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「どうすれば○○になれますか?」と聞かれたら、これからもれなくこの本を渡す。『生きのびるための事務』

  • 2024.9.30
朝日新聞telling,(テリング)

『生きのびるための事務』(坂口恭平/マガジンハウス)

金勘定が苦手だ。会社員だったころは、すぐに領収書を失くすわ経費精算が苦手だわで、退社するまでの3年間に何十万もの経費を自腹で払った。人生活動の中で「事務」が最も苦手である。
ゆえに、この本も話題になっているのは知っていたけれど、見て見ぬふりをしていた。

ある日、ライター仲間のちえみに「事務の本読んだ?」と聞いたら、「はい、読みました。あれに『事務』というネーミングをつけたところが勝ちですね」と言うので、「え、事務の本じゃないの?」ともう一度聞いたら「はい、事務の本ですけど事務の本じゃないです」と言うから???となって読んでみた。

なるほど! 事務ってそういうことか!!
これ、私たちにめっちゃ必要なやつじゃん!!!

朝日新聞telling,(テリング)

たとえば、ライター業が長くなると、「私もライターになりたいです」という人にわんさかと会う。「どうすればいいですか?」と聞かれるのだけれど、それはもう、「なればいいと思う」としか答えようがない。
ライター業界は空前の人手不足だから、編集者たちは血眼で書ける人を探している。だから、ライターになる方法なんてありすぎるほど、ある。プロ野球選手じゃないんだから、レギュラー9人に選ばれる必要はない。なりたいなら、なればいい。
が、「なればいいと思う」という回答で相手は納得しない。「どうやってなればいいですか?」と重ねてくる。ああ、なるほどそれを聞きたいのかと思う。だからある程度ていねいにいろんなやり方を伝える。あまりに質問されるから最近は本まで書いた。
でも、聞くだけ聞いても実際にやらない人は多い。まあ、やる:やらない=2:8くらいか。

私はこれを、やる気の欠如だと思っていた。「やりたいと言っているけれど、まあそれほどやりたくなかったんだな」と思っていた。
だが、違ったのだ。
これはやる気の欠如ではなく「事務の欠如」だったのである(もっと遡って語るなら、「好きの欠如」かもしれない)。

あなたに必要なのは「やる気」ではなく「事務」です。
あなたに必要なのは「将来の夢」ではなく「将来の現実」です。

そんなふうに伝えることができていたら、彼/彼女たちは、私がアドバイスするより良い方法を自分で考えて見つけられただろう。オーレの力不足でごめんよ。
だから、これまで私に「○○してみたら?」とアドバイスされたけど全然うまくいかなかったという人は、もれなくこの本を読んでほしい。

夢を現実にするための、もっとも簡単で、多分たったひとつの方法が書かれています。

だいぶ影響を受けたので、私も早速、24時間の円グラフを書いてプリントアウトした。そして、毎日使うノートの表3に貼り付けた。そしてその円グラフをパソコンのスリープ画面にも設定した。
そして、興奮さめない勢いのまま、友人の実業家に「この本読みました?」とメッセージをした。海外で暮らすその人は「帰国してすぐに本屋で手に入れた」と言ってくれた。

その1週間後、リアルに対面した彼女は「ねえ、さとゆみさん。あの本どうして私に薦めたの?」と聞いてきた。
その顔がまあまあ険しかったので、「え? つまらなかった?」と聞くと「知ってた」とだけ、彼女は言った。それで、あああああああっっとなった。
たった数年でゼロから億の売り上げを作った彼女だ。事務の存在を知らないはずがないじゃないか。
「ごめん、知ってましたよね」と謝ると「うん。あれを知らずにビジネスはできません」と言うからますますとんちんかんなレコメンドしてごめんなさいとなり、そして、ますますこの本やっぱりすごいってなった。成功している人たちは、もれなく事務を行っているのだ。

本を読む前には、ノートを一冊用意してね。

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■佐藤友美のプロフィール
テレビ制作会社勤務ののち、2001年ライターに転身。雑誌、ムック制作、ウェブメディアの編集長を経て、ライター・コラムニストとして活躍。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。

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