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国立で勝てないJ2清水エスパルス、GK権田修一が語ったクラブの未来

  • 2024.9.29
国立で勝てないJ2清水エスパルス、GK権田修一が語ったクラブの未来
国立で勝てないJ2清水エスパルス、GK権田修一が語ったクラブの未来

Text by ライター

[J2第33節清水エスパルス1-1横浜FC、28日、東京・国立競技場]

J2リーグ歴代最多の5万5598人が訪れた首位を決める天王山は、1位の清水と2位の横浜が互いに勝点1を分け合う形となった。

オレンジ色に染め上げられたサッカーの聖地。試合前にはドローンによる演出が行われるなど、その盛り上がりはJ2の枠に収まっていなかった。

J1復帰を目指す両チームにとって、これまでにない素晴らしい環境下での試合だったが、清水GK権田修一は「だからこそ勝ちたかった」と唇を噛んだ。

「これだけのお客さんが来てくれていた中で、結果を残せなかった。エスパルスは多くの人を集められる素晴らしいチームです。だからこそ、クラブとしてはもう1段上を見据えて、普段からきょうと同じような雰囲気の中でプレーして勝てるようにしたいですね」

清水にとって、国立は決して相性のいいスタジアムとはいえない。2022年から今年にかけて、J1横浜F・マリノス、J2ジェフユナイテッド千葉、J1東京ヴェルディとJ1昇格プレーオフ(PO)決勝で試合をしているが、いずれも勝利できなかった。

「これから先、自分たちがタイトルを狙うのであれば、国立はファイナルの舞台になるかもしれない…」

静岡から駆け付けたサポーターのためにも、勝利を届けたかったという気持ちが残っている。ただ、失点こそ許したものの、首位の清水にとっては結果だけを見れば合格点の試合だったはずだが、守護神の表情は暗かった。

前半は1位と2位の対決らしく手堅い内容だった。清水は守備時5バックで守る相手を崩ぜず、一方の横浜は事前の想定よりも前からプレッシングに来なかったホームチームに対して、カウンターを発揮できなかった。

高い攻撃力を武器に、ここまでJ2を戦ってきた清水らしくない前半ではあった。背番号57は「普段やっていたプレーを出せていなかった点が、個人的にはすごく気になる」と戦いを振り返った。

後半になると試合は徐々にオープンな展開に変わっていった。11分、左サイドからのクロスボールに合わせた横浜FW髙橋利樹のヘディングシュートは、権田の頭上を越えてクロスバーに直撃。間一髪で守りきったと思われたが、ボールは奇しくもFWジョアン・パウロの前に跳ね返り、そのままヘディングで先制点を奪われた。キーパーにとってはノーチャンスに見えたが、守護神は「個人的にパフォーマンスは非常に悪かった」と反省した。

得点が必要になった清水は、後半23分に3枚替えを実行。人を追い越すプレーが増え、攻撃が活性化されると、29分に交代選手のMF宮本航汰が右サイドから出されたパスのこぼれ球に反応。最後は滑りながら右足でゴール左側に押し込んだ。

J2頂上決戦はそのまま1-1で終了。清水はシュート10本で、5本の横浜を上回ったが、内容でいえばこの試合はアウェーチームのものだった。試合後、清水の秋葉忠宏監督は「劣勢の状況から、最低限の勝点1はもぎ取った」と選手たちを称えるとともに、「我々は首位にいる」と力強く語った。

「J1でまた苦しむことになる」

勝点72で首位の座を守りきった清水。それでも権田の顔から喜びは一切感じられない。もちろん、自身のパフォーマンスに納得していない部分もあるのだろうが、それ以上に元日本代表守護神の視線は、このクラブでJ1を戦う未来に向いていた。

「優勝は絶対狙いますが、ただ上がるだけでは意味がない。この2年間でエスパルスがどれだけ成長したか確かめられる場所はJ1しかない。僕はこのクラブでJ2降格という悔しい想いをしている。だからこそ、いまのままではJ1に上がったとしても、今年の町田さんのように優勝争いをできる自信がない。本当に目指さなければいけないレベルは、そこにあると思っています」

2022年にクラブ史上2度目となるJ2降格を経験した清水。去年はPO決勝まで上り詰めるも、J1復帰への切符は東京Vに奪取された。

「去年、僕らには勝負強さがなかった。ここで行われたPO決勝でも勝てていませんし、水戸戦や熊本戦でも決め切るチャンスを逃していた。まだ試合は残っているので、答え合わせはここから。きょうの時点では勝負強くなったとは言えない」

オリジナル10の清水にとって、目標はJ1復帰ではなくJ1優勝だ。きょうの試合で見せた盛り上がりと観客数は、トップディビジョンに匹敵した。だからこそ、今季の熱を一過性のものとして終わらせるのではなく、来季J1の顔になる覚悟が清水には必要だ。逆をいえば、その覚悟がなければ再び降格してしまうという不安が権田にはある。

「あと5試合しかないですけど、もう1段、2段レベルを上げないとJ1でまた苦しむことになる。2022年にJ2優勝した新潟ですら、J1で優勝争いはできていない。あのころの新潟ほどの強さも僕らにはまだないので、もっとやらなければいけないと感じています」

35歳に慢心はない。J2首位をキープしてもなお、自分たちの甘さを見つめ直していた権田。清水に与えられたミッションは、残り5試合でJ2優勝を確実なものにする勝負強さと、J1で戦うための土台づくりだ。

「今後クラブがJ1に上がっても下位で争うのではなくて、上位で戦い続けられるクラブになるために、どれだけ突き詰められるか。育成型クラブを掲げているので、子どもたちには『このエスパルス、かっこいいな」と思ってもらいたいですし、いつまでもエスパルスを愛し続けてほしい。そのためにはトップの選手たちが姿勢を見せ続けなければいけないと思っています」と、クラブの未来を語るころには、権田の表情にも明るさが戻っていた。

清水は来月6日に茨城・ケーズデンキスタジアム水戸で第34節で水戸ホーリーホックと対戦する。トップディビジョンの厳しさと昨季の悔しさを胸に秘めたオレンジの守護神が、アウェーの地で清水を一つ上のレベルに押し上げる。

(取材・文 浅野凜太郎)

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