARRIS REED(イザ) イヤリング/SUSAN CAPLAN(susancaplan.co.uk) ネックレス/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com)
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ジャンニ・ヴェルサーチェも同様で、80年代後半にはマネキンのようなランウェイモデルから高級ファッション誌のページを賑わすモデルへと切り替えていった。ヴェルサーチェのショーは服を見せることよりも、服を着ているクリスティやナオミ、リンダ、シンディを見せることに重きを置くようになった。この4人のモデルが91-92年秋冬のヴェルサーチェのショーでジョージ・マイケルの「フリーダム! ’90」を口ずさんだのを思い出せば分かる通り、ランウェイでは音楽がかかり、ショーはファッション業界のイベントからカルチャーイベントへと変容した。

それから、クリスチャン・ラクロワ。彼の魔法のようなクチュールショーは45分強とあっという間だったが(サンローランのショーは2時間もあった)、私と同僚たちは皆、ドレスが披露されるたびに恍惚とした面持ちで拍手を送り、ラクロワが意気揚々と現れたときには、メゾンが私たちの椅子の上に置いてくれた深紅のカーネーションを投げ込んだものだ。おもしろいことに、私にヘルムート・ラングのことを最初に教えてくれたのは、作品も考え方もラングとは真逆なラクロワだった。私は若干困惑しながらもラングのクリエイションを見に行き、撮影用に不揃いのボタンがあしらわれたリネンのトラハトジャケットを選んだ。だが90年代になる頃には、ラングもデザイナーとしての地位を確立していた。彼のショーでは男女のモデルがロボットのようにランウェイに現れ、弾丸のように歩き去る。装飾のないシンプルな服を見せる、まったく新しい方法だった。カルバン・クラインと彼の愛妻、ケリーはそのショーを見てすっかり夢中になり、クラインも次のシーズンではまったく同じやり方で自身の手がけたウェアを発表した。かつてはスーパーモデルが華を添えたカルバン・クラインのランウェイは、髪を後ろになでつけ、ナチュラルメイクを施したクールな女性たちへと譲られた。そこにいた一人は、言うまでもなくケイト・モスである。

〈右・Siri〉ジャケット 参考商品 シャツ ¥84,700/ともにANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD(ヴィヴィアン・ウエストウッドインフォメーション) イヤリング/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈左・Milla〉ジャケット/CHARLES JEFFREY LOVERBOY(charlesjeffreyloverboy.com) バンドゥ/ELISSA POPPY(www.elissapoppy.com)
〈右・Siri〉ジャケット 参考商品 シャツ ¥84,700/ともにANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD(ヴィヴィアン・ウエストウッドインフォメーション) イヤリング/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) 〈左・Milla〉ジャケット/CHARLES JEFFREY LOVERBOY(charlesjeffreyloverboy.com) バンドゥ/ELISSA POPPY(www.elissapoppy.com)

マルタン・マルジェラの初めてのショーを見逃した私は、遠方のショールームへと急いだ。そこでは白衣に身を包んだ大勢の人々が、まるで貴重な美術品を発見したかのような熱気に包まれながら、目を見張るような作品について語っていた。マルジェラの次のショーには間に合ったが、彼の服は私には不可解で、ラクロワのつばの広い帽子の方が断然好みではあった。モデルたちも淡々とした様子で、飛び切りめかし込んでいるようには見えなかったが、作品に何とも言えない魅力があることは渋々認めざるを得なかった。やがて、ショーに押し寄せるファッショニスタたちが身に纏う彼の作品の背中に、あの独特な4本のステッチが施されているのが否応なしに目に留まるようになった。

90年代は、リー・アレキサンダー・マックイーンもまた、誘惑的というよりむしろ扇情的と言うべき奇抜なショーでシーンに殴り込みをかけ、脚光を浴びるようになった。マックイーンのショーは、何か不穏なものを感じさせた。彼の空想を具現化したものに対して、どんなハプニングが起きるのだろうと不安な気持ちになったものだ。私は20年にわたりショーに通い続けてきたが、あんな体験は初めてだった。彼はニューヨークで1996-97年秋冬のショーを再披露し、アメリカの人々に彼の最新動向を知らしめた。このショーはロンドンのクライスト・チャーチ・スピタルフィールズですでに披露されていたものだったが、激しい非難と称賛の両方を浴びていた。会場となった閉鎖されたシナゴーグに押し寄せた何百人もの人が中に入れず混乱を極める中、発表されたのはヒップが見えるほどローウエストのパンツや切りっぱなしのボディス、レースの頭巾ばかりだった。マックイーンはその後も、精神に変容をきたすようなショーを披露した。たとえば、1999年春夏コレクションでは弾むようなドレスを纏ったシャローム・ハーロウに向かってロボットがスプレーペイントを施したり、2001年春夏コレクションでは精神病院に見立てたショーを行ったり、2005年春夏コレクションではモデルをチェスの駒に見立てた「It’Only a Game」と銘打ったショーを催したりしている。

