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次なるドリス ヴァン ノッテンへの第一歩。アーカイブから導き出す、新たなるメゾンらしさ【2025年春夏 パリコレクション】

  • 2024.9.26

6月の2025年春夏メンズコレクションを最後にランウェイという表舞台から退いたドリス・ヴァン・ノッテン。心揺さぶる最後のショーにはデザイナー仲間や何十人ものジャーナリストが駆けつけ、その多くは長年彼の活躍を追う中で、ヴァン・ノッテンが手がけるピースを愛用するようになった。

クリエイティブ・ディレクターというポジションを巡る、終わりのない椅子取りゲームが繰り広げられている最中に自身のブランドを去ったヴァン・ノッテン。その引退は、ほかとは違う衝撃をもたらした。指揮官を変えることは、大手メゾンが何十年、シャネルCHANEL)の場合は100年近くも前からやっていることだが、大抵の場合、新たに任命されたクリエイティブ・ディレクターの役目は古くから伝わるメゾンのレガシーを刷新することであって、存命の創業者の代わりを務めることではない。

ドリス ヴァン ノッテンDRIES VAN NOTEN)のクリエイティブ・ディレクターは適任者が簡単に見つかるようなポジションではない。後任はまだ決まっておらず、今シーズンのコレクションはブランドのデザインスタジオが手がけたものだ。「何が変わったのか」。モデルたちがランウェイを練り歩く中、誰もが頭の中でそう問うていた。

新しさの中にあるドリスらしさ

Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway

手短に言えば、今季のショーはこれまでとは違うテイストではなく、私たちのよく知るドリス ヴァン ノッテンらしいものだった。豊かな色使い、柄や模様の掛け合わせ、シグネチャーの刺繍は健在で、ショーノートにもあったように、コレクションはそのすべてを「収束」していた。「明るい道筋を辿り、最初期のウィメンズコレクションからこの先にあるものまでつなげでいきます」

ネットで少し探索してみたところ、ジュエルトーンや多種多様なフローラル柄を取り入れ、東洋と西洋の趣味を融合させた1997-98年秋冬のショーが、今回のコレクションの試金石であろうことがわかった。近年、ファッション界では過去のデザインを復刻することがスタンダードとなり、かつてのものを復活させることは、共通の懐かしさと若者の親世代のファッションに対する興味関心を確実に掻き立てられる術なのだ。そう考えると、ドリス ヴァン ノッテンが今回アーカイブに立ち戻ったのは納得できる。中でもウィメンズウェアをローンチした3年後に発表した、ブランドの基礎をなす1997-98年秋冬コレクションを参考にしたのも理解できる。

Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway
Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway
Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway

私たちがよく知り愛するドリス ヴァン ノッテンから逸れていた点は、マリーゴールド色のレースバンドゥトップ、なめらかなタップパンツ、フューシャピンクのジャカードコート、刺繍が施されたイブニングジャケットといったピースに見られるランジェリーのタッチを拠り所にしていたところだ。新たな世代のファンを獲得することもブランドの任務になった今、古くからのファンはこういった変化には慣れなければならない。バックステージの入口付近からショーをそっと見守っていたヴァン・ノッテンの存在は、これからもやはり感じ続けるだろう。それでも、メゾンの進化は間違いなく続く。

Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway

今回、私はメゾン一番の熱心なファンたちの近くの席だった。クローゼットは長年かけて集めたヴァン・ノッテンによる服でいっぱいだという女性は、ゆったりとしたフローラル柄のジャカードニットベスト、シャルトリューズグリーンのシャツ、しわ加工が施されたシルバーブルーのクロップドパンツを合わせたルックに惹かれたのか、何回もシャッターを切っていた。合うはずがないのになぜか合う。そんなヴァン・ノッテンのトレードマークスタイルを体現するルックだ。

Dries Van Noten - Paris Fashion Week RTW Spring 2025 - Runway

個人的にはピンストライプのブレザーをペーパーバッグウエストパンツにたくし込んだ、クラシックならがもリラックス感あるテーラードルックが目についた。響いたルックはそれぞれ違えど、どれもとてもドリスらしい。

※ドリス ヴァン ノッテン 2025年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Nicole Phelps Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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