駅を利用していると、しばしば「忘れ物」や「落とし物」を見かけることもあるかもしれません。そのまま見過ごして行く方もいらっしゃる中で、親切にカウンターにいる駅員の元へ届けてくださる人もいるでしょう。それ自体はとても素晴らしいことですが…時には、ちょっとしたトラブルが起きることもあるようです。
現役駅員の本当の話(@n3cflFNAtq5B9o3)さんがX(旧Twitter)に「とある忘れ物を届けてくれたお客様の話」を投稿したところ、注目を集めています。
忘れ物を届けてもらえるのはうれしいはず。しかし、素直に喜べなかった理由とは…?
注目の投稿は、こちらです。
※下記の日付のリンクからX(旧Twitter)に移行します
現役駅員の本当の話(@n3cflFNAtq5B9o3)2024年10月4日
『忘れ物!!』とだけ言って、拾った忘れ物をカウンターに叩き置いていくお客様。
立ち去ろうとするので、慌てて
私『どこにありました?』
客『は?電車』
私『今行った電車ですか?上りと下りのどちらに?』
客『下り』
やれやれ…そんなに怒らなくても 拾った人はどうでもいいでしょうが
車内から忘れ物が届けられたら『どの列車なのか?をダイヤ等から調べて』忘れ物情報を社内で共有します。
特にメガネ、アクセサリー、ワイヤレスイヤホン等は類似品が多く、品物を特定するのが困難です。
『どの列車から拾われた忘れ物か?』は、探している人がいた場合、重要な手掛かりになります。
忘れ物を届けてくれはしたものの、詳しい説明をすることはなく、すぐに立ち去っていこうとしたのだそう。
たしかに、こちらのお客様からしてみれば、忙しい中で忘れ物を届けてくれたのかもしれません。しかし、渡された駅員は、しっかり管理して持ち主に渡す必要があります。現役駅員の本当の話さんによると、もし紛失した場合事故として、始末書を書くことになってしまうそうです。
このようなお客様は、どれぐらいいらっしゃるのでしょうか?また、忘れ物、落とし物業務の現状などについて、現役駅員の本当の話さんに、詳しく伺ってみました。
「一定数います」
---落とし物の詳細を教えてくれないのは困りますね。こういったお客様は一定数いらっしゃるのでしょうか?
「一定数います。『どこに落ちてたいましたか?』と伺うと、『こっちは急いでんだよ!』とキレる方」
---駅員の立場からすると、業務上絶対に確認しなくてはならない情報を聞いているだけなのに、怒られても困りますよね…。
「ほかにも、接客中に割り込んで来て『これ、落とし物だから』とカウンターにポイッと置いて立ち去ろうとする人(慌てて『これ、どちらに?』と聞くと、『あ?時間ねーんだよ!』とキレる)」
---落とし物を届けてくれるのはありがたいですが、ほかの方を接客している最中に割り込まれるのは、ちょっと迷惑ですね…。
「どこに落ちていたか?は忘れ物を探している人にとって、重要な情報なので落ち着いて正しく教えて欲しいです。保管している側は、忘れ物管理システムに拾得場所や時間も含めて、特徴等を登録して駅や忘れ物センター等で共有しています。捜索している側は、拾得場所や時間も捜索する上で重要な手がかりとしています」
---具体的に、それらの情報はどのような形で活用されるのでしょうか?
「例えば、メガネやワイヤレスイヤホン、雨の日に大量に届く傘等、非常に似通った落とし物を、見た目で特定することは非常に困難です」
---たしかに。届いた落とし物の数が増えれば増えるほど、管理はより難しくなりそうです。
「なので、捜索側はどの列車で落としたのか?を落とし主から伺います。その上で忘れ物管理システムで検索する際に、見た目が同じ類似品が沢山ヒットすることが多々あるので(それだけ落とし物が多いんです)、『どの列車から拾われた品物か?』を重要な手がかりにして特定するよう努めています」
---なるほど。そこで拾得場所の情報が活用されるのですね。
「もし車内で拾ったのであれば『さっき行った◯◯行きの電車』と駅員に教えていただくことで、保管側の駅は『列車を特定した上で』忘れ物管理システムに登録することで、1個でも多く落とし主の元に返還できるように努めています」
---それを聞いて、落とし物に関する情報をお伝えする必要性を改めて実感しました…!
