長かった猛暑の夏もようやく終わり、涼しい風が吹き始めました。そろそろ、翌春に向けて花壇やガーデンのデザインを考え始める季節です。もっとシンプルに、バルコニーに新しい寄せ植えを作るだけでもいいですね。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、夏のガーデンエピソードとともに、来春に向けた宿根草の庭づくりのポイントを解説します。
収穫を存分に楽しんだ夏の家庭菜園
今夏の庭の楽しい思い出は、なんといってもガーデンの恵みを収穫して味わったこと。特に印象に残ったのは、その大きさから1週間近くも楽しむことができたスイカです。背の高い雑草に隠れてその成長になかなか気づかなかったことも相まって、嬉しいサプライズでした。
サプライズはほかにも。ここ数年分の余っていた種子を、棚に戻して取っておきたくなかったため、適当に庭に播いたところ、予想以上にちゃんと成長してくれました。特にオクラとモロヘイヤは、乾燥にも、多湿にも、嵐のような気候にも耐えてよく育ちました。驚きです!
モロヘイヤはどんどん摘んでも、次に見に行くときにはまたもりもりと茂っていて、たっぷり収穫できました。ほんの一口ではなく、大さじ2~3杯分ぐらいを一度に食べられるのは家庭菜園の嬉しいところ。鰹節と醤油でいただいたり、冷やし中華の具材にしても美味しかったです。たまにバッタが食べた穴はありましたが、アブラムシもアオムシもつかず、育てやすい葉物野菜でした。
一方オクラは大きく育ったものの、種まきのタイミングが遅すぎたため、いまだに実を付けるほど充実していません。収穫できないか、できてもとても遅い時期になってしまうでしょう。雑草の下には、どうやってかは知りませんが、夏を越えたジャガイモも育っています。これも食べられる嬉しいサプライズです。
夏にとてもよく育ったサトイモも、9月に収穫を開始。本来の収穫期は10~11月なので、まだイモは小さいですが、味見のために一部を早めに収穫してみました。サトイモは収穫の楽しみはもちろん大きな葉も素晴らしく、庭に日陰を提供してくれる植物です。
最近のヒットはつる植物
この夏のお気に入りの庭シーンは、カキの木に絡むヘチマの大きな黄色い花。夏空の下で黄色い花が咲く姿は、とてもエキゾチックでトロピカルでした。
最近、つる植物がとても気に入っています。油断するとすぐに育ちすぎるにしても、素敵なシェードとたっぷりとした緑を提供してくれます。
ここでつる植物の役割を果たしたヘチマは、食用として育てられる地域もありますが、私の場合はタワシとしての利用しかしていません。乾燥してスカスカになったタワシは面白い音がしてとても軽いです。ヘチマをたくさん収穫したので、これからのタワシ作りの成果が楽しみ。友人へのクリスマスプレゼントにもいいかもしれませんね!
このような自宅で育てたオーガニックなものは、ギフトにおすすめ。とても喜ばれますよ。ちなみに、ドイツでは、風邪の後に回復を早める薬にもヘチマが利用されています。
秋は翌年の庭づくりに向けた準備のシーズン
翌年に向けて新しい花壇のデザインや、ガーデンやバルコニーの模様替えを準備するにあたって、よく考えておくべきことがあります。ナーセリーやガーデンセンターをいくつか回ってみるとよいアイデアを得ることができますが、それは一時のみの姿であることに注意。花が咲いていない株や小さなポット苗が、ピークにはどのように育つかを想像するのは難しいものです。園芸店にお買い物に行き、苗を購入する前に、庭の環境やどのようなガーデンをつくりたいかをしっかり計画しましょう。
宿根草の庭づくりのポイント
宿根草ガーデンは、多くが霜の降りる冬に休眠する宿根草で構成されたガーデンです。宿根草は植えっぱなしでも毎年春に芽吹きますが、数年経ったら株分けや植え替えが必要なことを覚えておきましょう。また、宿根草には非常に多様な種類があり、それぞれについてどんな環境を好むかを把握しておくことが大切です。宿根草の庭づくりで考慮すべきポイントには、次のようなものがあります。
植栽場所の決定と植栽環境の把握
宿根草を植えるための最初のステップは、庭をつくる場所を選び、選んだ場所を調査すること。日向/半日陰/日陰、湿った土/乾いた土、土壌のpHなど、その場所の環境を把握しておきましょう。宿根草にはそれぞれ個性があり、日向を好むものもあれば、日陰を好むものもあります。また湿った環境を好むものもあれば、乾燥した環境を好むものもあります。それぞれの個性を知り、よく理解することが最も重要です。
何を植えたいか
カタログなどを参考に、カラーコンセプトを決めましょう。新しい花壇や寄せ植えのテーマを決めることも大切です。こうしたテーマを決めておくと、いろいろなことが決めやすくなります。
植物はすべて同じ高さに揃えるのではなく変化をつけます。基本的には3段階、背の高い植物、中くらいの草丈のもの、そして地面を覆い隠すようなグラウンドカバープランツがあるとよいでしょう。背の高い植物は背景に向き、花壇や寄せ植えにしっかりとした構造を作ってくれます。草丈の低いものは中ほどや手前に植えるとよいでしょう。それから球根も忘れてはいけません。
