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ウィノナ・ライダー、栄枯盛衰のキャリア──絶頂からどん底、そして復活まで

  • 2024.9.27

1986年に学園青春映画『ルーカスの初恋メモリー』で俳優デビューを飾ったウィノナ・ライダー。彼女の知名度を飛躍的に向上させたのが、当時30歳だったティム・バートンが監督をした『ビートルジュース』(1988)だった。ライダーは幽霊の姿を見ることができる風変りな少女リディア役で人気を獲得。

『ビートルジュース』(1988)では、ビートルジュースを怪演したマイケル・キートンと共演。
BEETLEJUICE - Michael Keaton, Winona Ryder, Tony Cox, 1988. 『ビートルジュース』(1988)では、ビートルジュースを怪演したマイケル・キートンと共演。

そして、翌年公開された『ヘザース/ベロニカの熱い日』(1989)で大ブレイク。今でこそ珍しくなくなった高校のスクールカーストをテーマにした、学園ブラックコメディの先駆け的な作品で、ライダーはスクールカースト1軍の女子たちに虐げられるヘザーを演じて売れっ子俳優となる。いじめられっ子役のうえ、ブラックな風刺が効いた作品だったため、ライダーのエージェントは当時、彼女に出演を断念するよう懇願したという。しかし、15歳のライダーは脚本を気に入り、自分の意思を貫いて出演。結果的に本作はカルト的人気を誇り、今でも青春ブラックコメディ映画の金字塔として映画史に残る作品となっている。

“ウィノナ・フォーエバー”──ハリウッドに捧げた青春

イーサン・ホークと共演した青春映画『リアリティ・バイツ』(1993)は、29歳だったベン・スティラーの監督デビュー作。
REALITY BITES- Ethan Hawke, Winona Ryder, 1994イーサン・ホークと共演した青春映画『リアリティ・バイツ』(1993)は、29歳だったベン・スティラーの監督デビュー作。

知っておきたいのは、90年代前半はウィノナ・ライダーの時代だったということ。ハリウッドにとどまらず、当時の彼女の人気は世界的なものだった。ティム・バートン監督と2度目のタッグを組んだ『シザーハンズ』(1990)に始まり、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)、フランシス・フォード・コッポラ監督による『ドラキュラ』(1992)、マーティン・スコセッシ監督の『エイジ・オブ・イノセンス』(1993)、ベン・スティラー監督作の『リアリティ・バイツ』(1993)、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『若草物語』(1994)。インディ作品から巨匠の大作まで、あらゆる映画にひっぱりだこだったのだ。

ちなみに『ドラキュラ』の劇中で夫婦となったキアヌ・リーブスとは現在も交流があり、お互いを“夫”、“妻”と呼び合っているとポッドキャスト「Happy Sad Confused」で語っている。そんな順風満帆にしか見えなかった彼女の人生の歯車は、どこで噛み合わなくなっていったのか?

ジョニー・デップとの出会い、そして破局

1990年、ハーブ・リッツの誕生日パーティーに出席したジョニー・デップとウィノナ・ライダー。
Johnny Depp and Winona Ryder attend Herb Ritts Birthday Party 19901990年、ハーブ・リッツの誕生日パーティーに出席したジョニー・デップとウィノナ・ライダー。

ウィノナ・ライダーとジョニー・デップが恋におちたのは1989年。『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー』のプレミアでのこと。『ピープル』によると、26歳のデップが、18歳のライダーにひと目ぼれをしたことから交際をスタート。翌年に『シザーハンズ』(1990)で共演し、5カ月の交際期間を経て婚約した。この時期にデップは、右腕に有名な「WINONA FOREVER(ウィノナよ永遠に)」のタトゥーを入れている(破局後、「WINO FOREVER(アル中よ永遠に)」にお直し)。

当時の二人は交際にオープンで、あらゆる雑誌のカバーを飾ってインタビューではお互いについて語っていたが、1993年の6月に破局。デップは8歳という年齢差やすれ違いが破局の原因だと語っていたが、21歳のライダーにとって、人生で初めて愛した人との別れは簡単に割り切れるものではなかった。

ジョニー・デップと交際中に共演をした『シザーハンズ』(1990)。
EDWARD SCISSORHANDS - Johnny Depp, Winona Ryder, 1990ジョニー・デップと交際中に共演をした『シザーハンズ』(1990)。

