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石破氏が首相就任した今考えたい『選挙、誰に入れる?』。 “政治アレルギー”でも読みやすい、今の日本を考えるための本

  • 2024.10.3
ダ・ヴィンチWeb
『選挙、誰に入れる? ちょっとでも良い未来を「選ぶ」ために知っておきたいこと』(宇野重規:監修/Gakken)

10月1日、自民党の新総裁・石破茂氏が第102代総理大臣に選出された。同日には新閣僚名簿も発表され、石破内閣が発足。だがその1日前の9月30日には、10月27日に解散総選挙を行うと宣言もされていた。“政治とカネ”の問題が日々報じられ、国全体で政治不信が高まっている今、「次の選挙では投票に行こう!」と呼びかける声も目立つようになってきた。

ただ、「○○党に投票しよう(or ○○党には投票するな)」という声に触れても、「どこに投票するかは自分で決めたい」と感じる人は多いはずだ。

そして、自分で投票する候補者や政党を選ぶためには、社会のことを理解し、理想とする未来について考えることが必要となってくる。その手助けになると感じた本が、『選挙、誰に入れる? ちょっとでも良い未来を「選ぶ」ために知っておきたいこと』(宇野重規:監修/Gakken)だ。

本書を監修するのは、東京大学社会科学研究所教授の宇野重規氏。政治思想研究の大家といえる存在だが、内容は決して難しくなく、文章には総ルビ(振り仮名)が振ってあるので、中学生でも十分に読むことができる。

そして本書は、「税金」「社会保障」「エネルギー」「給与」「多様性」「選挙のあり方」など、投票先を考えるうえで知るべき様々なテーマを、豊富なデータ・図解を交えて解説している。「政治にあまり感心がないけど、次の選挙については真剣に考えてみたい」という大人にもピッタリの内容なのだ。

“政治アレルギー”がある人にこそ読みやすい内容

本書には日本の政党や政治家の名前は特に出てこず、取り上げるテーマにも党派性は感じない。上に挙げた「税金」「社会保障」「エネルギー」といったテーマも、「日本の各党の主張はこうです」といった紹介はしておらず、国際比較のデータを多く取り上げることで、「日本はどの国のような未来を目指すべきか?」を自然に考えやすい構成になっている。

そうした海外のデータの紹介の仕方も、非常に中立性や公平性を感じるものだ。

たとえば医療費の項目では、同じ盲腸という病気になっても、日本では9万円の自己負担が必要なのに対し、イギリスでは全額が公的医療保険で支払われる……というデータが紹介されている。しかし、イギリスの制度を礼賛して終わりではなく、「イギリスでは診療を受ける病院を自由に選べず、どんな怪我や病気でも診察まで時間がかかるケースがある」といったデメリットにも触れている。

また日本では賛否が分かれる「憲法改正」というテーマについては、憲法の大切さを「人権」や「立憲主義」といった言葉を使いながら、まず丁寧に説明。そのうえで、第二次大戦後の各国の憲法の改正回数のデータを提示。ドイツの67回、フランスの27回といった数字に対して日本の「0回」が、かなり特殊なものであることが分かる内容となっている。

「女性の国会議員の割合」も、多くのメディアでは「日本は女性の比率が低すぎる」という論調が最近は主流で、女性議員が多い国のデータばかりが取り上げられがちだが、本書を読むと「インドやブラジルも日本と比率は同じくらい(いずれも10%台)」「アラブ首長国連邦は男女の比率がキレイに半々」といった興味深い実態も知ることができる。

つまり、「進んでいる国はこうだから、日本もこうすべきだ」といった押し付けがましいデータの使い方をしていないのだ。

ただ一方で、「日本は先進国の中では最も貧困率が高い」「日本の給与が上がらない理由」といった日本の重要な社会問題については、キチッと項目を設けて丁寧に解説している。そのバランス感が非常に良い本といえる。

本書を頭から読み通しても、「誰に投票するか」「どの政党に投票するか」は、読んだ人によって変わってくるだろう。実際、筆者はかなり明確に「支持したい政党」「支持したくない政党」が決まっているタイプだが、「この本を読んだ全員が自分と同じ政党に投票するとは限らないだろうな」と感じたし、「それでもこの本は多くの人に読んでもらいたい」とも感じた。

この本には、「読者を信頼して、読者自身に“誰に入れるか”を選んでもらおう」というスタンスが感じられる。だからこそ本書は“政治アレルギー”がある人や、これまで政治に関心を持ってこなかった人にこそ読んでほしい。選挙権を手にしたばかりの若者や、これから手にする子供へのプレゼントにもオススメしたい1冊だ。

文=古澤誠一郎

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