長く楽しむためには、開花期が早いものから遅いものまで入れるようにし、また冬も彩りを保つ常緑の多年草も取り入れるのがおすすめです。
カラーテーマの設定
カラーテーマを設定することは、大いに助けになります。その際にクリアすべきポイントは、一年中楽しめる花の組み合わせを見つけること。色と言っても、必ずしも花色を意味するわけではありません。葉色も重要ですし、季節によって色が変わることもあります。カラーリーフや春の球根花、紅葉など、いろいろな素材を使って、一番好きな色や、暖色、寒色、パステルカラーなど、好みの組み合わせを探しましょう。組み合わせにこだわる必要は無く、単色で設定してもOKです。青と銀色の組み合わせなども素敵ですよ。
見頃を決める
何月に開花のピークを持ってくるかを決め、植物を選びましょう。理想的には、その時期に開花期を迎える花が植栽の80%程度を占めるようにします。また、グラスは全体の30%以下になるように抑えたほうが、植栽が単調になってしまう危険を回避できます。
宿根草を健全に育てるポイントとデザインアイデア
宿根草を選んだら、いきなり地面に植えていくのではなく事前に準備しておくと失敗がなくなります。
土の準備
土壌の準備は、植物を健やかに育てるためには欠かせません。まずは植栽場所の雑草を取り除くことから。次いで植物性や動物性の堆肥として、腐葉土や馬糞、牛糞などを投入し、土壌環境と肥料分を改善します。こうすることで、植物が順調に成長し、根付くまで栄養を与えることができます。
植栽する際のポイント
植栽のコツとして、同じ種類の植物を 3 つずつグループにまとめて配置すると、大きな塊のように見えます。必ずまとめて植えなくてはいけないわけではありませんが、ランダムに点在させるよりも見栄えがよくなるおすすめの手法です。
また、ミックスボーダー花壇はナチュラルな反面、少し乱れた印象になりがち。そこで植栽を区切るように植物を植えて境界線を作ったり、花壇の前面に植栽をしない空白のスペースを用意してコントラストを演出するのがおすすめです。境界線とする植物は十分に密に植え、線が細すぎたり狭すぎせず、はっきりと分かるようにしましょう。
苗を購入する際は、質問に答えられる専門の販売員がいて、役立つヒントももらえる園芸店で購入するようにしましょう。地元の気候に合った、しっかりとよく育ったものを選ぶと安心です。
風よけの設置
風よけも健全な生育に役立ちます。例えば、木製フェンス生け垣は風除けとして有効です。生け垣であれば、刈り込んだり、自然のままにしたりと形の変化が楽しめますね。
宿根草の組み合わせ例
まず、秋の雰囲気に合うおすすめの植物の組み合わせ例をご紹介しましょう。
例えば、ススキ、赤いダリア、背の低いシルバーリーフプランツ、レースフラワーやニンジンなどの繊細な葉の植物などを合わせた植栽。スティパ・ギガンテアと赤や白のエキナセアを、白のエリンジウムやポテンティラ、ベンケイソウなどと合わせるのもおすすめです。ベンケイソウやエリンジウムは、昆虫たちにもやさしい花です。トリカラーの花合わせとしては、赤やピンク、白のコスモスと、青や赤のサルビア、そしてグラス類を合わせても素敵ですね。
ほかのシチュエーションとして、乾燥に強い植栽にするならガウラを背の高いグラスやベンケイソウと組み合わせても。ピンクのガウラはバタフライガーデンにもぴったりです。日陰の庭なら、日陰を好む宿根草として、ギボウシ(ホスタ)、ヒューケラ、フウチソウ、ニシキシダ、ベゴニア、ブルンネラ、ポレモニウムなどを活用するとよいでしょう。また、グラス類はボーダーの印象をドラマチックに変えてくれる素材。グラスの多くはシードヘッドもとても魅力的です。
宿根草ガーデンのメンテナンス
宿根草を植え付けたら、根付くまではしっかりと水やりをし、また乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。土の表面を覆うマルチングをすると、土壌の乾燥を防ぎ、雑草を抑制することができます。マルチングに使う素材は干し草やワラ、ウッドチップなどさまざまです。
植物が成長してきたら、成長しすぎたものを刈り込み、ほかの植物のスペースを確保するなどして調整しましょう。
ガーデニングは終わりのない物語です。季節の移ろいをそのまま映し、植物たちはしばしば想像とは異なる様子に成長します。新しい花壇や寄せ植えにしても、初めはうまくいっているように感じても、後でがっかりすることもあるかもしれません。私たちは植物から多くを学びますが、どんな組み合わせも新しいチャレンジなのです。
もし最終的に植えたものが気に入らなかったら、次のシーズンにやり直して改善しましょう。こうして庭づくりは、一年一年よくなっていくばかりなのです。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -
エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。