1990s 〈右から・Jill〉ドレス/GUCCI(グッチ クライアントサービス) 〈Angelina〉ジャケット ¥407,000/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ/MUGLER(inter.mugler.com) 〈Celina〉ジーンズ/Helmut Lang(www.helmutlang.com) 〈Anok〉ドレス ¥1,430,000/TOM FORD(トム フォード ジャパン) シューズ 参考商品/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン) 〈Amelia〉ドレス ¥1,980,000(参考価格)/GIVENCHY(ジバンシィ ジャパン) シューズ ¥167,200/DOLCE & GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ ジャパン) 〈Iris〉ジャケット トップ パンツ/すべてPROENZA SCHOULER(www.proenzaschouler.com) シューズ ¥149,600/JIMMY CHOO(ジミー チュウ) 〈Lulu〉ジャケット ¥938,300 パンツ ¥1,441,000(ともに参考価格)/ともにHERMÈS(エルメスジャポン) 〈Lina〉ボティスーツ(参考色) ¥114,400(参考価格) スカート ¥488,400/ともにTORY BURCH(トリー バーチ ジャパン)
〈右から・Jill〉ドレス/GUCCI(グッチ クライアントサービス) 〈Angelina〉ジャケット ¥407,000/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ/MUGLER(inter.mugler.com) 〈Celina〉ジーンズ/Helmut Lang(www.helmutlang.com) 〈Anok〉ドレス ¥1,430,000/TOM FORD(トム フォード ジャパン) シューズ 参考商品/VERSACE(ヴェルサーチェ ジャパン) 〈Amelia〉ドレス ¥1,980,000(参考価格)/GIVENCHY(ジバンシィ ジャパン) シューズ ¥167,200/DOLCE & GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ ジャパン) 〈Iris〉ジャケット トップ パンツ/すべてPROENZA SCHOULER(www.proenzaschouler.com) シューズ ¥149,600/JIMMY CHOO(ジミー チュウ) 〈Lulu〉ジャケット ¥938,300 パンツ ¥1,441,000(ともに参考価格)/ともにHERMÈS(エルメスジャポン) 〈Lina〉ボティスーツ(参考色) ¥114,400(参考価格) スカート ¥488,400/ともにTORY BURCH(トリー バーチ ジャパン)

一方、狂気的な才能を持つ(そしてしばしば挑発的な)ジョン・ガリアーノは、パリで何度か傑出したコレクションを発表していたが、コレクションをまとめるための資金がなく、1994-95年秋冬シーズンはショーを見送ろうとしていた。だが、シーズン開幕の3週間前、アンドレ・レオン・タリーはガリアーノに、もしショーをしなければ世間の関心を失い、店をたたむことになるだろうと忠告した。その言葉が耳にこびりついた彼はコレクションをつくり上げ、資金とモデル(ケイト・モス、ナオミ・キャンベルクリスティ・ターリントンヘレナ・クリステンセンリンダ・エヴァンジェリスタらが無償で駆けつけてくれた)をかき集め、17世紀に建てられたサン・シュルンベルジェの邸宅という荘厳なロケーションを確保した。その後の彼の活躍は知っての通りで、ジバンシィ(GIVENCHY)、ディオールと渡り歩いた。私はすべてのコレクションに熱狂した。彼が手がけた最初のジバンシィのクチュールショーは魔法のようなオープニングで、おとぎ話に出てくるようなマットレスの山の上に、ウォルトにインスパイアされたボリュームのあるボールガウンを着た女性たちが登場し、(DJのジェレミー・ヒーリーによる)音楽が煽情的な雰囲気を醸し出していた。さらにその後は、ディオールというすばらしい舞台を得て、ショーは回を追うごとに贅を尽くしたものとなっていた。ジョン・ガリアーノ自身の名を冠したショーもまた驚きに満ちたもので、1995年春夏コレクションでは女性たちがヴィンテージカーの中から1950年代のスーツに身を包んで登場したり、また1995-96年秋冬コレクションでは雪の積もったパリの屋根の上を歩き回ったりした。

