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鳥居みゆきさん、43歳にして「やっと自分を見ることが嫌じゃなくなった」 理由とは

  • 2024.10.2

お笑い芸人としてだけでなく、俳優や小説家、絵本作家としても活躍している鳥居みゆきさん。その一方で、周りからは「変なやつ!」と言われ続け、幼少期からずっと生きづらさを抱えてきました。その鳥居さんが43歳にして、やっと自分の存在意義を見出し、「透明だった自分に色がついた」と言えるようになったのは『でこぼこポン』の出演がきっかけだそう。一つ一つの言葉に心を打たれる鳥居みゆきさんのお話です。(第3回/全4回)

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鳥居みゆきさんprofile

お笑い芸人・俳優。1981年、秋田県生まれ、埼玉県育ち。2008年、2009年の『R-1ぐらんぷり』で決勝に進出し、白いパジャマ姿で両手にはマラカスやくまのぬいぐるみという“マサコ”のキャラクターで人気に。日本テレビ系ドラマ『臨死!!江古田ちゃん』では主演を務めるなど、女優としても活躍。2009年に小説『夜にはずっと深い夜を』、2012年に『余った傘はありません』、2017年には絵本『やねの上の乳歯ちゃん』も発刊。

NHK Eテレの『でこぼこポン!』へのオファー

『でこぼこポン』は、発達が気になる子を楽しくサポートする、Eテレの特別支援教育番組。でこりん役のオファーが入った当初は、やっぱり私が変だから?と。嬉しかったけれど、変と思われているから頼まれたのかな?意地悪チョイスなのかな?って。けれども、そんなことは全くありませんでした。番組の方に、「でこりんは、大人でも子どもでもない天真爛漫なキャラクターだけど、苦手なこともあって、そうした、さまざまな困難を乗り越えていくお話です」と言われ、私が常に苦しんでいることと全く一緒だし、それを克服していない人間が演じて大丈夫なのか?とは思いましたが、いざ、スタートしてみると、番組を作っている人はみんな優しいし、気取っている人もいないし、一緒に学んで成長しようっていうノリ! そして、でこりんになってみて初めて、こういうことだったのか…と自分の気持ちや行動を理解できたことがたくさんあり、自分の苦しみが浄化されたように思いました。私が普段悩んでいたことは、結構みんなにもあるってことも分かりましたし、それを演じたら、視聴者からも同じような反応が返ってくるようになりました。

この間は、“自分の思い通りにならないときに、でこりんは大きい声になってしまう”という回だったのですが、そういうことは私にもあって、でも理由が分からなかったんです。でこりんの場合は、何かを間違えた時に声が大きくなるけれど…うーん、私とは違う、あ、わかった! 私の場合は、100%自分が正しいと思った時だ! 周りが違って、「自分が正しい」と思う時に大きい声になるんだ! と。この前もすごい大きい声が出ちゃった時がありまして。ラッシュの電車で、「とびら閉まりまーす」って何度も何度も繰り返して、その度に駆け込み乗車も繰り返されて…「駆け込み乗車おやめくださ〜い」っていうけれど、扉が閉まるのが遅いんですよ。とっさに、「閉めて!今!」って叫んじゃった。そのタイミングで、シューって扉が閉まったのですが、声が大きすぎたからか、電車内でエコーする自分の声に、ハッとして本当に恥ずかしくなりました。声をだしている時はなんとも思わないんですよ…気づいたら口から出ちゃう。わぁ、自分に答えが出るとスッキリしますね。

自分の困難との付き合い方がわかってくると生きやすくなる

学生時代、パニックになることがしょっちゅうありました。リスニングテストが苦手で、途中で聞き逃すともうダメで…「もう一回お願いします」って叫んじゃう。他の子達からは「うるさい!」って白い目で見られていました。先生はわかっていたのかもしれません、私が耳で聞いたことを理解できないってことを…。「鳥居さんだけ別室でやろうか」と、紙で補助もしてくれました。このことを理解したのは最近なんです。人の名前も耳で聞いても覚えられないけれど、名刺の字を見たら一発で覚えられますし。診断を受けることがあれば、学習障害と言われるのかも。モヤモヤしていたのが晴れました。

