9月28日(現地時間)に行われたコム デ ギャルソンのショー会場は、同日の昼に開催されたノワール ケイ ニノミヤのショーと同じ建物の別のフロア。廃墟のような空間の中央に白いランウェイが設置してあった。
神秘的な音楽が鳴ると、ネズミの耳のようなヘッドピースを付け、ドレスを纏った全身白のモデルがゆっくり歩いてくる。クリームやケーキを思わせるフォルムも。
中国風の柄を用いたアイテムもある。
何かのキャラクターにも見えてくるルックに続き、血飛沫のような表現もあり、再び全身白で締め括った。
テーマは「不確実な将来」。「世界で起こっているさまざまなことに対して空気感と透明性で立ち向かうことはある種の希望を意味するかもしれない」という言葉が付け加えられており、「それを表現するために透明感のある素材を使用した」という。
ヘッドピースとタップシューズのペイントはコム デ ギャルソンにパタンナーとして在籍した経験もある22世紀ジェダイ /門倉太久斗が手がけ、白のブーツとダービーシューズはフィレオと、プラットフォームのメリージェーンはサロモンとコラボレーションしている。
実物を間近で見ると冒頭の白いルックはコーティングされていて硬いのだが、確かに透ける素材が多用されている。そこからうっすらと見えるプリントは、難民キャンプや環境問題に対するスローガン、山積するゴミの写真だった。
そして音楽は1970〜80年代環境活動家だったジョン・ルーサー・アダムズによる弦楽四重奏曲。彼は地球の状況や人類の未来に対する深い懸念が創作意欲となっているという。
ウクライナ危機が勃発した直後の2022-23年秋冬から世界の状況に対しての想いをテーマに込めることが多くなったデザイナーの川久保玲。昨年からのパレスチナ・イスラエル戦争や環境問題など、いっこうに平穏が訪れない日々に対し、先シーズンは怒りを露わにしていた。しかし、今年6月に発表された2025年春夏コム デ ギャルソン・オム プリュスは「THE HOPE OF LIGHT」がテーマ。ピンク、フリル、プリーツ、透ける素材といった一般的に甘さを感じさせる要素を「ほんの少しの明かり」として用いていた。そして、今回も「透明性」に希望を宿している。
問題とされている具体的な事象のプリントを用いるなど、珍しく直接的な表現をしているのは、より危機感が高まっているからか。ファッションという立場からもメッセージを投げかけ、そしてそれを伝えねばならない、という強い意志を感じ取ったのだった。
※ コム デ ギャルソン 2025年春夏コレクションをすべて見る。
Photos: Courtesy of COMME des GARÇONS Text: Itoi Kuriyama
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