キプロス系イギリス人のフセイン・チャラヤンのように、ファッション界に極めて知的な不思議さをもたらしたデザイナーもいた。彼がセントラル セント マーチンズを卒業したばかりの頃、私はアナ・ウィンターに指示してこの若き逸材に会いに行かせたが、もっとよく考えるべきだった。というのも、高いところにある彼のオフィスにたどり着くには屋外にある金属の格子でできた非常に危険な階段を上らなければならず、まずはウィンターにマノロのヒールは履いていくなと忠告しておくべきだったからだ。チャラヤンの広報担当者はグラスゴー出身のしゃべりだすと止まらない人間で、チャラヤンが卒業コレクションの服をどのように地中に埋めたかを非常に聞き取りにくい訛りの英語で説明した。ウィンターは彼の話を理解できず、戸惑うばかりだった。だが言わずもがな、2000年には彼女もすっかりチャラヤンに夢中になった。2000-01年秋冬のショーでは、ナタリア・セマノヴァが1950年代のコーヒーテーブルの真ん中に開けた穴の中に立ち、穴の縁を引き上げて硬いスカートのようにして身に纏うという演出で幕を閉じた。

そのわずか数年前、プラダ(PRADA)グッチ(GUCCI)ミラノ・ファッション・ウィークを二分する宿命のライバルとして登場した。1995-96年秋冬、トム・フォードは70年代にインスパイアされた衝撃的なコレクションをグッチで発表した。これを見て、私はスタジオ54でのスリリングな夜を思い浮かべた。フォードの名前はグッチの代名詞となり、ゴージャスに着飾った男女が漆黒のランウェイでスポットライトを浴びた。同シーズン、ミウッチャ・プラダは60年代風の洗練された服を披露した。すっきりとした仕立てのもので、画一的な姿のモデルたちが白いランウェイに映えた。さあ、お好きな方をどうぞと言わんばかりにミラノは盛り上がっていた。ランウェイショーは単に作品を見せる場を超え、ブランドを売り込み、ポジションを確立するための強力な手段へと進化していた。そして会場の外ではファンたちが大騒ぎし、まるでカルト集団のような盛り上がりを見せていた。当時は実際、グッチのショー会場に入るのは至難の業だったのだ。

2000s 〈右から・Ugbad〉コート ハット/ともにROBERT WUN COUTURE(www.robertwun.com) 〈Iris〉ドレス 参考商品/OFF-WHITE(イーストランド) ブーツ ¥403,700/GIANVITO ROSSI(ジャンヴィト ロッシ ジャパン) イヤリング/ÉLIOU(www.eliou.com) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈Lulu〉ジャケット ¥1,210,000 スカート ¥506,000(ともに予定価格)/ともにPRADA(プラダ クライアントサービス) 〈Alex〉ドレス/LÙCHEN(www.luchenofficial.com) 〈Lila〉スウェット 参考商品/MICHAEL KORS COLLECTION(マイケル・コース カスタマーサービス) シューズ/ANCUTA SARCA(ancutasarca.com) 〈Lina〉トップ 参考商品 パンツ ¥261,360/ともにMcQUEEN(アレキサンダー・マックイーン クライアントサービス) 〈Ennis〉ポロシャツ マスク/ともにBALENCIAGA COUTURE(バレンシアガ クライアントサービス) 〈Tomos〉トップ ¥262,900 パンツ ¥213,400/ともにLOEWE(ロエベ ジャパン クライアントサービス) 〈Kecion〉コート/VAQUERA(vaquera.nyc) ショートパンツ ¥101,200/DSQUARED2(スタッフ インターナショナル ジャパン クライアントサービス) 〈Joe〉フーディ 参考商品/OFF-WHITE(イーストランド) 〈その他〉すべてスタイリスト私物
〈右から・Ugbad〉コート ハット/ともにROBERT WUN COUTURE(www.robertwun.com) 〈Iris〉ドレス 参考商品/OFF-WHITE(イーストランド) ブーツ ¥403,700/GIANVITO ROSSI(ジャンヴィト ロッシ ジャパン) イヤリング/ÉLIOU(www.eliou.com) バングル/ALEXIS BITTAR(www.alexisbittar.com) バングル/DINOSAUR DESIGNS(www.dinosaurdesigns.com) 〈Lulu〉ジャケット ¥1,210,000 スカート ¥506,000(ともに予定価格)/ともにPRADA(プラダ クライアントサービス) 〈Alex〉ドレス/LÙCHEN(www.luchenofficial.com) 〈Lila〉スウェット 参考商品/MICHAEL KORS COLLECTION(マイケル・コース カスタマーサービス) シューズ/ANCUTA SARCA(ancutasarca.com) 〈Lina〉トップ 参考商品 パンツ ¥261,360/ともにMcQUEEN(アレキサンダー・マックイーン クライアントサービス) 〈Ennis〉ポロシャツ マスク/ともにBALENCIAGA COUTURE(バレンシアガ クライアントサービス) 〈Tomos〉トップ ¥262,900 パンツ ¥213,400/ともにLOEWE(ロエベ ジャパン クライアントサービス) 〈Kecion〉コート/VAQUERA(vaquera.nyc) ショートパンツ ¥101,200/DSQUARED2(スタッフ インターナショナル ジャパン クライアントサービス) 〈Joe〉フーディ 参考商品/OFF-WHITE(イーストランド) 〈その他〉すべてスタイリスト私物