あと、音楽も苦手です。もう、音楽って私を置いてきぼりにするんですよ!メロディが流れたら、そのリズムの枠に歌詞をはめ込まなければいけない焦りと、巻き戻せない焦りが混在します。速度とかタイミングとかが決まっているものに自分が参加していくものが苦手なんです。なので、スキーのリフトとか観覧車も乗れません。長縄跳びも苦手…。自分のタイミングで行きたいのに、他人が作った人工的なタイミングに合わせるのが無理なんです。でも、こうして一つ一つ自分の苦手なことに向き合っていって、でこりんの発明品のように、苦手なことを克服できるツールが見つかると、とても生きやすくなる!とわかったのも、番組に携わったおかげだと思っています。

“資格を取得したおかげで、世界がもっと広がった

もっと知識が欲しい…番組に深く関わるために、また保護者からの話ももっと理解したい気持ちもあり、児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーターの資格をとりました。久々の勉強だったので勘を取り戻すのに苦労しましたが。これをとったことで「実はうちの子ども発達障害なんだよね」と、こっそりカミングアウトしてくれる先輩が増えました。全然そういう話を芸人同士ではしないから、周りは知らないんだと思います。みんな話したいことがなかなか話せないというんです。カウンセリングとかだと、真面目に、うちの子こういう時にこうしましたとかいう会話になるし、ママ友やパパ友とかになると隠してしまったり、同じ自閉症の子でも困難さの種類も度合いも異なるので「同じだよね」という気持ちで話せはしないらしくて。だから本当に気軽に「うちの子ずーっとこの行動繰り返すんだよ、むっちゃ可愛くない?」とか、そういうノリで話せる人が欲しかったって言っていました。そんな大変じゃないじゃんって思われるのも嫌だし、うちの子のほうが軽いわって思うのも…。子育てが大変ということよりも、子どもの「これかわいいよね、こうなっちゃうのが変なんだよねー」とかを話したかったっていうんです。この、芸人の先輩とかから出てくる「変」って言葉はポジティブな意味なんですよね。いい世界だなーと思います。「変っていうのやめてよ」とかならないし、明るく「そうなんだよね、そこ変なんだよねー」って。気軽に心を出してくれる会話をしてもらえるようになったんですよ。今までは鳥居みゆきという芸人と、先輩という関係上、気を遣って接していた部分はあると思うんですけど、資格を取得したことで、結構深く話してくれるようになりました。今まで表面的だったものがすごく深い部分で繋がるようになり、そういう関わり合いが私にとっても救いとなっています。

“まるでカメレオンの主張!私はこういう色だよって色を出し始めました

最近、自分に色がついたみたい。嬉しいんです。私が出した色を見てくれたんだーって。“鳥居みゆきってこうだよ”って、私が自ら違う色を出したら、その違う色を快く受けとめてくれて、喜んでくれる人たちがいてくれる。今やっと、ちゃんと鏡も見られるようになりました。本当に鏡が嫌いで、家の鏡には布をかけて隠し、服のバランスとか顔とか見たいときには、電子レンジに反射させてました。でも本当に最近、自分と向き合えるようになったからか、鏡の布を外せるようになりました。自分を見ることが嫌でなくなったんです。自分がやった仕事も見返すことができなかったけれど、最近、テレビをつけて『でこぼこポン』をやっていたら、少しなら観られるようになりました。ちらっと指で目を隠すようにはしちゃうんですけどね。ちょっとずつ自分が自分として存在しているというのを、自分が認めてあげ始めてきたという感じです。今まで誰かに褒められても他人事でしたしね。今日の撮影ですが、モニターチェックしたの、実は生まれて初めてです。チラッとですが(笑)今までそんなことしたことありません。チラッとでも見ることなかった。

どんどん変わります。透明な人間に色がついてきたような…今までは「枠」だけだったので。自分の中から色がついてきたので、人につけられた色じゃなくて、自分が自分でいられるために、色を出し始めたという感じ。43歳でここから!まるでカメレオンの主張みたいな感じですね!。今まではなんとなく気づかれないように同化させようとしていたけれど、カメレオンがカメレオンとして、自分はこういう色だって、いま色を出し始めた感じです。

撮影/森脇裕介 ヘア・メイク/RYO 取材/竹永久美子

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