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62歳、息子の代わりに“婚活している”母は嘆く「還暦を過ぎて孫のひとりもいないなんて」

  • 2024.10.1
実家住まいの息子のために、ご飯の支度から掃除洗濯までやり、そして躍起になって息子の結婚相手を探している母親。しかし息子はどこ吹く風で実家住まいを満喫。息子が結婚しない最大の理由は……。
実家住まいの息子のために、ご飯の支度から掃除洗濯までやり、そして躍起になって息子の結婚相手を探している母親。しかし息子はどこ吹く風で実家住まいを満喫。息子が結婚しない最大の理由は……。

日本人男性の生涯未婚率は、2020年時点では男性で約28%、女性で約18%である。ここ20年で未婚率は急激に増加しており、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が未婚になると言われている。

実際には婚姻届を出さない事実婚の増加もあるだろうが、非婚を公言する人たちもいる。結婚というものが、人生において価値を見い出せないものになってきているのは確実なのかもしれない。

62歳、息子の代わりに「婚活」しているのに

「同居する息子には、とにかく結婚してほしいんです。息子の代わりに婚活しているんですが、うちの息子が選ばれないのが悔しくてたまらない。夫にも息子にも『やめてよ』と言われているけど、結婚が現実になるまで頑張ろうと思います」

言い終わると、口を真一文字に結んだサエコさん(62歳)だ。還暦を過ぎて孫のひとりもいないなんて寂しくてたまらないと訴えた。

サエコさんは短大を出て就職し、24歳で結婚。25歳で息子を出産した。

「(息子は)37歳ですよ。もう3年婚活しているんです。知り合いに写真とプロフィールをばらまき、親の婚活集会にも出かけています。大卒だし、それなりの会社に勤めているし、見た目だってそんなに悪いわけじゃない。

お嬢さんをもつ親御さんと意気投合して、今度、必ず会わせましょうというところまで話は進むのに、会わせるところまでいかないんです。お嬢さんに息子の写真を見せたけど、会わないと言われてしまったり」

サエコさんには33歳になる娘もいるのだが、こちらはさっさと家を出て独立、恋人がいたりいなかったりしているようだが結婚には至っていない。

「娘はしっかりしていますから、ひとりでも生きていける。出張に行ったり趣味を楽しんだり、仕事も私生活も自由にやっているから安心しているんです」

息子だけに結婚を強要するのはなぜ?

息子には結婚を強要、娘には自由にやれというのも興味深い。そんな母親に、息子は当たり障りなく接しているらしい。

「婚活をやめてほしいとは言われているけど、本当に嫌なのかどうかわからないんですよね。実際は私が動いて、いい人を連れてきてほしいんじゃないかと思う。私がこういう人はどうと勧めると、一応、写真を見たりしていますし……」

同居している以上、息子の身の回りの世話はサエコさんがすべて行っている。息子は洗濯もアイロンかけも自分でしたことはない。帰宅して黙ってすわれば、温かい夕食が出てくるのだから、自ら家庭をもつのがおっくうにもなるだろう。

「夫は息子に、ひとりで暮らしてみろと言っていますが、暮らせるわけがないですよね。そうぼやいたら、娘が『おかあさん、自分がやっていることをおにいちゃんの妻に押しつけたいだけでしょ。本当は自分が好きで息子の世話しているくせに。何もかも考えが古い』って怒られてしまいました」

妻は家政婦ではないと、娘に釘を刺された。

息子と娘に対する思いが違うのは当たり前?

息子と娘、母親はなぜそれぞれへの思いが違うのだろう。男だから、女だからとなぜ差別するのだろう。

「差別ではないですよ。息子は仕事をしていて家事をする時間がない。同居しているから、子どものころからの延長線上で世話をしてやるしかないんです。娘はさっさと自分から出て行ったから、私は何もしていないだけ。息子に独立させればよかったのかもしれないけど、彼の勤務先は自宅から30分圏内なんですよ。

ひとりで暮らすとなったら、会社から遠くなるだろうし、家事もできないのにかわいそうですから」

その「かわいそう」が、彼の生活上の自立を阻んだ。仕事はできても、生活能力のない男性を作り出してしまったのだ。

おそらく息子自身、結婚する気はないのだろう。だがそれを正直に言えば、母親と衝突する。だから適当にのらりくらりとかわしているのではないだろうか。

そして母親としては、娘には自立して自由に生きてほしいという思いが心のどこかにあり、息子はいつまでも自分の庇護のもとに置いておきたいという欲求があるのかもしれない。サエコさんは、そんなことはない、同じように愛情を注いで同じように自立できるように育てたというが、よく話を聞いてみると、家事を手伝わせたのは娘だけだった。

「子どもたちが小さいうち、私は専業主婦だったから、もちろん夫も家事なんてまったくやらなかった。それを見ていた息子もやらない」

男は家事をしなくていいのか

しばらく押し黙ったサエコさんだが、「確かに、男は家事をしなくてもいいと思っていたのかもしれません」とつぶやいた。その後、サエコさんがパートに出るようになってからも、夫や息子は決して手伝おうとはしなかった。

「5年前、私が病気で1カ月近く入院していたとき、夫と息子は大変だったようです。娘に手伝ってやってくれないかと聞いたら、私は仕事が忙しいと逃げられました。日常生活を自分たちで送れない男ふたりっておかしくないかと娘に言われて……。

結局、夫と息子は食事は買ってきたみたいですね。お風呂はシャワーだけですませたようです。退院して帰宅したら、風呂もトイレも汚れていました。洗濯機は乾燥機がついていますから、乾燥までして、そのまま着ていたみたい。部屋も汚れていましたね。掃除なんてしなかったんでしょう」

やっぱりおかあさんがいないとダメだねと言われて、うれしいような情けないような、そんな気持ちになったそうだ。家事のために必要とされているのか、それでいいのかと娘に言われた。

「娘はいつも辛辣で……。家族に必要とされる喜びを知らないんでしょうね。だから息子にも結婚して、家族に必要とされる存在になってほしいんです。早く孫が見たい。体力があるうちに孫と遊びたい」

誰のための結婚なのか。息子の本意はどこにあるのか。1度、じっくり話してみたほうがいいのかもしれない。

<参考>
・「人口統計資料集(2024)」(国立社会保障・人口問題研究所)

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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