1. トップ
  2. 恋愛
  3. 菅田将暉さん「経験が増えた分だけ、悩んだ時の選択肢も広がる」

菅田将暉さん「経験が増えた分だけ、悩んだ時の選択肢も広がる」

  • 2024.9.28

俳優業に留まらず、音楽活動など表現者として多彩なジャンルで活躍している菅田将暉さん(31)。9月27日公開の映画『Cloud クラウド』(黒沢清監督)では、不⽤意に周囲の恨みを買ったことから突然「標的」となり、命を賭けた死闘へと引きずり込まれる役を演じています。そんな菅田さんに、年齢を重ねたことによる心身の変化や、悩みや不安を抱えた時の対処法を、ご自身の経験を踏まえながらお話しいただきました。

20代後半で感じた体と心の変化

――菅田さんは現在31歳。俳優歴は今年で15年になりますが、年齢を重ねたことで仕事や人生観に変化はありましたか?

菅田将暉さん(以下、菅田): 生活面での変化は、健康を意識するようになったことです。仕事のことで言うと、今回の黒沢組のような出会いは自分にとって本当に救いで、ものづくりとして心地良い現場だったので、こういう仕事をこれからもたくさんできるように頑張りたいなという、ひとつの目標ができました。

――健康を意識するようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

菅田: 元々、20代は全力で走って、30代で1回立ち止まろうと思っていたんですが、直接的なきっかけは、数年前に肉体の疲労を痛感したことでした。20代前半までは、どれだけ無茶をしても体が壊れないから全力で突っ走れるんだけど、同じエネルギーで「ワーッ」って叫んでいても、27、8歳あたりで「なんか腰痛いな」と体に出てくるんです。2019年にやった舞台『カリギュラ』あたりがそうでした。

それくらいの時は人間の心の強さが体に勝ってしまうんですが、「このまま同じペースでやっていたら体がもたない」と痛感したんです。「もしこれで辞めることになってもいい」とも思っていましたが、30歳を過ぎてみると「やっぱりもうちょっとやりたい」と思い直して、そのうえで「やっぱり健康が一番だよな」と考えるようになりました。

朝日新聞telling,(テリング)

自分で自分が喜ぶ状況を作ってあげる

――「telling,」のメイン読者層は20代後半~40代前半の女性です。仕事やプライベートで悩んだり、年齢を重ねることに不安や焦りを感じる方もいますが、そういう思いを抱えたことはありましたか? 菅田さんなりの「不安の対処法」があれば教えてください。

菅田: 今の仕事を辞めたいなと思ったことはないですけど、「この先、どうしようかな」と悩んだり不安に思ったりすることは、常にあります。大体そういう時、僕は極端に考えるんです。例えば「あと500年も経てば、今生きている人は全員いないからどうでもいいや」とか「自分が何も成し遂げられなかったとしても、誰も覚えていないし知らないからいいや」って。

結局、周りに怒られようが褒めてもらおうが、それを自分が「許すか、許さないか」なんだと思います。それに、自分が勝手に不安になっているだけのこともあるから、自分が喜ぶ状況を自分で作ってあげればハッピーになるじゃないですか。そういう風に考えると、結構楽になります。

年を重ねることに対する不安はあまりなくて、むしろ早く年齢を重ねたいと思っているんです。年を重ねれば重ねるほど経験が増えるから、いろいろな選択をしやすくなる。「ここからどっちに行ったらいいんだろう」という状況になった時に、選択肢がたくさんあったほうが気持ちに余裕が持てると思います。

――読者の中には「やってみたいけど、一歩前に踏み出せない」という人も。菅田さんにもそんな経験はありましたか?

菅田: 作品選びもそうですし、「これをやったらしんどいよな。でも、きっとやった方がいいんだろうな」と躊躇してしまうようなことは多々あります。ちょうどそう思ったことが先日あって、その時は「やる」方の選択をしました。

朝日新聞telling,(テリング)

――判断をする時の決め手になるのはどんなことでしょうか。

菅田: 「とりあえずやってみる」ですかね。これは僕の場合ですが、勝手にあれこれ想像して、勝手に苦しくなって動けなくなる時がよくあるんです。「これをやるとこうなるよな」と考えすぎて身動きがとれなくなる。もう10代の時のようなフットワークではいられないけど、だからこそちょっとバカになって「失敗してもいいや」と思って挑戦してみるのもいいと思います。

以前、体を作らなければいけない仕事があって、気持ちとしてはやりたいけど「今はそこにあまり時間を割けないな」と悩んでいたことがあったんです。でも、自分の人生においては絶対に経験した方がいいことだった。だから、もし体が仕上がりきらなかったら作品には申し訳ないし、自分を責めるかもしれないけど、自分の人生においてはプラスだなという考え方にシフトしたんです。

――大きな決断をする時は、どんなことを大切にしていますか。

菅田: 家族がいるので、自分一人で決めるということはしませんが、面白い方に向かおう、と思います。選択肢が目の前にバッーと並んだ時に、それが例えしんどくても、これを選んだ自分の方が面白そうだなと思ったことを選ぶようにしています。

例えば初めて行くパスタのお店で、自分はカルボナーラが好きだけど、その店はボロネーゼが有名。でも、レモンのフィットチーネみたいな見たことのないメニューがある。さぁ、その中からどれを選ぶ?となった時は、この店でしか食べられなさそうなものを選ぶタイプです。その選び方で失敗をすることもあるけど、人生ってそういう選択の積み重ねだと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

料理ってクリエイティブ 「おかんすごい!」

――プライベートでは、最近は魚をさばいたりチャーシューを作ったりと、料理を楽しまれているようですね。

菅田: 以前から魚をさばくことに興味あったので、包丁だけは持っていたんです。「早く使わなきゃ」と思っていたけど、スーパーで売っているアジを見ても「三枚におろしてみようかな」とはなかなか手が出なくて。そう思っていたら、映画『サンセット・サンライズ』で演じた役で経験することができたので、そこからは自宅でもやるようになりました。家でさばきたてのお刺し身を食べるのって最高なんです。

料理って面白いですよね。チャーシューもいろいろな作り方があって、お肉の火入れひとつでも、最初に焼いてから煮て味を染み込ませるのか、まずは煮て余分な水分を飛ばしてから焼くのか、とか色々やってみました。ちょっとしたことで変わるところはものづくりとして楽しいし、役者の仕事と似ているところもあるなと思います。それに、料理ってめちゃくちゃクリエイティブですよね。改めて「おかんすごい! シェフすごい‼」と思いました。

ヘアメイク:AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
スタイリスト: KEITA IZUKA

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■慎 芝賢のプロフィール
2007年来日。芸術学部写真学科卒業後、出版社カメラマンとして勤務。2014年からフリーランス。

元記事で読む
の記事をもっとみる