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『極悪女王』は“嫌われ女”3人の逆襲か。ゆりやん、剛力彩芽、唐田えりかが必然だったワケ

  • 2024.10.5

ゆりやん、剛力彩芽、唐田えりかの共通点

(C)日刊ゲンダイ
(C)日刊ゲンダイ

9月19日にNetflixでドラマ『極悪女王』(全5話)が配信開始されました。ゆりやんレトリィバァさん演じるダンプ松本を中心とし、1980年代の女子プロレス界を描いたこの作品は、事実に基づいたストーリーもさることながら、出演する俳優たちの体当たり演技が話題を呼びました。

メインとなったゆりやんレトリィバァ、剛力彩芽、唐田えりかの3人。筆者は、彼女たちだからこそ出せた説得力があるように感じるのです。

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メインキャストを演じた「嫌われ女」たち

『極悪女王』では、ヒールレスラーとして日本の憎まれ役となったダンプ松本をゆりやんレトリィバァさん、アイドルレスラーとして一世を風靡した“クラッシュ・ギャルズ”の長与千種を唐田えりかさん、ライオネス飛鳥を剛力彩芽さんが演じました。

この3人はオーディションで選ばれたということですが、偶然か必然か、彼女たちは皆、誹謗中傷や嘲笑の的であった過去があるという共通点があります。むしろ、この作品が公開される9月19日まではそんな世間の空気感に晒されている状態でした。

(C)日刊ゲンダイ
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ゆりやんレトリィバァさんは、芸人デビューからして鮮烈でした。2013年に養成所(NSC大阪)を首席で卒業したと思えば、すぐにレギュラーが決まり、2015年には『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)でも決勝進出し3位に。2017年には『NHK上方漫才コンテスト』(NHK)、『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)で優勝、2021年には『R-1グランプリ2021』でも優勝を果たしました。

その反面、スピード出世による妬みからか「鼻につく」などという意見や、バカバカしさがありながらもマニアックな芸風ゆえに、それを理解できない視聴者からの「全然笑えない」「寒い」などという厳しい評価に晒されていました。

『THE W』『R-1』優勝も批判された、ゆりやん

なかでも2020年の『THE W』では、優勝本命だったAマッソに対し、サザエさんのカツオに扮したバカバカしいネタで勝利した際のSNSでの誹謗中傷は酷いものでした。審査員や芸人仲間からはネタに対し称賛の声が上がったものの、視聴者からは「出来レース」「セットが豪華で贔屓された結果」などという意見が連発。

『R-1』で圧倒的な力を見せつけて優勝した際も、その年から芸歴制限がかかったことにより「実力あるライバルがいなくなったから取れた」「ゆりやんに獲らせるための制限」などという批判が目立ちました。今後の海外進出の目標についても、「身の程知らず」など疑問視する声も多数存在しています。

剛力彩芽、唐田えりかもバッシングの標的に

(C)日刊ゲンダイ
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剛力彩芽さんは、2011年1月に出演した月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)でのセンセーショナルな登場が、いまだ筆者の記憶にあります。彼女のキラキラ感は、豪華な主要キャストを差し置いてテレビ関係者や雑誌編集者、ライターの中でも当時話題になっていました。

しかしその業界評価の高さゆえか、急激に露出が増えてしまったため、視聴者に「ごり押し」の悪印象を与えてしまう結果に…。また、会社経営者との交際も世間からの反発の対象になりました。

唐田えりかさんは、ソニー損保のCMで透明感とその名を知らしめたのち、濱口竜介監督の映画『寝ても覚めても』でオーディションの末、ヒロイン役を勝ち取りました。映画の評判は高く、彼女自身も山路ふみ子新人女優賞やヨコハマ映画祭 最優秀新人賞を受賞。女優として順調な歩みを見せていましたが、その映画で共演した東出昌大との不倫が発覚し、バッシングの標的になりました。

人気女優には出せないリアリティ

(C)日刊ゲンダイ
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『極悪女王』は、見た人誰もがゆりやんさん、剛力さん、唐田さんのリアルを越えた熱演に心を奪われたことでしょう。リングの上で血まみれに戦う彼女たちの苦悶の姿は、「ここまでするのか?」という俳優魂を感じました。

身体の曲線露わなレオタードに身を包んだ、下品で暴力的な描写も多い女子プロレスラーの役――ただそれだけ聞けば、名のあるトップ俳優は避けたいと思うかもしれません。実際、この作品には目を背けたくなるような暴力的で残酷な描写が多くあります。だからこそ、オーディションに臨み、体重を増やし、長い時間身体づくりに取り組んだ彼女たちのこの作品における覚悟は相当のものだと想像できます。

もし、この主要キャストが好感度高く、将来を期待されている旬の女優さんが演じていたのだったらどうだったのでしょうか?

例えイメージ的にピッタリで「本人の希望」だとか「オーディションで選ばれた」などという事前情報があったとしても、見る側に不安を与えかねません。「かわいそう」「本人はこの役を望んでいなのではないか」「ここまでしなくてもいい」「事務所や監督に強要されている」…そんなお節介なノイズがはいってしまったでしょう。

壮絶なシーンに熱い感情を呼び起こす

(C)日刊ゲンダイ
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しかし、自他ともに認める崖っぷち、あるいは演じる覚悟と理由の見える3人がそんな役柄を熱く演じることで、「自ら望んでこの役に向き合っている」という十分な納得感が生まれています。他のキャストもそう。無名な俳優さんがほとんどゆえに、この作品に向き合う本気度を感じ取ることができました。

恐ろしい攻撃や壮絶なリングシーン、顔をゆがめた汚れ演技も、直視できるものになっているのです。演技力もあるでしょうが、リングの上で戦う彼女たちを「かわいそう」とは全く思いません。彼女たちのこれまでの歩みが雑音を消し、「もっとやれ!」「がんばれ!」とあたかも当時の観客のような熱い感情を呼び起こしてくれるのです。

過度なバッシングも糧にした3人

(C)日刊ゲンダイ
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考えてみれば、嫌われものといえど、ゆりやんさん、剛力さんについては全く本人に非はありません。多くはその才能や、恵まれた環境へのやっかみとも呼べるもの。唐田さんについては、不倫は許されることではないにせよ、相手にも非があり、当時19歳と未熟さゆえの若気の至りと考えれば当時のバッシングや仕事への影響は過大な罰にも見えました。

一方、このお騒がせトリオが集結したことで、作品に注目が集まったことも事実です。思い返せば撮影中も彼女たちはゴシップの種になり、何かあるたび(何もなくても)たびたびこの作品の名が報道されていました。それによって『極悪女王』が人々の脳裏に刷り込まれ、視聴意欲をかきたてたと言っても過言ではありません。

世間の雑音で過小評価やダメージを負った彼女たちが、この作品で注目され輝きを見せつけているのは、世間の雑音があったからこそ、というのは運命の皮肉ですね。この作品をばねにして、さらに羽ばたいていってほしいと思います。

(小政りょう/ライター)

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