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先住民に学ぶ、互恵主義の恩恵【MY VIEW│エイミー・デネ・ディール】

  • 2024.9.29
Photo_ Courtesy of 4Kinship
Photo: Courtesy of 4Kinship

グローバル・ブランドで仕事をしていた2007年頃、大量生産の有害性が自分の娘の未来を破壊していることに気づき、少量生産の一点ものの制作にシフトすることを決めました。白人家庭の養子として育った私が、自身のナバホのルーツを知った後に立ち上げたアップサイクルブランド、4Kinship(フォーキンシップ)では、ダメージのある衣類の新しい命を想像し、加工したり、染め直したり、アンティークのヴィクトリア時代のドレスを解体して、現代人のサイズに作り変えて再販します。不要とされるものに新しい命を吹き込めること、地球や環境に害を与えないこと、それが私の仕事に喜びを与えてくれています。

ファッションの業界に入って40年近くになり、今年で60歳になります。年を取ると、自分の存在意義について考えることが増えます。経験からたくさんのことを学び、スキルを身につけたから、自分の仕事は、みんなのアンティー(おばさん)として、次世代のために存在するかけ橋となること。フォーキンシップは、才能がありながら透明化されてきた若い先住民に力を与えることのできるマザーシップとして捉えています。

人間たちが互恵主義や意識ある消費を実践しなければ、文明は絶滅する危機にあります。ファッション業界でも過剰な労働が横行していますが、その労働量が作りだす富はどこに行くのでしょう? 衣服を作るのに参加した人たちに富が公正に再分配されたら、多くの問題を解決できるはずです。常に互恵主義を大切にしてきた先住民の文化に倣い、私もコミュニティ全体を高めるようなビジネスを模索しています。この小さいブランドにすらコミュニティに利益を還元し、地域のためにスケートパークを建てることが可能なのだから、大企業ができることを想像してほしいのです。

サンタフェには11,000ものビジネスがありますが、そのうち先住民が所有するのは0.0003%の4つのみで、女性のオーナーは私だけです。先住民のアートや文化で知られるサンタフェで、歴史的にその経済を支えてきた先住民に、その恩恵を受け取ってほしいと思いますが、サンタフェで生み出される富は、先住民には分配されず、若い先住民をサポートする助成金もありません。市がやらないのであれば、若い先住民が店を出すための助成金を私が出せないかと考えています。先住民に初期投資の資金があれば、サンタフェはネイティヴから直接ネイティヴのグッズを買うことができるオーセンティックな場所になり得るのです。

先日、インターナショナル・フォークアート・ミュージアムで行われたフェアで、キーノート・スピーカーとして世界中からやってきた200人ほどの先住民アーティストに話をしました。西アフリカ、カザフスタン、インドといった国のアーティストからの質問を受けましたが、誰もが、若い人たちがクラフトの世界に入ってこないことを憂慮し、伝統的なアートやクラフトを継承していくためにどうすればいいかと議論しています。私はその答えは、過去の形にとらわれずに先住民未来主義(インディジニアス・フューチャリズム)を包摂することにあると考えています。これまで、先住民たちは、サンタフェのような場所にやってくる白人のレンズを通して自分たちを見つめてきました。メインストリームが期待するのは、ストイックでロマンティックに味つけされた先住民のステレオタイプで、それが伝統的でない創造性を育むことを阻害してきました。けれど、今の若者たちは、現代を生き、インターネットにつながっているので、これまでとは違う方法で先住民性を身につけていきます。

今、デザインやクリエイティブの世界で、これまで見たことのないような表現をするアーティストたちがたくさん登場しています。次世代の先住民たちを伝統に縛りつけることはできないし、ほかの部族や、文化と結びつくことで変容していくのだから、その変容をあるがままとして受け入れ、基盤を作るのを手伝うべきだと思うのです。先住民の未来は「今」にあるのです。

意識的消費とは、何かを手にするときに、そのものがどこから来て、どうやって作られ、自分がどうやって手にするかを考えることです。日本で流通している多くのターコイズの指輪は、白人のディーラーが先住民との不平等な取引の結果、得たものです。つまり、多くのターコイズの指輪は、搾取の結果として売られているものであり、作り手のアーティストに恩恵をもたらすものではありませんでした。私の店では、現役のアーティストから買ったものしか取り扱っていません。先住民が作ったものを身につけるのであれば、それがどこからきたのか、考えてみてほしいと思います。

Profile

エイミー・デネ・ディール

リーボックプーマでデザイナーとして活躍後、フォーキンシップを立ち上げ、2022年にサンタフェにショップをオープン。非営利のイニシアチブを通じて、居留区に建設したスケートパークは、米メディアでも話題に。

Text: Amy Denet Deal As told to Yumiko Sakuma Editor: Yaka Matsumoto

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