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「クロエをもっと広く届けたい」──シェミナ・カマリが切り開き続けるメゾンの新時代【2025年春夏 パリコレクション】

  • 2024.9.27

最近任命されたクリエイティブ・ディレクターの中で、クロエ(CHLOÉ)シェミナ・カマリほど大成功を収めている者はほとんどいない。その成功の理由のひとつは、彼女の経歴にある。昨年、メゾンのトップポジションに就任したカマリは過去2回クロエに在籍していたことがあり、カール・ラガーフェルドと同じドイツの出身だ。かつてクリエイティブ・ディレクターを務めたラガーフェルドも2度にわたってクロエで活躍し、70年代後半には影響力のあるコレクションを次々と発表。メゾンのトーンと美学を確立した。

偶然にもラガーフェルドと共通点が多い経歴を持つカマリだが、それだけではクロエをこうも人々の心に響くブランドに仕立てあげられない。自分の勘を信じ、努力を惜しまないカマリは度胸がある上、運さえも持ち合わせている。詰まるところ、不思議な“直感力”の持ち主であり、その直感力を働かせて反響を呼んでいる。先月行われた米民主党全国大会カマラ・ハリス副大統領がカマリのデザインを1度だけでなく2度も選んだという僥倖(ぎょうこう)も、運と直感力のおかげと言えるのではないか。

カマリが追求するカジュアルなクロエ

メディアから注がれる熱い視線は、2回目のショーを行うことへのプレッシャーに拍車をかけたかもしれない。初のショーよりも、インパクトや目新しさが薄れてきた頃に行われる2回目のショーの方が、期待もハードルも高いことがある。華々しいデビューを飾ったのであれば尚更だ。しかし、カマリは今回送り出した服とアクセサリーに対して、一抹の不安も見せなかった。

「楽しいシーズンでした。1回目のショーの反響を受けてうれしかったので、いいエネルギーに満ち溢れていました。そうなると、もっともっと届けたいと思うじゃないですか。(今季は)ほかのアイデアやクロエの違った側面も追求していますし」と彼女はプレビューで語った。

今回のコレクションは、2月に発表したファーストコレクションによりカジュアルな要素を加え、進化させた堂々たるものだ。ハイウエストのフレアデニムは2004年春夏シーズン、フィービー・ファイロ期に打ち出されたジーンズを思わせ、フラミンゴのスイムウェアはステラ・マッカートニー期のあざと可愛さを受け継いでいる。フロントロウのセレブたちが着るラッフルやレースをふんだんにあしらったピースよりも手が出しやすいこれらは、キトゥンヒールのジェリーサンダルと並んで今シーズンの人気アイテムになることだろう。

クロエの歴史に精通しているカマリはデビューショーと同様、その豊かな知識を基盤に今季のルックを作り上げていった。その証拠に、スタジオにあるムードボードにはラガーフェルドによるコレクションの写真がピン留めされている。彼が手がけたデザインで一番参考にしたのは、1977年春夏シーズンで発表されたウエストシェイパーと1978年春夏シーズンで披露されたレースのブルマだ。どちらも若い世代の女性たちが考える「セクシーなファッション」をこれから再構築する可能性を秘めている。

頑丈なコットンや柔らかなスエード、レザーからできたパワーショルダーのジャケットたちは肩のラインからギャザーがたっぷりと寄せられ、こちらも「セクシー」という概念を再定義するかのように、軽やかな色気漂うピースに重みを与えた。

フレッシュさと軽さこそがクロエらしさであり、カマリはその両方を毅然として使いこなす。溢れんばかりのシフォンを用いた前後アシンメトリーの花柄ラッフルドレスなどは、風になびくとなんとも美しい。クロエを愛するイットガールたちだけでなく、普段はフローラルやフリルに抵抗がある女性たちにも纏ってみたいと思わせる魅力が備わっている。彼女たちはどう着こなすだろう。来年の春夏が、今から楽しみだ。

※クロエ 2025年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Nicole Phelps Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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