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夏子の部屋 ゲスト:スカイスクレイパー代表・西牧大輔、新社長・諸沢莉乃 経営者の必要条件って何ですか?

  • 2024.10.2
夏子の部屋 ゲスト:スカイスクレイパー代表・西牧大輔、新社長・諸沢莉乃 経営者の必要条件って何ですか?
テーブルで食事をする庄司夏子、西牧大輔、諸沢莉乃

社長に経営資質は必要ない

笑顔の諸沢莉乃
諸沢莉乃さんは、15歳のときにアルバイトとしてスカイスクレイパーがフランチャイズ経営する〈CoCo壱番屋〉で働き始める。

庄司夏子

18歳くらいの若い女性でも仕事量に応じて、お給料もどんどん上げていくのが〈été〉の経営方針ですが、世間的にはそうした価値観はまだまだ浸透していない。私自身若い女性だからというだけでオーナーシェフということに驚かれたり、「パトロンがいるのではないか」など根拠のない臆測による心ない言葉を受けてきました。

銀行からの融資調達にも苦労しましたしね。そういう意味でも、当時22歳だった諸沢さんがアルバイトからいきなり社長へ抜擢されたニュースは、すごく興味深いと思いました。

西牧大輔

私たちが経営するスカイスクレイパーでは、年齢や性別、キャリアなどにかかわらず、意志がある人にチャンスが巡ってくるようにしています。正直、諸沢は経営者の資質としてはマイナス。「経営者になろう」なんて思ってもいなかったんですから。

しかしそれは、後からなんとでもフォローできることで、彼女は、「この人だったらついていきたい」と思うような信頼できる人間性をもちあわせていたんです。失敗は当たり前で、不満に思いません。

庄司

私も手を動かすことしか学んでこなかったので、店舗経営はさっぱりわかりませんでした。良いものを作れば結果は後からついてくると信じて、現在の1日1組スタイルに落ち着いたんです。自分のやらなければいけない料理に集中するために、財務については専門分野の方をアサインしています。諸沢さんは、西牧さんから社長就任のお声がけがあったときにどう思いました?

諸沢莉乃

私は高校生のときから〈CoCo壱番屋〉でバイトをしていて、西牧代表によく進路相談に乗ってもらっていたんです。「人のために汗をかきたい」という漠然とした目標はずっとあったのですが、どういうキャリアを歩みたいという夢が分からなくって。

そんなタイミングで社長就任のお声がけがあり、「今のフリーターという立場よりも、よりもっと多くの人のために汗をかけるかもしれない」と思って引き受けました。

素直が最強の社長条件

CoCo壱番屋のカリフラワーライスにビーフのルー、カキフライトッピング
庄司さんは、カリフラワーライスにビーフのルー、カキフライをトッピング。

西牧

諸沢は若い分、いい意味で世の中のことを知らない。だからこそ、素直に社長就任を引き受けたんだと思います。彼女の良いところは、失敗を翌日にまで持ち越さないんですよ。失敗した瞬間は落ち込んで泣いたりもするのですが、次の日になったら明るく仕事をする。

こないだも「社長に就任してからの間、私は周囲から注目を浴びて、生意気な人間になっていました」って泣きながら反省していたんですが、次の日には前向きになっていました。

諸沢

丸一日は本当に落ち込むんですけど、現場で働いているスタッフに会うと元気になれるんですよね。みなさんのおかげです。

西牧

そういう意味で、「スカイスクレイパーが好き」「会長の考え方が好き」という思いを持つ人に社長を譲ろうと思っていました。そういう人ならば、現場も困惑しない。会社が苦しくて、思うようにスタッフの給料や休暇が増やせないときでも、人間関係だけはよくしくていけるんですよ。

そして会社とスタッフの最初の人間関係をつくるのは僕。年齢や学歴ではなく挨拶や礼儀などの方がよっぽど大切で、それがきちんとできる諸沢が、社長に最適だと思ったんです。庄司さんは、チームでの人間関係で何か意識していますか?

庄司

私とスタッフの心理的な距離を近づけすぎないようにしています。近づきすぎて友達のようになるのではなく、緊張感のある関係でいたい。ですので、仕事の打ち上げの席もなるべく離れるようにしています。ただ料理の面においては遠慮しないでほしいと思うので、難しいところですね。

諸沢

私は今年の4月までアルバイトでした。それが急に社長になったので、現場のスタッフとの距離感に悩んでいるところです。これまで仲良く接していたアルバイト仲間とどう接しようか……。

西牧

僕が諸沢によく話すのは、「楽しむ側でなく、楽しませる側になれ」ということ。スタッフが「楽しんでいるかな」と顔色を窺いながら、管理する側になってほしいです。

庄司

「自分が抜擢された強み」を、分かりやすく示すのも大切。アルバイト仲間の方々の中に、どこか置いてかれたような気持ちが少なからずあると思うんですよ。そこで自身の強みを見せて、憧れの対象になることは会社にとっても健全だと思います。

西牧

経営者は労働基準法の範囲外なんで、「残業」という概念がない。つまり365日、24時間会社のために頭を動かしているような状態なんですよ。「諸沢があんなに働いているんだから」と思われるくらいの仕事量をこなせば、誰もが嫉妬せずに納得いくのかと。稼ぎに責任はつきものです。

諸沢

私の強みは素直なことだと思います。最初は分からなかったことでも、素直に受け入れれば数年後に立場が変わって分かることがあると、働く中で実感しました。社長という立場になってから特に、素直な人の成長のスピードには驚かされます。

庄司

素直は最強。組織として活動するならば、基本的な人間性が重要だということがよく分かりました。これからの世代の憧れの対象になれるよう、もっと精進していきたいですね。

カウンターに座る庄司夏子、西牧大輔、諸沢莉乃
西牧代表のスタッフ育成の指針は「応援すること」。

profile

西牧大輔

にしまき・だいすけ/株式会社スカイスクレイパー代表取締役会長。東洋大学卒業後、愛知県一宮市の壱番屋の独立支援制度を使って1996年に設立。本部とフランチャイズ契約を結ぶ形で、現在は関東を中心に〈CoCo壱番屋〉25店舗と〈ラーメン大戦争〉を2店舗運営。

profile

諸沢莉乃

もろさわ・りの/株式会社スカイスクレイパー代表取締役社長。2001年、秋田県生まれ。2017年、15歳のときにアルバイトとして、株式会社スカイスクレイパーへ入社し〈CoCo壱番屋〉で接客業を経験。2021年に、全国の〈CoCo壱番屋〉の中でも数少ない接客スター「ココスペ『スター』」の肩書を取得。キャリア8年目の22歳で西牧大輔代表から社長の座を引き継ぐ。

profile

庄司夏子

しょうじ・なつこ/料理人。1989年、東京都生まれ。駒場学園高等学校 食物調理科を卒業後〈ル・ジュー・ドゥ・ラシエット〉(現レクテ)、〈フロリレリージュ〉を経てオーナーシェフとして独立。24歳のときにスイーツ専門店として〈été〉を開業、宝石箱のようなマンゴータルトが人気を呼び、翌年、スイーツ店を併設したレストランに。2020年、アジアのベストレストラン50「アジアのベスト・パティシエ賞」、同「アジアの最優秀女性シェフ賞」を受賞。

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