ジョニーとの婚約を解消した後、とても落ち込みました。今思えば恥ずかしくなるくらいドラマチックになっていたけど、まだ私は19歳だったから」。こう語るライダーは、憔悴しきって火のついたタバコを持ったまま眠ってしまい、炎で目が覚めたこともあったという。デップへの未練がたっぷりあったのだろう。彼女は予期ノスタルジア(特別なものを失うことによって引き起こされる急性の悲しみ)と診断され、薬を処方されていた。それから間もなく報道された、ジョニー・デップとケイト・モスの熱愛も、彼女の繊細な心を大きく傷つけたはずだ。

この破局が影響しているかどうかは本人のみぞ知るところだが、以降彼女のキャリアはジリジリと失速していく。

万引き事件でキャリアは白紙に。鎮痛剤中毒疑惑も勃発

Winona Ryder Found Guilty of Felony Grand Theft Charges

2001年の12月にビバリーヒルズの高級デパート、サックス・フィフス・アベニューで約4700ドル(当時のレートで約58万円)の衣類を万引きし、重盗罪、器物損壊罪で有罪判を受ける。万引きの一部始終を捉えた監視カメラの映像が、動かぬ証拠となった。ライダーは逮捕時、モルヒネなど数種類の鎮痛剤を所持していたという。そして、裁判で執行猶予判決を受けた数日後に、「ウィノナ・ライダーは鎮痛剤中毒の可能性がある」という報告書がリリースされた。なんと彼女は6人の偽名を使って3年に渡り、20人の医師から37の処方箋をもらっていたのだ。

リハビリ入院をし、2002年から3年間社会奉仕活動を行って人生の再起を図ったライダーだったが世間の風は当たりは強く、また、この事件を機に人間関係に亀裂が入り精神状態は悪化。彼女を冷遇したハリウッドにも戻る場所はなかった。

あのワインスタインからブラックリストに載せられていた⁉

ウィノナ・ライダーが唯一出演したミラマックス社の作品が『愛と精霊の家』(1993)。アントニオ・バンデラスの恋人役を演じた。
THE HOUSE OF THE SPIRITS - Winona Ryder, Antonio Banderas, 1993ウィノナ・ライダーが唯一出演したミラマックス社の作品が『愛と精霊の家』(1993)。アントニオ・バンデラスの恋人役を演じた。

最近のUS版『エスクァイア』のインタビューでライダーは、性的暴行により有罪判決を受け、現在服役中のハリウッドの元大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインから嫌悪されていた可能性を打ち明けている。直接的に性被害やハラスメントを受けたわけではないが、「1990年代後半から2000年代前半にかけて、さまざまな理由からミラマックス社のブラックリストに載せられていたと思う」(ワインスタインは2005年までミラマックス社のトップに君臨)。その理由の一つに、打ち合わせでミラマックス社に出向いた際、彼女からワインスタインに手を出して握手を求めたことをワインスタインが気に入らず、後日ウィノナはエージェントから、「何をしでかしたんだ?」とすごい剣幕で怒鳴られたことをあげている。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で完全復活

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」では、ジョナサン&ウィルという二人の息子の母ジョイスを演じている。
STRANGER THINGS - Gaten Matarazzo, Noah Schnapp, Winona Ryder, Sadie Sink「ストレンジャー・シングス 未知の世界」では、ジョナサン&ウィルという二人の息子の母ジョイスを演じている。

ハリウッドでは作品がコケた場合など、制作側が損をしないように映画に保険をかけるのが一般的だ。当然、一度問題を起こした俳優を起用するとなると、「ヒットが見込めない」などの理由で保険の審査が通らなくなってしまう。ウディ・アレン監督が、『メリンダとメリンダ』(2004)にライダーをキャスティングしようとしたところ、保険会社からNGを出されて諦めたという話もある。失敗を挽回するチャンスを与えようとする人がいても、システムや世間がそれを許さなかった。

そんな彼女の復活を演出したのが、Netflixオリジナルシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2006~)のマット&ロス・ダファー兄弟だった。80sカルチャーに夢中だった兄弟は、1983年のアメリカを舞台に描いたSFホラードラマにライダーをキャスティング。素晴らしいプロットや世界観でシリーズはメガヒットするが、そう少なくはない世界中の彼女のファンの熱い思いも、ヒットに貢献していることは間違いない。

マット・ダファーは、2022年のインタビューでライダーの起用に関して、こうコメントをしている。

「7年前、ウィノナはあまり作品に出演していませんでした。彼女は僕たちみんなが観て育った俳優の一人で、誰もが彼女のことが大好きでノスタルジーに浸っていたんです」

今作への出演以降、キャリアに新たな追い風が吹いてきたウィノナ・ライダー。久しぶりの大作映画『ビートルジュース ビートルジュース』で、ぜひ彼女の姿を観てほしい。

Text: Rieko Shibazaki

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