アメリカでは、ショーのフロントローは単なるバイヤーやファッションエディターの代わりに、女優や社交界の名士で埋め尽くされるようになった(後にこうしたスターたちは出席する見返りに報酬を得るようになった)。フロントローのゲストたちは午前中のショーにイブニングドレスで参加することもある(靴はランウェイで披露されたばかりのものだ)。2000年代前半のティンズリー・モーティマーなどが好例だ。2008年の秋頃には、ファッションブロガーたちがただショーに出席するだけでなく、たとえばドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)のショーなどではフロントローに陣取るようになった。私はこの状況に驚きを禁じ得なかったが、一呼吸置いてから、彼らが果たした役割を考えた。そうだ、彼らは何百万人ものファッション狂のキッズたちとつながっているのだ。2018年10月、ヴァレンティノ(VALENTINO)と当時のデザイナー、ピエールパオロ・ピッチョーリがファッション関係のプレスを東京に招いて最新のリゾートコレクションを披露したとき、ブロガーたちには従来型のメディアのジャーナリストや私とはまったく異なるヴァレンティノの担当者が付いていた。彼らはヴィジュアル主導の体験をつくり上げるのに長けており、それをデジタル・ジャーナリストがリアルタイムで再現するのだ。それにはなんとも興味をそそられた。間もなく、スコット・シューマンやフィル・オーのようにストリートスナップを得意とするフォトグラファーたちが、ショーに向かうインフルエンサーたちを撮影するようになった。こうして、会場に集まる市井の人々がランウェイに登場するものよりも重要であるかのようにさえ感じられるようになった。

今はありとあらゆるショーに足を運ぶことができる。モデルたちが蒸気機関車に乗って華麗なセットに登場したマーク・ジェイコブスによる2012-13年秋冬のルイ・ヴィトン、しかめ面をした屈強なダンサーたちをキャスティングした2014年春夏のリック オウエンス(RICK OWENS)、ユーモラスなメンズウェアを披露したジョナサン・アンダーソン率いるロエベ(LOEWE)の2024-25年秋冬ショー、セントラル セント マーチンズの最終学年のプレゼンテーションなどなど。だがファーストルックがランウェイに登場するのを目の当たりにする瞬間は、いつも刺激的で、革新的で、啓示的だ。今は何千人もの人々が、自宅やオフィスでくつろぎながら同時にショーを見ていることは周知の事実だ。だがそれでも、ショーの現場には触れたりその場の空気を味わったりすることで感じられる、何とも形容しがたいものがある。魔法のような何かが押し寄せてくるのが感じられるのだ。どれほどくたびれ果てていても、会場にたどり着くのがどんなに大変でも、ファッションに対して消耗していたって、苦にならない。生で見るショーは格別なのだから。

Styled by Ib Kamara Hair: Eugene Souleiman Makeup: Karin Westerlund Manicure: Ama Quashie Models: Ace Rahman, Alex Consani, Amelia Gray, Angelina Kendall, Anok Yai, Ennis Ansah, Celina Ralph, Iris Law, Jawara Alleyne, Jill Kortleve, Joe Bates, Judith Watt, Kacion Mayers, Lila Moss, Lina Zhang, Lulu Tenney, Lux Gillespie, Milla Freya Walker, Phoebe Shardlow, Siri Castres, Stephen Issac-Wilson, Soyeong Jang, Stephanie Odonkor, Tomos MacDonnell and Ugbad Abdi Produced by Erin Fee Productions Set Design: Samuel Overs Tailor: Michelle Warner

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