「どこに落ちていたのか?を駅員に正しく伝えて渡して欲しいです」
---改めて、駅構内で落とし物を見つけた時どのような対応をすればいいのかお聞かせいただけますでしょうか。
「どこに落ちていたのか?を駅員に正しく伝えて渡してほしいです。また、探している人がいることから、駅構内や車内で落とし物を拾ったら速やかに届けて欲しいです。例えば、朝ラッシュの駅や車内で落とし物を拾って、時間がないから駅に届けずにそのまま自分で持っており、夜の帰宅時に駅に届ける方もいますが、これはやめて欲しいです」
---すぐに届けるべき理由を伺ってもよろしいでしょうか?
「なくして困っているお客様は、朝から夜まで駅や忘れ物センターに問い合わせても『届いてません』との回答に不安になると思いますし、大切な品物なので急いで取りに行きたい方も、そもそも駅に届いてなければ当たり前ですがお渡しできません。なので、この例では拾った朝に駅に届けて欲しいと思います」
---なるほど。速やかに届けるべき理由がよくわかりました。
「なお、警察庁ホームページでは施設内での忘れ物は24時間以内に届けないと拾得した権利を失うと書かれてますが、これは権利の得喪についてです。速やかに落とし主に返還する観点では、24時間にこだわらず、速やかに届けて欲しいと思います」
---もし落とし物を見つけたら、すぐに駅員の方に渡すように努めます…!
忘れ物、落とし物業務はかなり大きな負担
---忘れ物、落とし物はどのように管理しているのでしょうか?
「忘れ物は、一点一点、忘れ物管理システムに場所、時間、特徴を細かく登録した上で、札や切符と呼ばれるタグに番号を付してくくり付け、決して紛失することのないように厳重に管理しています。その上で、広く一般に流通している小物等が届く現実もあり、負荷を増やしている現状があります」
---負荷が増えている原因は何でしょうか?
「コンビニで売っているようなボールペン、ポケットティッシュ、開封済みの市販の目薬、映画館の半券。これらは、取りに来ることはないとはいえ、届いた以上は忘れ物として厳重に管理せざるを得ません」
---業務の1つとはいえ、取りに来ることはないだろうと思いながら、管理し続けなくてはならないのは辛いですね…。
「安易に廃棄すると、後日に『先日、私が届けたポケットティッシュ、どうなってる?』と尋ねに来て、忘れ物で管理されていないことを知ると『せっかく届けたのに…おまえら紛失したのか?それでも忘れ物を扱う資格があるのか』と嫌がらせのようなクレームを出す人もいます」
---届けた側の人が確認に来ることがあるのですね。
「また、終点で車庫に入る前に忘れ物がないか確認しますが、使い古した布団、中古の電子レンジや炊飯器、最近はインバウンドの影響か、壊れた中身のないキャリーケースなどが車内に放置されていることも。一応、経済的な価値があるので廃棄できず、警察に届けますが、大きな負担です。個人的には不法投棄に当たると思いますが」
---困ったものですね。経済的に価値がない場合は、現場の方々の方針で廃棄しても問題ないのでしょうか?
「駅では例えばトイレに、カセットコンロのガスボンベや使用済み蛍光灯が放置されていることもあり、これは経済的価値がないので忘れ物で警察に届けずに駅で廃棄しますが…」
---廃棄していいのですね!それなら、比較的負担は少ないのでは?
「安全に廃棄するために、旅客が居なくなった終電を待ち、ガスボンベのガス抜きを貴重な睡眠時間を削っておこないます。蛍光灯も一般廃棄物では出せないですから、処分には専用の業者を手配せねばならず手間がかかります」
---経済的に価値がなくても、廃棄するためにはとても手間がかかるのですね。
「いつか駅の仕事が『忘れ物の管理』から『ゴミの分別』になってしまう」
「『これは本当に忘れ物なの?』と疑わしい物が次々に届けられたり、見つかったりする現状。負担ばかりが増え、しかし一点でもなくすと事故で始末書を書くことに」
---駅員の方々にとって、忘れ物、落とし物に関する業務の負担は想像以上に大きいのですね。
「本社の人は『忘れ物は厳正に管理』と現場に指導するだけですが、明らかに経済的価値のないものが届いた場合には処分を認めることを社内に示したり、不法投棄に関しては厳正に処罰する姿勢を警察と連携して世間に見せないと、いつか駅の仕事が『忘れ物の管理』から『ゴミの分別』になってしまうことを危惧しています」
---現場の方々の負担が少しでも減るとよいのですが…。最後に、現在の状況に関して特に改善して欲しいことがあれば教えてください。
「忘れ物を管轄する警察と連携して、この現状を解決出来るよう検討してほしいと思います」
---一刻も早く、現状がよい方向に変わることを願っております。
取材協力:現役駅員の本当の話(@n3cflFNAtq5B9o3)さん