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なんてことのない当たり前の日々が尊い。忘れ去りそうな瞬間を丁寧に切り取った『コアラ絵日記』

  • 2024.9.30

日々はあっと言う間に過ぎ去っていく。24時間しかない1日だが、実は24時間もあるとも考えられる。「何もなかった」と思う日はあるかもしれないが、「何もなかった」日なんて1日たりともないのかもしれない。何にもないいつも通りの1日でも、1週間後に、例えば1年後に、もしかしたら20年後に振り返ったとき、その掛け替えのない貴重な時間の結晶をもう一度抱きしめたいと思うだろう。

『コアラ絵日記』(ゆあみ/KADOKAWA)は、そんな日々の流れゆく「なんてことのない1日」を言葉抜きに描いたマンガ作品だ。タイトルの通り、コアラの日常を描いた本作にはほとんど台詞らしい台詞がないにもかかわらず、あたかも良質な文学のように読む人の心に迫ってくる。当たり前を丁寧に拾い上げた日記を眺めていると、心が優しく包み込まれるような気分になる。

コアラが大切なぬいぐるみを愛おしく見つめぎゅっと抱きしめるエピソードがある。人によってはそれが推しかもしれないし、猫や犬かもしれないが、愛おしい気持ちが溢れる瞬間は誰にでもあるはず。その姿がこんなに尊いものだと気づくとき、コアラの生活は普段の自分自身の毎日を映したものであり、自分自身の物語なのだと感じるに違いない。

キンモクセイを見つけ秋を感じた日のこと、うまく眠れなかった夜のこと…。日々のほんの些細なことでも、その瞬間はその時にしか存在しない。本書を眺めていると、そんな“当たり前の毎日”が肯定されているように感じる。

心が疲れたときに、刺激的すぎる日々に心が荒んでしまったときに、毎日を振り返りたくなったときに、大切なあの時にもう一度出会いたいときに本書を開いてほしい。あなたの思い出にも通じる出来事が丁寧に綴られたその日記の中に、見つけられるだろう。

文=ネゴト / ニャム

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